再会

「ルフィ! そんな恰好でどこに行くんだ!」
 背後で上がったベックマンの声にもルフィは止まらずにただ小さな足を動かした。あっという間に村を抜け、考える間もなく山に突き入った。
 いつもは山道を通るが、今はそこまで回っている時間すら惜しい。
 こんな距離で息なんて切れないのに、今は喉が痛くなるぐらい荒い呼吸が漏れる。汗が目に入りそうになって、一度目を閉じた。しかし、瞼の裏に鮮烈な赤い色が浮かんで、ハッと目を見開いた。
 茂みを駆け抜け、腕や頬、足に枝がすれて細かい傷がいくつもできる。それでもルフィは足を止めずにただひたすら走った。
 そうしてやっと森を抜けた先、やっと望んでいた姿が見えてルフィの目にぐっと涙が浮かんだ。
「があぢゃん!!!」
 随分と必死な形相のルフィに、セーラは息をのんでその身体を受け止める。
 そして、落ち着かせるように常よりも柔らかくルフィの名を呼んだ。

 ◇◇◇

「どうしたのルフィ? 真っ赤じゃないか」
 赤く染まった小さな身体に、セーラは己から血の気が引いていくのが分かった。
 つい先日だって目元に傷をつけて帰ってきたばっかりだ。
 迷わず触れていた手を通して治癒をするけれど、おかしいことにルフィの身体に損傷箇所が見つからない。
 それから導き出される答えは、これが他者の血であることだ。
 一体誰が・・・・・・。
 ルフィは村から走ってきた。村の誰かがこの量の出血をしている。
 すぐにでも飛んでいきたい衝動に駆られたが、自身を呼びにここまで駆けてきた息子を放ってもおけない。とりあえず事情を訊かねばとセーラは再度ルフィを呼んだ。
「ルフィ、村で何があったのか話せる? 私にして欲しいことがあるんだよね?」
 じっとルフィの目を見て静かに問う。ぐずぐずの顔でルフィはすぐに頷いた。
「俺が盗賊にさらわれて、それでシャンクスが助けてくれたんだ! でも、その時にシャンクスが近海の主に腕くわれちまった!」
「っ!?」
 息を呑んだセーラは、すかさずルフィを抱えて羽を広げた。普段は透過して隠しているため、こうして飛ぶのは久しぶりだ。だが、悠長に足で下山していたんじゃ間に合わないかも知れない。
「ルフィ、シャンクスさんは今はどうしてるの?」
「えっと、船医のホンゴウが見てる。俺は部屋には入れなかったけど、副船長――ベックマンが今治療してるから大丈夫だって」
 それがルフィを安心させるためだけの言葉かどうかはわからないが、想像していたよりは余裕がありそうだ。
 しかし、腕一本の欠損となれば、本人の負荷も治療も大変なはず。
 村の手前でルフィを下ろし、一枚のメモを渡す。
「ルフィ、副船長って言うのはよく煙草を吸ってる黒い髪の人だよね?」
「うん」
「じゃあ、その人にここに書かれていることを伝えてきてくれる?」
「これを?」
「そう」
 急いで書いたので走り書きだが、読む分には問題ないはずだ。それに、その人ならセーラの存在にも気づいているのできっと話は通じる。
 書いたことは二つ。
 もし治療で困っていることがあれば声をかけて欲しいという申し出。
 熱や痛みを取る、また傷口を塞ぐことも可能だという具体的な例。
 本当は息子を助けてくれた礼も添えたいところだが、時間がない。それにお礼は直接会って頭を下げる。
「シャンクスのこと治してくんねーのか?」
「治したいけど、シャンクスさんたちは私のことを知らないでしょう? ルフィだって知らない人に怪我を治すよって言われてもびっくりするよね?」
「うん」
「だから、責任者――船長の次に偉い人に訊いてきて欲しいの。治療してもいいですかって」
 すると、不安そうな表情から一転、パッと顔を明るくしたルフィが「行ってくる!」と駆け出す。
 その後ろ姿を見送りながら、その先にある人混みを見つめた。
 フーシャ村に唯一ある病院だ。きっとルフィの恩人であるシャンクスもそこにいる。
「ルフィ、もう少し・・・・・・頑張れ」
 ぽつりと声を落とした頃、ルフィが人混みを掻い潜って病院の中に踏み入った。
 それからそう経たずに小さな影が戻ってくる。気づけばセーラは駆け出していた。

