春の足音がきこえるよ
4月、新学期が始まる。
飛雄君は北川第一中学校3年、同じく梓も北川第一中学校1年、そして私は青葉城西高校2年になる。

「はい飛雄、お弁当。彩月と梓は午前中で終わりだから家に帰ってからお昼ごはんね。」

母さんは春休みの間にすっかり飛雄君に慣れてもう呼び捨てだ。恐るべきコミュ力…。まぁ、春休みも毎日飛雄君にお弁当作ってたし、お弁当でコミュニケーションとったのかな?
母は強し。

「ありがと、母さん。」

飛雄君も母さんと呼ぶことに最初よりは慣れているみたいだ。私のこともいつか姉ちゃんって呼んでくれるかな。

「お母さん、早く!入学式始まる!」

「梓、そんなに急がなくても入学式は始まらないから。」

梓は清純派セーラー服を着て嬉しそうにしている。

「それにしても、彩月の制服凄いわね。白ブレザーって。」

「うん」

そう、私の新しい制服は真っ白なブレザーに薄いブルーのカッター、そしてキャラメル色のチェックのスカートなのだ。汚れが目立つ。そして着る人を選ぶ。

「まぁ、普通に似合ってるからいいんじゃないの?ねぇ、飛雄?」

母よ、そこで飛雄君にふるのか。

「まぁ、似合ってる、と思う。」

「あ、ありがと」

なんなんだ、この空気は。無理やり言わせた感半端ない。

「よし!そろそろ皆行きましょうか!彩月、最初が肝心よ!飛雄、入学式で寝ないでよ?あと練習頑張って!梓、あんたも式辞長すぎて寝たりしないでよ!」

「了解。大丈夫だって。」

「おう、頑張る」

「寝ないよ!多分」

飛雄君の頑張るはきっと練習だけなんだろうな。梓なんか不安すぎる。お願いだから返事だけはしてから寝て欲しい。そして母さん、あなたが一番寝ないか不安です。

「じゃ、私そろそろ行くね。行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」

「母さんも、飛雄君も、梓も、行ってらっしゃい。」

「「「行ってきます…(きます)」」」

最後にボソリと聞こえた声はきっと飛雄君のものだろう。


こうして私達家族の新年度は始まった。





2015.06.19

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