吸血鬼パロ
彼は嗅いだことのない甘美な匂いに誘われて振り返った。
強くなる匂いを辿って見た場所には女の子が座り込んでいた。
「大丈夫?」
「っ、あ、大丈夫です。ちょっと転んじゃっただけなので」
知らない人に声をかけられて驚いた彼女はなんでもないように振る舞って見せる。転んだときについたであろう掌に擦り傷ができ血が滲んでいた。
起き上がるのを手伝ってみたが血の滲んだ掌が近くなって強く甘い匂いを肌で感じて衝動が抑えられなくなりそうになり掴んだ腕を強く握ってしまった。
「あのっ、」
「っ、ごめん」
「いえ、ありがとうございました」
頭を下げた彼女は逃げるように彼の前から離れていった。
触れるつもりが無かったはずなのに触ってしまっていたのか指先に血がついていた。舌を伸ばして舐めたそれは想像を絶するほど美味で彼女の匂いを追って足が動き出そうとした。
「ジェシー」
「!!」
「どうした?」
「なんでもない」
彼女を忘れるように頭を振って自分を呼んできた相手を追い抜いて歩き出した。
___
誰かに追われているような気配を感じた女は走っていた。息を切らしながら訳のわからない恐怖に駆られて走る。
家までの距離が歩くよりも遠く感じて無駄に息が切れる。
足がもつれて倒れそうになった女は誰かに抱き止められて転ばずに済んだ。息が切れたまま見上げた先には怖いくらい綺麗な男がいた。
「大丈夫ですか?お嬢さん」
「あ、ありがとうございま、」
「とてもいい匂いだ。恐怖に染まった人間の血はとても美味なんだよ?」
「なに、?」
男を見上げることしかできない女を見下すような目で見た男は首筋に指先を這わせ女が何かを言う前にそこに牙を立てた。
女の悲鳴が夜の街に響き渡った。