100回目のリバーでリバース


幾度となく陽に曝され、幾度となく雨に打たれ、幾度となく風にさらわれた。

雑草は根付く。幾何学のコンクリート。世界を斜めに見上げる堤防。

濁流と激流と和流とが渦巻く。

砂利。砂利。

早朝5時のランニング定年日課老齢人間。

トレインブリッジに潜む、非存在的存在。

放課後センチメンタルジャーニーが集う階段。

ありふれた街にありふれて存在する。

そう、ここはロッキンジェントルの河原。いわゆる生と死を繋ぐ物理法則上の道。

かくいうドワフマンが波乱万丈の画家人生の果てに行き着いたのも川の情景であった。

「『死にたがり』の酒は飲むな。奴らは偽善をつまみにして御託で酔う。そればかりか、大地にキスして、一切を川に吐き出し、忘却の余韻に浸るのが常だ。奴らが寄り添う時は、決まって一つの因子がその意味を失った時なのだ」

ドワフマンの碑石に刻まれた有名な台詞だ。


かのロックバンドなフルック・フルックリンもこの川について唄っている。


無用のルールが漂うよう ノーリスクノーリターン

無限のループがたゆたうよう ノーリスクノーリターン

ララララ 乱反射 シャラン シャ乱射

シャララ run run RUN

ロッキンジェントル 自戒のリバー

ロッキンジェントル 時間のレバー

潜って 閑静 飲み込んで 感染 眺めて 感銘

離れ離れのジェントル ジェントル ロッキン ジェントル リバー


ボーカルの久がボールペン自殺する3か月前に発表した曲である。


衣川譲二は30年間この川に通い続けている。

優柔不断な性格が災いして苦難の人生を歩む譲二。

彼には決断ができない。

朝起きてアンパンとメロンパンのどちらを先に食べるかを決断できない。

隣の住人と顔を合わせても、挨拶するかしないかが決断できない。

喫茶店のコーヒーにミルクと砂糖を入れるかどうかが決断できない。

女にフラレた時に泣いたらいいのか、怒ったらいいのかが決断できない。

仕事にやりがいを見出していいのかが決断できない。

だから彼はこの川に来て堤防の階段に座り、毎日を保留するのだ。

一切合切を明日に預けるのだ。

そして、今日。

預け続けた30年の決断は利子がついて膨大な量となって彼にのしかかる。


ロッキンジェントル神「衣川よ。ワシは300年ここの神をやっておるロッキンジェントル神である。しかし、寄せる年波には勝てず、近々引退を考えておる。そこでじゃ、ヌシ。代わりに神をやってみないか?」


衣川「あ、やります」


衣川がそう言うと、突然彼の皮膚が碧色の鱗に変わった。

衣川「う、うわああああああああああああああああああああ」

そして、角が生えた!

衣川「うわ、うわぁあああああああああああああああああああああ」

ヒレ生えたよ!!!!

衣川「う、うぅぅうああああああああああああああああああああああああああ」

そして、天高く飛び立ったァああああ!!!!!!

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!あんめるつよこよこ!」



ありふれた街に、ありふれて存在する。

何の変哲もない川。

そんな川にありふれて存在する奇跡。

そんな明日が


きっとあなたにも待っている。





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