みんなはその選択を不幸と言うけれど

零くんは嘘つきだ。私のことが好きだというのはきっと本当だけど、それ以外は信用できない。例えば料理について。彼は自分のものより私の作った料理の方が美味しいと言うが絶対嘘。彼は私に料理を振舞ってくれたことなど1度もないが昔偶然出会った彼の友人からネタは上がっているのだ。写真だってあるし。大体なんだあの料理。見栄えもいいし絶対あれ高級レストランとかで出される片仮名の名前のやつだ。私が作れるのは精々一般庶民に馴染みのあるレベルの家庭料理だけだ。この時点でどう足掻いても私の料理の方が劣っている。でも彼は私と一緒にいると絶対料理なんて作ってくれないし、まるで分かりませんみたいな顔をする。他にも彼が私に嘘をついてることは沢山ある。その癖彼が私につく嘘は設定が雑だ。近隣に同姓同名がいて面倒だったから名前を変えたから外では安室透と呼べとか。絶対嘘だ。これに関しては根拠が殆ど勘だが、私が見る限り彼は自分の名前を好んでいたからそう簡単に変更するなんて思わない。家の中では零呼びを強要来てくるのがいい例だ。他にも探偵始めたとか、喫茶店でアルバイト始めたとか今までの警察官を目指してた零くんを見てきたら信じられないことばかり。だから彼にはきっと私に言えない理由があるのだろう、と自身を納得させた。もし私が彼の嘘を突きつければ零くんはたちまちここには来てくれなくなるだろう。そんな予感めいた確信を持っていた。だから私は何時も彼が気まぐれにここを訪れるのを待ち続けているのだ。

(ぷろろーぐ)