(※twitterの#DC夢人外化企画にて書いたものです)
神隠しされたい降谷零
彼は幼い頃から色んな「モノ」に好かれていた。無理もない。彼は小さい頃から美しかった。その身も心も。人であれ妖であれ、...神であれ美しいものを欲するのは同じなのである。
「君は相変わらず色んなモノに好かれるね」
「別になにかしてる訳じゃない。あっちが勝手に好きになるんだろ。」
彼はネクタイを緩めながらベッドに腰掛け此方を向いた。私を探しているらしく、フワフワと動く視線が可笑しくて笑みが零れる。
「...笑うな。そろそろ姿を見せろよ。」
「駄目、というか無理だってば。分かってるでしょ?」
私の言葉に彼は納得がいかないと眉を顰める。彼は私の声が聞こえるが、私の姿は見えない。彼が私の祠にお菓子を供えてくれるようになってから、私はそのお礼に彼に付き纏いできる限りのことをしてきた。私は神に名を連ねるが末端の末端ようなもので大した力も持たない。しかしそれでも長年連れ添えば己の力が彼にも馴染んでしまったらしい。ある日急に私の声を捉えられるようになった彼は今度は姿を、と強請るのである。
「じゃあ、名前を呼んでくれ。」
「...それも駄目。」
末端であるとはいえ神である私が不用意に彼の名を呼ぶことは出来ない。もしかすると彼を此方側に連れてきてしまうかもしれないからだ。名前は呪だ。そこに込める想い一つで彼に大きな影響を与えるだろう。そして、私が彼に抱くこの想いは、この浅ましく身勝手な感情はきっと彼を苦しめることになる。
「私に君の名は呼べないよ。」
それに不満そうに何事かつぶやく彼の声は、目を伏せ視線を外に逸らした私には届かなかった。
side降谷零
ずっと昔に恋をした。
小学生に上がる前小さな祠の後ろの木の根に腰掛け、穏やかな顔で眠る女性を見つけた。僕はその女性に恋をした。それから隙を見てはその祠へ出向き彼女を遠目に見つめていた。彼女はいつも穏やかな顔で自然を眺めていたり、農作業をする老夫婦を眺めていたりしていた。その視線がこちらを向けばいいのに、と思いながらそんな幼い日の僕は彼女を見ていた。
しかし7つを過ぎてその人を見ることはぱったり無くなってしまった。僕は悲しくて毎夜声を押し殺しひっそり
泣いた。その日から身体が重くなり、息がしづらくなった。彼女を見ることが出来なくなっても僕は度々その祠に訪れた。会えるかもしれないという期待が僕を駆り立てたのだ。けれど、やはり彼女には逢えなかった。それから3年経ち、先生と出会った。その話を先生にしたら先生はその人は神様だったのかもね、と笑っていた。僕にはその言葉がすとん、と落ちてきた。
その日の帰り道僕はあの祠におやつをお供えに行った。すると次の日そこへ向かうとそれは綺麗さっぱり無くなっていた。今思えば他の悪餓鬼達が食べていたのかもしれないけれど、当時の僕は本気で彼女がそれを食べたのだと信じて疑わなかった。
それから僕は毎日彼女にお供えものをしに行った。その時から幼い頃から感じたいた身体の倦怠感や息苦しさが減っていった。そして時々。本当に時々風もないのにカーテンが揺れる時があった。僕はそれを見る度に何故か彼女が居てくれるのだと思った。
そんな毎日が続いていた十数年後、28になった僕は不思議な声を聞いた。
「うーん、近頃は幼さが抜けて凛々しくなってきたなぁ。なんだか少し寂しいな。」
キョロキョロ辺りを見回すも一人暮らしの自室に人が居るわけがない。
「昔は私よりも小さかったんだけどなぁ。まぁ私の体は私の意のままに大きさ変えられるからあんまり関係ないんだけど。」
その言葉にはっ、とする。もしかしたら、
「祠の神様...?」
ぽつり、と幼い頃から参っている祠のあの女性を呼ぶ。するとその声は慌てたようにえ?と声を上げた。
「なんで聞こえて...。」
「やっぱり、あの祠の神様なのか!?」
喜びに声が震える。漸く彼女と接触できた。
あれから僕は彼女と話すようになった。と言っても彼女は自身のことを話してくれなかったので僕のことばかりだったが。二度と会えないと思っていた彼女に出会えたことでもう一度彼女と相見えたい。その旨を彼女に告げると私にはそんな力ないから無理だよ*、と笑っていた。それではせめて名前を呼んでくれと頼んだある日。彼女は何時もより固い声音でそれはダメだと告げた。それは君を神隠しをしてしまう可能性があるから、と。
今日も僕は彼女にその姿を見せるよう強請る。それを拒まれるのを分かっていてならば、と名前を呼ぶようせびる。君の名前は呼べないよ、と悲しげに呟かれる声に小さくそれでもいいのに、と返事をする。例え僕が消えるとしても最期まで君の傍に居られるならそれで十分なのに。
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