 ◇◇◇

「んん・・・・・・」
 浮上する意識と共にシャンクスが目を開けば、思っていたような熱にうだるような感覚も痛みもなかった。
 身体がだるくて重苦しい。しかしそれだけだ。
 ルフィを連れて村に戻ってきたところまでは覚えているが、その後病院に向かったところで記憶が途絶えている。出血と怪我のせいで意識を飛ばしたらしい。
 ちょうど窓際にベッドが置かれているから空の様子がよく見える。まだ高い位置に陽が見える。
 意識を失っていたのはそう長い時間じゃないらしい。
 ふーっと息を吐けば、すぐ側で声が上がった。
「目が覚めましたか?」
「アンタは・・・・・・」
 船医のホンゴウか誰かがついているもんだと思ったが、まさかこの人がいるとは思わなかった。
 驚きに目を見開いたシャンクスをどう解釈したのか、途端にその人は弁明をし始める。
「ごめんなさい、船医の方と副船長さんに頼んで治療をさせて貰いました。勝手にすみません」
 椅子に座ったまま頭を下げるので、後ろで結っていた長い銀髪が前に垂れて床に触れる。それを制止しようとしたが思ったよりも自分の身体の動きが鈍くて、シャンクスは声をかけるだけに留めた。
「アンタが治してくれたのか」
「はい。と言っても熱と痛みを取って切断面の皮膚の修復をしただけです。なくした血は戻らないし、熱のせいで身体が疲弊してますから、安静にしていてください」
「それだけでも十分だ。ありがとう」
 シャンクスが礼を言えば、セーラは俯いて唇を柔く噛みしめた。
 そしてさっきよりも深く、頭を下げる。
「息子を、ルフィを助けていただいてありがとうございます!」
 数秒経って顔を上げたセーラの目には涙が浮かんでいた。
「本当は腕があればくっつけられたんですけど・・・・・・あの子、見つからなくて」
 まさか近海の主あれをそんな呼び方で呼ぶとは。つくづく不思議な人だ。
「いや、友達を助けただけさ。アンタが気にすることじゃない・・・・・・それに、」
 シャンクスは深い海に浮かぶ銀の光の流れを思い出す。暗い海の中でみる淡い輝きも良かったが、やはり明るいところでみるのもいい。
 陽の下の方が似合うな、とセーラを一瞥してシャンクスは表情を崩した。
「それにアンタには一度助けてもらってるからな」
「助け・・・・・・? 私が、あなたを?」
「ああ」
 恩返しのために助けたわけではないが、結果的に恩人に借りを返せたのはよかった。
「まだ俺が十ぐらいの頃か? 海に落ちたところを引き上げて貰ったのさ」
 覚えてないか? とシャンクスが訊くと、セーラはしばし考え込む。
 シャンクスは見たところ三十程度。約二十年前となるとすでにセーラはコルボ山でダダンたちと生活していたからほとんど外には出ない。
 出るとなると、数年に一度故郷の森の結界を張り直すぐらいだから、必然的に回数は限られる。
(確かに船から落ちた子供を助けたことがあったかもしれない・・・・・・)
 長い逃亡生活の中、同じような場面には何度か出くわしていたため記憶が混ざってしまって曖昧だが、確かにそんなことはあった。
(浜辺で青い鳥の男の子を拾ったこともあったっけ・・・・・・)
