メッセージインアボトル
ドレタス湖の畔で夏の余暇を満喫するヴァニファン一家の姿がある。
眩い光が水面で乱反射し、ヴァニファン一家の仲睦まじい光景を望むに、より一層目を細めなければならない。
双子のユーリとルークは畔の泥濘に足を突っ込んで、手で押し合いながら、どちらが先に倒れるかを競い合っていた。
ルーク「シッ!・・・ッ!スゥ・・・!セェア!」
ユーリ「ン・・・ンオゥ!・・ンォアッ!」
ルークはユーリに身体を押されるとバランスを崩し、泥濘にお尻から倒れ込んでしまった。
ユーリ「やられたよルーク!実にやられた。何にやられたかって?そうさ、このボトルさ!泥の中にあったこのボトルが僕の足にイタズラしやがったんだ。ああ、くそ。なんてことだ。いや、確かに君はこのボトルの存在を見逃した僕の不注意を責めることもできるだろうさ。でも、そんなのは、あの腕利き歯科医のビルニンが、君の虫歯を治すのにかれこれ1年以上掛かっている事でも分かるじゃないか。結局、物事というのは顕在化するまで何一つ定かではないのさ。いいや、しかし、確かに君の言いたい事も分かる。僕だってこんな言い訳がましい事を言いたくないんだ。しかしね。信じてもらいたいんだ。いや、そうさ。でもね、実際僕はあの穢れを知らぬセリンの前でだって、これが嘘ではないと誓えるよ!君も知ってるシャルセント修道院のセリンさ。どうだろうか、ここまで言えば君だって信じてくれるだろう?」
ルーク「ああ、ユーリ。勿論さ。信じよう。信じようとも。君が言うことはもっともだし、僕は何も君を責めるようなことはしないさ。あの純潔のセリンを持ち出すまでもないことさ。そう。君も言った通り、結果は今こうして顕在化した訳だ。この世にあるべき姿は今この場面でしかなかったということなんだ。それはもちろん僕の足元にもボトルがあったとか、野暮な話を持ち出す必要のないことなのは重々承知しているが、いやしかしね、よく見たまえよユーリ。君の持っているボトルの中には何やら紙のような物が入ってやしないかい?それはとても興味深いことだし、実を言うと僕の足元のボトルにも何か入ってやしないかと、僕はずっと心を躍らしている訳なんだ」
ルークの指さしたボトルは汚泥舞い散る濁った水の中に、古びた紙切れが確かにその姿を覗かせていた。
ユーリ「本当だ。しかし、これが幻覚でないとして。僕は一体これをどう捉えるべきだろう?僕は断然古い紙幣だったりしないかと思うんだ。なんたって、紙なんてものはもう博物館でしかお目に掛かったことのない代物なんだ。ルーク。君も一緒に行ったダレリア博物館さ。あそこの紙幣が確かこんなじゃなかったかい?」
ルーク「実に。実にだよ。僕も今しがたそれを思い浮かべていた所なんだ。ともするとこれはきっとお宝なんじゃないか?なんせ、紙を大量に消費していた時代なんて、隣の家のバルブ爺が2回生まれ変わってもまだお釣りがくるくらい前の話さ」
ユーリ「よし、じゃあ早速中を開けて確かめてみることにしよう。ルーク、君のもさ。なんせ、このボトルは僕の足元に転がっていて、僕の勝負の邪魔をしたんだ。つまりこれが僕のでそっちが君の物で無ければ嘘ってもんだよ。例えそっちのボトルに何も入っていなかったとしても、さ」
ルーク「構わまいさ。それは当然の権利というものだよ。僕が君の立場でも同じことを言っただろうさ」
ユーリはそれを聞くとすぐさまボトルのキャップを開いて中の紙を取り出そうとした。しかし、どうだろうか。ボトルに隙間があったのだろう。そのボトルは泥水で満たされていたのだ。水に晒され続けた紙というものが長い年月を経て未だにその耐久性を保っていられるものだろうか。
ユーリ「ア・・・Ahhhhh!シット!なんてこった・・クソ野郎!こんなことってあるか」
ボトルに入っていた紙は辛うじてその姿を保ってはいたが、水の勢いにさえ耐えられずその姿を汚泥の一部へと変えてしまったのである!
ルーク「なんということだろう。なんということだ。だがね。僕はある意味ではこうなることを知っていたのさ。いや、知っていたというのは過言というものだろう。けどね、僕らが生きてきた数少ない人生をもってしても、君の邪魔をしたボトルが何か君に幸運をもたらすだなんて、どうして考えるだろうか。何か慮外の幸運をもたらすとしたらきっと僕のボトルなんだと。僕はあえて確信を持って言おうじゃないか」
そういうとルークは自分の足元にあったボトルを取り出して、燦々たる太陽の元に晒した。砂を適量入れて重みを調整したボトルの中には、確かに一枚の紙が入っていた。
ルークは蓋を開けると慎重に中の紙を取り出す。
ユーリ「どうだい?さっきよりはずっと大きな紙のようだけど、価値はありそうかい?もしかすると、これが世紀の発見として僕ら兄弟は一躍有名になるかもしれないぞ!双子ってだけでも世間の目を引きそうじゃないか。きっとリンクスネットで一躍話題になるよ。そうなれば広告収入だって入ってきやしないだろうか」
ルーク「ユーリ・・・君ってやつは・・。いや、いいんだ。そんなに目で訴えなくても大丈夫さ。僕らはいつも辛苦を分かち合った双子じゃないか。一体どうして手柄を独り占めなんてできるだろうか。さっきも言ったように、物事ってのは今ある事が全てなんだ。君と僕がここで遊んでいたことによって見つかったボトルじゃないか。つまりそれは二人である事に意味があったのさ。いや、そんなことより、だ。見ておくれユーリ。この紙には何やら文字のような物が書かれているぞ?今、リンクスは持ってるかい?グッド、さすがだよ。どうだい?やはり君がいてよかったよ。さて、それなら、この文字をさっそく翻訳してくれないかい?」
ユーリ「OK、ルーク。リンクス起動。翻訳と音読。ボリュームは・・・・そうだな・・・10にしよう」
〜前略〜
ニンニン!
まずはこの手紙を見つけてくれてありがとう!
私は日本で忍者をしている、ささ子といいます。といっても、この手紙を受け取った頃には、日本も忍者も、もうこの世にはないかもしれません・・・。
もしかしたら平成忍者の田村さんであればご存知かもしれしれませんね。
彼女がグルーコサミンとの戦いに敗れてから、日本は魔物の国になってしまいました。私を含む忍者達も最早手のつけようがありません。このまま行くともってあと二十年だそうです。
どうですか?
今でも日本はありますか?忍者は相も変わらず元気に五遁してますか?
ニンニン!!
もしそうなら、こんな手紙は破り捨てるか手裏剣にして飛ばして下さい!
でも、もし・・・・・もし・・・・・日本が既に魔物の手によって滅亡していたとしたら・・・・。
どうか、今から書く場所を見つけ出して欲しいのです。
そこには私たち忍者が最後の希望として残した物があります。私たちにはもうこれくらいの事しかできませんが、きっと50年後100年後に役に立つはずなのです。
どうか、私の話を怪しいDMのように扱わないでください。この話は本当に本当なのです。
本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の本当の
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