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Part.0 善と悪の再開

遠い、遠い昔の話


世界にはとっても悪い魔導師がいました


その魔導師はその魔導師は
残虐非道で強力な力を持ち、
沢山の血が流れました


しかし突如現れた
2人の正義の魔導師が
彼を倒したのです


そんなお伽噺のような本当のお話





硝子の壁の向こうで包帯だらけの少女が問う

「戦争?」

その硝子越しに手を合わせ少年は言う

「違うよ、あれは
 



 侵略だ」


その伝説は



燃え盛り、崩れ行く城で赤いフードのついた服を着た青年が問う。

「鬼ごっこはもういいだろう」

その青年に対峙する2人の少女が言う

「いいえ、よくありません、諦めることは出来ません」
「その通りです、私たちは皆の思いを継いで」


再び動き出す



極寒の中、2人の男女が武器を構え、銀髪の女性が問う。

「お前…何でまた…」

「決まってるだろう」


これは



ぼろぼろになりながら、薄茶色の髪に翠眼の少女が強い眼差しで言った。

「清く正しく、強く優しい最高の魔導師になると誓ったのです!」

同じくぼろぼろになりながら、薄緑色の髪に碧眼の少女が真っ直ぐ見つめて言った。

「例え茨の道だとしても、最高の魔導師になると、守り抜くと誓ったのです!」

傷を追った漆黒の髪に夕闇色の少年は嗤って言った。

「再び混迷の時代に導き、災厄の魔導師になるためさ!」


とある三人のお話








◆◇◆◇◆
場所はイデアル王国の首都エスポワール。
パナシェドール学園の周辺。
バタバタと二人の男たちが駆けていく。

「アニキー!見失いました!」
「探すぞ〜!折角見つけた幻の黒の民だったのに!」

それにすれ違うように二人の少女が歩いていく。

「「ここがパナシェドール魔法学園…!」」

とある少年が他の新入生と同じように1枚のくじを引いた。

「おー!君1番か〜、縁起いいなぁ!」
「さすがマスター、貴方に相応しい数字ってやつですねぇ」

少年が歩きながらそれに対し答える。

「おい、マスグラ。わかってるとは思うが学園内では」

黒い鎖のついたとんがり帽子に浮かぶ赤いギザギザな口が特徴の顔がそれに答える。

「わかってますよぉ〜。にしても『バディ制度』なんてマスターには似合いませんねぇ」


かの悪の大魔導師の名はターフェアイト・スピネルと言いました


「まぁ、その通りだか…ともかく地位はある程度必要だ。この国だとここが一番の魔法学園だからな」

喋る帽子を掴みながら立ち止まった少年は黒い外套を翻しながら立ち止まる。

「優秀な手駒もついでに作って、また始めようじゃないか。新たな悪の大魔導師の伝説を」


そしてかの英雄たちのの名は


二人の少女が『No.1』と書かれた紙を握りしめながら

「やっとですね、今日で私達も16歳…」
「はい!やっと強い魔法の勉強が出来る…、頑張らなきゃ…、皆の為にも…」
「そうですね…」

グッと強く手を結んで青いベレー帽を被り、薄水色のストールをリボン結びで首に巻いた少女が強い眼差しで学園を見上げながら

「絶対に、強くて優しい、善の大魔導師になって見せます…!」

白いフードを深く被り、顔が隠れた少女がそれに対し、

「私も手助けします。そして私もかの天空の大魔導師のように……!」

「「「ん?」」」


「マスター、彼女達ですよ彼女達。貴方が生まれ変わってまで探した善の大魔導師と天空の大魔導師…英雄である『彼女達』です」

少年は呆然としながら隣にいる少女二人を見つめてある二人の名を呟いた。

「フォリア…フォスフォール…、ノヴァ…フォスフォール…」

二人の少女はキョトンとしながら

「…フォリア?」
「…ノヴァ?」

と聞き返した。

「(しまった!思わず…)あぁ、いや…」

少年が焦ったように困り笑いをしながらごまかそうとすると、青いベレー帽の少女が

「もしかして…君もフォリア様とノヴァ様のことが好きなの!?わた…僕も英雄伝説大好きで…彼女達は憧れで…!」

