C'est toi.
愛したこともない癖に、ご立派にも愛を語った。
酔っていたからというのは言い訳。
彼が何も言わずに聞いてくれていたからというのも言い訳だろうか。
「あー…ごめんなさい、面白く無いよね」
「ううん、そんなことないです」
彼、汐華初流乃とは共通の友人を介して知り合った。私より数歳年下ではあるが、年齢にそぐわない、達観した冷静な性格の男の子だった。
その後知らぬ内に彼は髪色を美しい金色に変えて、煌びやかな芸能界で、引っ張りだこの俳優さんになっていた。私はなんとなく置いてけぼりを食らった気がしていた。
チェイサーにと頼んだ水を飲んで、落ち着こうと試みる。
「レイラさんに相談してよかったです。僕一人で考えてても、女心なんてさっぱりですから」
「私、大した恋愛経験ないし、捻くれ者だし、価値観かなり少数派なのに、こんな話でいいの?」
「相変わらず悲観的だなあ。レイラさんだからこそ聞いたんですけどね?」
彼はそう言って首を傾げた。
「恋愛相談なんて言うから、彼女でも出来たのかと思っちゃった」
恋愛相談したいから、という理由で呼び出され、仕事終わりに妙な焦燥感と共に店へ来た。
だけど、
新しく撮影が始まるドラマの、役作りのために参考にしたい、というだけだった。
それを聞いてほっとした自分がいた。
「ほんとに恋愛相談だったらどう思いました?」
「どうって」
どう思っただろう。
そう考えると心臓がキュッと握られたように痛んだ。