 と、一つ思い返せばつらつらと他のことも掘り出される。
「いや、でも、今回ルフィを助けていただいて、それにあの子シャンクスさんたちの悪魔の実まで食べてしまったみたいで・・・・・・お金を払うぐらいしか出来ませんし、いつになるかも分かりませんが、必ず弁償しますので!」
 億単位の損害に船長の片腕。
 はたして金銭に換算するならいくらになるだろうか。
 あれやこれやと頭の中で稼ぐ方法を算出してセーラは青白い顔で言う。
 しかし、シャンクスはその申し出に吹き出すように笑いだし、次いで「いてー!」と身体を丸めた。
「まだ起き上がらないで下さい。身体の負荷が強いので、辛いでしょう」
「ああ、いや大丈夫だ。それにこれも実のことだって気にしなくて良い」
 これ、と己の肩を上げて示したシャンクス。しかし、そうですかとセーラも引き下がるわけには行かない。
「でも・・・・・・」
 せめて何かお礼を、と告げたセーラに、視線を宙に浮かせたシャンクスが「あっ」と声を上げた。
 残った右腕がセーラに伸ばされて、その白い肌に触れる。簡単に握りつぶせそうなほどに細い腕に刹那の戸惑いが走ったが、シャンクスはそのまま引き寄せた。
「あっ」
「じゃあ、金の代わりにアンタを貰っていこうか」
「私を・・・・・・?」
「ああ」
 きょとりと碧眼が瞬く。夜の海に面しているような静けさの瞳が、一心にシャンクスを見ている姿は心地よかった。
「確かに、海軍に引き渡せばお金は手に入りますが・・・・・・でも、海賊って賞金払って貰えましたっけ?」
 今度はシャンクスが目をしばたたかせる番だ。
「アンタ、賞金首なのか? とてもそうには見えないが」
「あ、はは・・・・・・遙か昔に一度・・・・・・?」
 セーラは自嘲気味な笑みで、その碧い瞳に痛みを走らせた。
 垣間見えた一瞬の傷に、シャンクスは深くは訊かない。
「てっきり、知っているからそんなこと言ったのかと」
「いや、ただアンタが気に入っただけだが・・・・・・」
 ふいにシャンクスが、セーラの背後――正しくは廊下へと繋がる扉に目を向けた。セーラも振り返ってみると、ベックマンに口元を押さえられてその腕の中で暴れるルフィの姿が。
「お頭、口説くのはいいが小さい番犬のいないところでやってくれ」
 取り押さえるのも一苦労だ、とベックマンが息を吐く。下ろされたルフィは弾丸のように駆けてセーラの膝に飛びついた。そうして、キッとシャンクスをみて吠える。
「たとえシャンクスでもセーラを連れてくのは許さねーぞ!!」
「へえ、セーラって言うのか。やっと名前を聞けたな」
「おい、聞いてんのか! シャンクス!」
 自分の腰に巻き付く子供の腕をセーラは丁寧に解き、ルフィを膝の上に座らせた。
「ルフィ、それよりも言うことがあるでしょう?」
「うっ・・・・・・あ、あのさ、シャンクス」
「ん? なんだ、ルフィ」
 もじもじと躊躇うルフィの様子に、シャンクスも察した。少し上体を起こし、その背中を枕で支えるようにしてルフィの言葉を待つ。
「腕、大丈夫なのか?」
「ああ、お前の母ちゃんが治してくれたからな」
