帝の言


鐘楼の屋根で、星空を見ている。

故郷よりとても空が広い。

階下では動物たちが眠っている。

とても静かな時間だ。


この星空を眺めることが出来たのだから

この安らかな時間を過ごすことが出来たのだから


もういいじゃないか。



何度もそう思った。


出来るのだから。ではない。



朝方、窓から雲を眺めて二度寝した時も

子供が狩りの成果を持ちこんだ夜も

3人で街に買い出しに出た時も

2人で散歩した時も

1人で過ごす今も


もういいじゃないか。



だけど、明日になって、喧騒の中を過ごして


家に帰って、また同じ星空を眺める


同じ星空なのだ。

明日も、同じ星空を眺める。



私は愚かだ。


何も多くを求めない。

諦めることで生きてきた。

数々の決断も、私に取っては諦めの裏返しであった。

求めはしない。解し慣れ、倦み飽き


明日も同じ星空を眺めて

もういいじゃないか。

とは思えない自分がいるのだろう。



明日、人生が終わるなら

十分だと思う。


この星空があれば。

新しい家と友人たちがあれば。

大切な家族がいれば。

本当に、十分だと思う。


十分だ。


私のような男には、本当に勿体ない人生だった。

ありがとう。本当にありがとうございます。



明日もそう思って、生きたい、とも思わない。


十分だ。


この気持ちを常に持ち歩いていたかった。


本当に十分なんだ。




明日も、大袈裟に喜ぶ犬に迎えられて

忙しない夜を過ごして

星空を眺めるんだろう。


今日よりも少し、短い時間。


そして、きっとその内、星空なんて眺めなくなるんだ。


十分なのに。


本当に。

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