出逢ふ


それはある月の綺麗な夜のことだった。
中国山地の中にひっそりと建つ大きな屋敷。
いつものように縁側で琴の練習をしていた紫は、ふと一息ついた。
ここは妖怪任侠一家月華組本家。月華組は何処の組の傘下にもなりはしないが、
中国地方にありながらも、関東妖怪任侠一家奴良組専属の癒しを捧げる組としてその名を馳せている。
もちろん専属とは言っても日本全国どんな妖怪であろうと、疲れていれば癒し、
腹が減っていれば腕をふるって料理を出す。
いわば旅館のようなところだ。
紫はこの月華組の三代目を継ぐ者である。
月華組は代々その時の頭首が才能があると認めた者だけが継ぐことができる。
それはすべての者に与えられた権利であり、妖怪であろうと人間であろうと関係ない。
現に紫は妖怪の血など一滴も入っていない人間である。
しかし、この屋敷の者たちは妖怪。当然紫の下僕も妖怪だ。
紫が月華組と現頭首二代目菖蒲の娘として養子縁組されて今年で三年目。
今ではすっかり下僕たちにも愛され、慕われる立派な次期三代目頭首となった。
ここまでこれたのは紫自身の器の大きさと努力の結果であろう。この話は長くなるのでまた別の機会に・・・。

さて、紫の話に戻ろう。
琴の練習中に一息ついた紫が練習を続けようとした時のことだった。
「月夜の下で聴く琴の音がこんなに美しいなんて、知らなった。」
突然後ろから声をかけられ、反射的に紫は振り向いた。
そこにいたのは銀髪が横になびき、切れ長の紅い瞳を持った青年だった。
青年のあまりに美しいその姿に彼女は息を飲んだ。

一方声をかけた青年も表情に出しはしないが、同じく息を飲んでいた。
振り向いた少女は月に照らされた漆黒の髪を肩口に流し、
黒曜石のような瞳の奥に思わず吸い込まれるような錯覚を覚えた。
その瞳に青年はのまれ、溺れそうだった。
「ここを何処だかご存じで?本日のお客様の中にあなたはいらっしゃらなかったと思いますが・・・」
「あぁ、俺は客じゃない。ちょっと散歩がてら近くを通った時に、あんたの琴の音が聞こえてきたんで寄ってみただけだ。俺の名はリクオ。あんたは?」
「初めましてリクオ様。私は紫と申します。」
「紫か。良い名だ。なぁあんた、俺の女にならねぇか?」
「は・・・・?」



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