「おう! 俺の母ちゃんだからな! ・・・・・・それでさ、シャンクス」
「ああ」
「助けてくれて、ありがとう」
 ニッと笑ったシャンクスがルフィの髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。
「友達だからな!」
「おう! でもセーラのことはやらねえぞ」
「俺は海賊だぞ? 欲しいもんは奪っていくさ」
「駄目だって! セーラ、シャンクスから離れろ!」
 今まではルフィから一方的に話を聞いていただけだったが、この様子を見るに本当に仲がいいらしい。クスクスと控えめに笑うセーラに、ルフィは「何笑ってんだよ!」と怒って部屋から連れ出そうとする。
 しかし、ふらりと焦点がぶれたと思えば、小さな身体は前に倒れ込む。セーラが驚いて受け止めれば、ルフィはすやすやと寝息を立てていた。
 見守っていた大人たち三人がほっと息をつく。
「ずっと廊下で待ってたからな。安心したし疲れてたんだろう。代わろう」
「あ、いえ、私が連れて行きますから」
 ベックマンがルフィを抱え上げるので慌てて制止しようとしたが、「お頭についててやってくれ」と言われたら椅子に戻るしかない。
「お頭、静かにしろとは言わねーがベッドからは出るなよ」
「信用ねーなー」
 釘を刺されているのにシャンクスは変わらず愉快そうに笑っている。
 しかし、扉が閉まると、途端にシャンクスの身体から力が抜けた。ズルズルと枕と背中がずれて身体が下がっていく。
「大丈夫ですか?」
「はは、出血しすぎたかな・・・・・・どうにも力が入らねーわ」
「腕一本なくしてるんです。寝られるなら寝て、ゆっくり休んでください」
 枕の位置を直した流れでセーラが赤い髪を撫でれば、驚きで固まる男の姿が目に入った。
「あ、ごめんなさい。ルフィたちの癖でつい」
「いや、いいんだ・・・・・・そうだな。礼をって言ったろ? 寝るまで、そうしてて貰おうかな」
「え?」
「今のさ。じっとしているよりは気が紛れる」
「はあ・・・・・・?」
 これがお礼? とセーラは内心首を傾げた。
 そろそろと下ろした手を上げてシャンクスの髪に触れる。さらりと流れる赤い髪を梳くように、柔らかな力で撫でつけた。
 ゆったりとしたセーラの指の動きに倣うように、シャンクスの目が閉じた。
(こんな風に撫でられたのはいつ以来だったか・・・・・・)
 オーロにいた子供の頃は、バギーと共に何かあると大人たちが頭を撫でてきた。
 しかし、もっと頭がぐらぐらと揺れる荒々しいもので、こんな風に落ち着くような穏やかなものじゃなかった。
(なるほど・・・・・・ルフィが懐いてんのも納得だ。あいつガキの頃からこんないい思いしてんのか)
 別に普通のガキみたいな生活が羨ましいわけじゃないが、無条件にこうも優しく包み込んでくれる存在が傍にいるのは決して不幸なことではない。得ようと思って得られる者ではないのだから。
 そんなことをつらつらと思っていたが、シャンクスは自分でも知らぬうちに眠りの世界に落ちた。
 きっとセーラは、シャンクスが起きる頃もこうして傍にいるのだろう、と妙な確信があった。

