その関係はお隣さん
仕事から帰ると扉の取手のところに見覚えのある紙袋がかかっていて中を見ると空になって綺麗に洗われたタッパーが入っていた。
貰ってくれてよかったんだけどなと返してくれたことに隣の壁に向かってお礼を独りごちた。
タッパーを取り出した紙袋の奥に折りたたまれたり紙が入っていて開いてみると肉じゃがのお礼が書かれていた。
その下によかったら連絡先交換したいですと一緒にメッセージアプリのIDがあって思わず「マジか」と呟いていた。
こんな簡単に連絡先を会って間もない人に渡していいのかと思う自分と貰えて嬉しい自分がいる。
書かれたIDを打ち込んで出てきたアカウントを追加してみたはいいけど、本当に連絡してもいいのかと迷いまくって隣の苗字名前ですと簡潔に打ち込んだそれを送った。
送った画面を見てファンだと知られないためでも素っ気なさすぎたなと後悔して既読がついてることに早すぎだろうと思った瞬間に着信の画面に変わって「電話!?」とか言いながら通話ボタンをタップしていた。
『苗字さん?ジェシーです』
「苗字名前、です」
『んは、知ってます。苗字さん今部屋にいます?』
「います。ジェシーくんは?」
『部屋にいます。今ってちょっと出れます?』
「え、外に?」
『そう。ダメ?ですか?』
「いいですよ」
問いかけられたダメ?が可愛すぎて考える間もなく了承していた。
メイク落としてなくてよかったと鏡で変なところがないか確認してからファンを隠せと暗示をかけて外に出ると自分の部屋の扉にもたれてジェシーくんが待っていた。
「お待たせしました」
「待ってました」
このやりとり前にもやったなと笑ってしまった。
「肉じゃが美味しかったです」
「それはよかったです。タッパー洗ってくれてありがとうございます」
「返しに行ったとき苗字さんいなくて、いつ帰ってくるか分かんなかったんで」
「仕事だったので、さっき帰ってきた」
「お疲れ様です」
「ありがとうございます」
「そぉれで、連絡先を渡した理由的なのがあって、」
「んふふ、理由的なのがね」
「なんか用事あるときに家にいるかどうか分かる方がいいかなあと思ったのと」
「うん」
「また苗字さんの料理が食べたいです!」
「あはは!お口に合いました?」
「めちゃくちゃお口に合いました。俺がほとんど食べたんですけど。まぁじ美味かったです」
「嬉しいです。私の料理でよければたまに」
「はい。たまに。お願いします」
自分で作った料理を褒められるのはとても嬉しい。
あれだけの量をほとんど1人で食べてくれたのかと思うとそれすらも嬉しくて、時間が合うときはあまりないかもしれないけど食べてくれるなら作りたくて了承した。
ちょっとだけ不安気だったジェシーくんが嬉しそうに笑うのが可愛くて思わず「可愛い」と口に出していた。
「苗字さんの方が可愛いけどね」
「ジェシーくん言い慣れてる感すごい」
「ほんとに思ったときにしか言わないよ?」
「ありがとう」
「俺も名前ちゃんて呼んでいいですか?」
俺もって言ってるけどジェシーくんが名前を先に教えてきたんだよなーとか思いながら名前で呼ばれるのが嫌なわけじゃない。むしろ嬉しいけど呼ばれるたびに恥ずかしくなりそうだ。
「いいですよ」
「やった。改めてよろしくね名前ちゃん」
「こちらこそジェシーくん」