出会いは突然

インターホンが鳴って出た先に顔が整った男性が2人もいたら誰でも驚くと思う。


「どちら様ですか?」
「えっと、ジェシーくんていたりします?」
「じぇ、??」
「いないですよね。ごめんなさい」
「いえ」


海外の人か何かかな?目の前の男性が電話をかけるのを見守っていると隣の家のドアが開いて住人が顔を覗かせる。そっちかと言いそうな顔で出てきた彼を指さした男性2人は私に謝ってくれた。


「おまえ違う部屋教えんなよ。お姉さんに迷惑かけちゃうだろ」
「ちょっと嬉しかったけど」
「ごーめん。新しくなったら間違えちゃった」


彼らのやりとりが楽しくて笑ってしまったけど解決したならよかったと思って会釈だけして部屋に戻ろうとしたら隣人の男性がわざわざ出てきてくれた。
さっきの2人も身長が高かったけどこの人はもっと高くてこんなに身長高い人は職場でもあんまり見ないなとその人を見上げた。


「お姉さん、ごめんなさい。初めましてですよね?ジェシーです」
「気にしないでください。苗字名前です。よろしくお願いします」
「あの、すぐ来るんで待っててもらっていいですか?」
「え、はい」


すぐです、すぐ
と言いながら友人らしい2人を中に入れた彼に言われるままとりあえずドアを閉めてもたれかかって待ってみることにする。
ものの数秒で隣のドアがまた開いてジェシーくんが出てきて、ほんとにすぐだなんて驚いてみたり。何か持っているそれを差し出された。


「苗字さん甘いもの食べれます?」
「食べれますけど」
「よかったら、これ。たまたまあったものなんだけど」
「えっ!?気にしないでくださいって言ったのに」
「さっきのお詫びもあるけど、挨拶もプラスで」


せっかく持ってきてくれたものを無碍にもできないなと思ってありがとうって言って受け取れば安心したみたいに笑ってくれて、それがどこかで見たことあるような気がして頭の中から呼び起こしてみるけど直ぐには見つからなかった。
私も何か渡したいなと家にあるものを思い起こしてみるけど菓子折りなんてものあるはずがないなと断念する。
唯一渡せるものが思い浮かんだけど初対面で渡していいものと悩んで直接聞くことにした。


「ジェシーくんは、人の作ったもの食べれる人?」
「え、食べれます」
「初対面の人のでも?」
「苗字さんが作ったやつってこと?」
「そうです」
「全然食えます」
「もうちょっと危機感持とう?でもよかった。作りすぎたもので申し訳ないんだけど渡してもよろしいですか?」
「あははっ!よろしいです!」
「じゃあ、あの、えー。タッパーに詰めて渡すから部屋に入って待っててもらえますか?」
「はい。待ってます」
「じゃあ、あの、後で行きます」


一旦失礼します。て何回もぺこぺこして部屋に戻った。話しやすい子でよかった。子って言っていいのかわからないけど言動的に年下かなって思ってしまった。
貰ったものをとりあえず置いて直ぐに冷蔵庫を開けて昨日の残りの肉じゃがをタッパーに移す。え、どれだけ入れるのが正解だろう。さっきの友達が一緒に食べたり、食べ盛りとか言うレベルでいっぱい食べるならこのまま渡した方がいいのか。身長高いけど少食ですとかだったらどうしようとかいろいろ考えている内に時間が過ぎていく。
待っていてもらっているのだから早めに行かなきゃと残りを全てタッパーに入れて取り置いている紙袋にそれらしく入れて出て直ぐの距離を早足になりながらインターホンを押した。


「はーい」
「お待たせしました」
「待ってましたー」
「これを、どうぞ。あのどれだけ渡していいものか分からなくて多いのでいらなかったりお口に合わなかったら捨ててもらって構わないので」
「あははっ!めっちゃ早口!ありがとうございます」


紙袋が大きな手に貰われる瞬間に指先がちょっとだけ触れた。
改めて見ると本当に大きいなと思う。


「何もらったの?」
「苗字さんの手作り」
「えっ!初対面で貰っていいんですか?」
「こんなものしか無くて逆に申し訳ないんですけど」
「ジェシーはそういうの気にしないので大丈夫です。むしろ好きです。さっきは本当にすみません」
「高知も好きでしょ?」
「まあね。僕たちも食べていいんですか?」
「あ、もう、ジェシーくんにあげたものなので皆さんでどうぞ。お口に合うかわかりませんが」
「やったー!」
「ふふふ、じゃあ私はこれで。また何かあれば」
「女性1人だとできないこととかいっぱいあると思うから頼ってくださいね?電球変えたりとか」
「ありがとう。頼りにさせてもらいます」


2人に手を振られながら見送られて振り返しながら部屋に戻ると、頭の中で呼び合っていた名前を思い出す。ジェシーくんと高知くん
絶対何かで見てるし聞いてる。
メッセージアプリの通知音に友達から『SixTONESのライブ当たったー!いくよね!?』と来ていて私は馬鹿だと膝から崩れ落ちた。こんな漫画みたいなことする日が来るなんて思ってもみなかった。

そうだよ。ジェシーと高知ってSixTONESじゃん。最初にジェシーくんいます?て聞いてきたの樹じゃん!なんで分かんないかな私は。分かんなくてよかったのかな?ファンですとか言って引かれなくてよかったと思えばいいのか?
部屋の一画にSixTONESの歴代CDとかライブDVDが詰まった棚があるのに。
初対面だからか控えめな笑い方だったなとかプライベートはあんな感じなのかなとか今更になって思い返す。

頼ってくださいねって言われたけど、もうさっきには戻れない。多分ぎこちなくなっちゃう。
というか渡した肉じゃが食べるの?むしろ食べないでほしい。捨ててくれ!味つけ変かもしれないって思ってきた。
通知がぽこぽこ鳴ってるのは友達から催促のメッセージだろう。今は無視だ。

ジェシーくんたちがいるだろう隣の部屋の壁を見つめて会うのがずっと先でありますようにと祈った。


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