 ◇◇◇

 それからシャンクスの身体の経過を見るために数日、赤髪海賊団はフーシャ村にとどまった。
 しかし、ようやっと船旅にも耐えられるとホンゴウが判断し、出航に至ったのだ。
 村人たちに見送られながら、一人、また一人と船内に姿を消す。
 ルフィに麦わら帽子を預けたシャンクスが、船に向かう。その途中できょろりと周囲を見渡したが、目当ての姿は見当たらなかった。
「セーラなら、普段はよそ者の前には姿を見せんぞ。見送るとしても山のどこかで見とるさ」
 シャンクスの様子に気づいた村長が言えば、「そりゃ残念だ」と、シャンクスはカラリと笑った。
「船長さん、セーラさんのことは秘密にしてくださいね」
 村長の隣で、マキノがそろりと尋ねる。
「・・・・・・もし、俺たちが喋ったら?」
「そうしたら、私は何があってもあなたたちを許しません!」
 いつぞやのルフィのように、マキノも村長も揃ってシャンクスに鋭い眼差しを向けた。
「随分と愛されてるな。あの人は」
「当たり前です! 誰が自分の親を嫌いになります? あんなに、愛してくれているのに・・・・・・」
 愛――と、シャンクスは己の髪や肌に触れた感触を思い出す。
 簡単に捻ってしまえるような細い指や腕だった。それなのに、あの手で触れられると、瞳で見られると降参だと両手を上げたくなる。
 何にも出来ない子供にでもなったような気分で、全て受け止めて貰いたくなってしまう。
(なるほど・・・・・・あれが愛されてる感覚ってやつか)
 幼少期、オーロの船員たちに可愛がられていたのは事実だが、それは海の男たちの愛し方だ。
 海賊として生きるための愛され方だった。
 セーラがシャンクスに向けたような、そっと隣に寄り添って包み込むような愛は初めてだった。
 やっぱり欲しいな、と心のどこかで欲が顔を出す。しかし、恩人相手に無理矢理というのも気が引ける。
 なにより小さな友人に恨まれるのは、少し心苦しい。
(まさか俺がこんな思いをするとはな・・・・・・)
 黒いマントを翻し、シャンクスは手を振った。
「安心してくれ、俺たちは口が堅い。友達との約束は破らないさ」
 ――なあシャンクス。かあちゃんの、セーラのことは誰にも言わないでくれよ?
 よっぽど不安だったのだろう。目が覚めたルフィは一目散にシャンクスの元を訪れてそう言った。
 あの生意気な子供が、まっとうに年相応な顔を見せるとは。それだけ大事な家族と言うことだろう。
(一体、あんたは何者なんだろうな・・・・・・)
 波に乗る船の上で、遠くに見える山を振り返りながらシャンクスは思う。きっとこの視界のどこかに、あの美しい人がいると信じて。


 ◇◇◇

「お頭、急に部屋ひっくり返して何してんだ?」
「ちょっと探し物なんだがよー」
 呆れたようなベックマンの声にも構わず、シャンクスは紙の束を見つけるとドン、と机に広げ始めた。
「手配書? なんだって急に」
「それがな〜セーラは賞金首らしいぞ」
「あの人が? とても賞金首には見えねーがな」
 シャンクスの言葉に、ベックマンは片眉を上げて訝しむ。
 虫も殺せないような華奢な男に、一体なんの罪で賞金がかかるというのか。
 心当たりと言えば、あの特殊な能力ぐらいしかない。
 シャンクスとともにベックマンも紙の束を一枚一枚検分する。そして、一枚の古い手配書で手が止まった。
「お頭、これ見ろ」
「ん? なんだこりゃ」
 手配書というものは、作り自体はどれも変わらない。
 指名手配当人の写真と名前が載り、そして懸賞金額。
 しかし、今ベックマンの手元にある手配書は、随分と質素なものだ。
 本来、顔写真が載るところは余白が広がり、真ん中に文字が刻まれている。
「エルフ。但し、銀髪碧眼に限る」
「エルフか・・・・・・たしか絶滅したって話だったろ。生き残りか?」
「伝承上じゃあエルフは金髪に緑眼と決まってる。それをわざわざ注釈入れて書いてあるってことは、エルフじゃなくてセーラ自身に用があるってことだろ」
 まさかエルフだったとはな、とベックマンが頷く。しかし、エルフだというのならあの不思議な力にも納得がいくものだ。
「しかも賞金は……希望額、だと?」
「政府はどれだけセーラが欲しいんだ?」
「さあな、村人の隠しようから見るに事情があるんだろう。病院では人払いしといて良かったな」
 数日前の自分の判断は正しかったな、とベックマンは思う。
 シャンクスは先ほどからじっとある一点を凝視している。
「お頭、他に気になることでもあんのか?」
「ベック、見ろ」
「ん? 虐殺者エルフ? 到底信じられねーな」
「ああ、俺も信じられん。あの人に人が殺せるようには見えない」
 本来、指名手配当人の名前が載るところには、その言葉が当てはめられていた。
 実物と会った今では、とても信じがたいことだ。
「セーラ、あんたは本当に何者なんだろうな」
 窓から覗く海原に向かって、シャンクスはそう呟いた。