亜人パロ




煌びやかな世界で、彼女が立つのを許されるのは歌を歌うときだけだった。

たくさんの拍手に見送られステージから降ろされた少女は綺麗なドレスを脱がされ地獄の牢屋へと乱暴に入れられた。

人間と亜人が共存するのが当たり前になった社会で珍しい亜人を使って金儲けを考えるクズは多い。
少女は人魚の亜人だった。人魚の歌声は人を魅了することができる。
昔から歌うのが好きだった彼女は仲がよかった男の子と歌うことが好きで、将来を誓い合った彼と愛し合い一緒に暮らしていた。

ある日彼がいない日に複数の男に押し入られ連れ去られてからずっと歌わされ続けている。

牢屋にあるのは汚い毛布と牢屋の中を照らす火で作られた灯りだけだった。
孤独な牢屋の中の火だけが彼女の支えだった。彼女と同じ亜人の彼が火の能力を使えた。彼が見せてくれる火は暖かくて好きだった。



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浅い眠りから揺り起こされた彼女が目を覚ますとすぐに口を塞がれて綺麗な顔をした男の子が自分の口元に人差し指を当ててくるから察して頭を上下に動かした。

「人魚の女の子に水もあげないなんて」
「北斗。早く」
「待てって。俺の首に腕回せる?」
「誰?」
「君を助けにきたんだ」
「どうして?」
「ジェシーが待ってる」

小声で話す彼は労わるように彼女の足に優しく水をかけた。水に濡れた足は本来の姿に変わりいつぶりになるか分からない安心感を覚えた。

牢屋の外で見張りをしているらしい彼の仲間が急かしてくる。言われるままに腕を回した彼女を北斗と呼ばれた彼は体に見合わず彼女を軽々と持ち上げた。会話の中で2度と聞けないと思っていた最愛の人の名前を聞いて目を見開いた。

「わーお。ジェシーの最愛ちゃん、めっちゃ可愛い」
「早く行くぞ。ジェシーが待ちきれなくて来ちゃうだろ」
「待ってたの俺だよね?」




誰も追ってこないのは彼らが何かしているからなのだろう。自分を抱えている彼の顔を不思議そうに見る彼女に笑顔だけが返された。

外に出るのが久しぶりすぎて涙が出そうになった彼女は呼ばれた自分の名前にそちらを向いた。
一緒にいた頃よりずっと成長していたけど、忘れるはずないジェシーがいて今度こそ涙が溢れた。2度と会えないと思っていた彼がそこにいて早く触れたくて北斗の首から腕を離した。バランスを崩した彼女の体を支える北斗の腕からジェシーの腕に抱かれた彼女は縋りつくように彼を抱きしめた。

「遅くなってごめん」
「会いたかった」
「俺も会いたかった」

何度も名前を呼ばれ強く抱きしめられる彼女は謝ってくる彼に首を振ることで否定した。
体を離したジェシーと彼女は見つめ合うとどちらからともなくキスをした。何度も重ねられるそれは仲間の1人に呼ばれるまで続いた。


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