と花が咲いたように笑い、目をキラキラさせながら語りだし、少年はビクッとそれに対して驚いた。

そこに白いフードの少女が

「フィオ、落ち着いて。相手の方が驚いてしまいます」

そういわれ、フィオと呼ばれた少女ははっとし、

「あっご、ごめんなさいいきなり…貴方は1年生…ですか?」

と謝りながら問う。少年はそれに対し、持っているくじ引きの紙を見せながら

「あぁ、1番の人を探しているんだが…」

それを聞いて、フィオと呼ばれた少女は目を輝かせた。

「私…あ、僕フィオ!フィオ・ユークレース!バディのくじ引き1番だったんだ!だから君のバディ!……と言いたいところなんだけど……」

フィオは白いフードの少女に振り返りながら困惑を顔に浮かべる。
白いフードの少女も顔は見えないが困惑したような雰囲気ながらくじ引きの紙を差し出す。
そこには『No.1』と書かれていた。

「…三人ペアなんてあるんですね……?」
「そ、そうだね、てっきりわ、僕フィアと二人だと思ってたよ……。ま、まぁそういうこともあるんでしょうか……?」

白のフードの少女はあ、と言いつつ少年に向き直り、自身の名を言った。

「私はフィア、フィア・ユークレースです。フィオとは双子で私が妹です。これからバディとしてよろしくお願いいたします。」

バディ


「それにしても、君のようななんていうんだろう、絵画の王子様のような綺麗な男の子だと少し緊張してしまうけれど…」
「そ、そうですね、本当にお綺麗で緊張してしまいますが…。」

二人が褒めるのも無理はない。少年はそれほどに美しい容姿をしていた。薄い金色の髪はフワリとしつつも艶やかで、睫毛はけぶりそれが縁取る濡れ濡れとした薄紅色の瞳は蠱惑的で、すっと通った鼻梁、薄く色付いた形の良い唇、そして神がよりをかけて造ったかのよう整ったパーツの配置の中性的な顔をしていた。
そんな二人を見つめる少年はすっと2人に手を伸ばし、にこりと微笑んだ。

こいつらが、この女達が

「「君/貴方の名前は?」」

かつての私の力を奪って自害までした…この女達が

「ターフェ・スフェライト、気軽にターフェと呼んで欲しい。どうか今後ともよろしく頼むよ」

握手をするように手を差し出され、フィオとフィアの二人はその手をそれぞれ握った。刹那、

──バリッ

「「わっ!?/きゃっ!?」」

つんざくような痛みに思わず二人はターフェから手を離す。その時、フィアはその「眼」で視たものに目を捲った。そんなフィアを余所にターフェはにこりと笑いながら

「あぁ!すまない、うちの使い魔が悪さをしたようだ」

そう言うと、彼の帽子がキャハーと可愛らしく笑いながら自己紹介をし始めた

「どうも!フィオ様、フィア様!マスグラと申します〜★マスターの秘書です!マスちゃんって呼んでください!」

フィオはわっと驚きながら

「すごい!使い魔なんて…もう召喚魔法まで使えるのですか?」

それに対し、ターフェは謙遜しながら

「物付きの悪魔さ、低級で大したことない」

それを聞きながらフィオは

「私にも出来るかなぁ…」

と羨ましげに呟いた。

「いや、フィオ様にはその才能がな…」
「(余計なことを言うなマスグラ、燃やすぞ)」

そんな会話をしている横でフィアはぐるぐるとさっき視たことを考え、不安になり、意を決してターフェに話し掛けた。

「あの、ターフェさん…」

ターフェはにこやかにそれに対し、

「ターフェって気軽に呼んで欲しいな」

と少し圧のある笑顔を向けて言った。フィアは少し慄きつつも

「ではターフェ…さっき、何か、魔法を使いましたか?」

ぴくりと、ターフェは一瞬反応するも

「いや、何も使ってないよ。どうしてそんなこと聞くんだい?……もしかして何か『視た』のかい?」

そう逆に問われ、フィアはさっと青くなるも直ぐに取り繕う。

「いえ、その、視るとは何でしょう……?……思い違いならいいのです。すみません、疑うようなことを言って。あの、不快にさせてしまったでしょうか……?」
「いや、気にしてないさ、誰だってさっきのマスグラのいたずらにはびっくりするだろうし仕方ないさ」
「その、本当にごめんなさい…。あ、話は変わるのですが…」

そう言うと続きをフィオが引き継いだ。

「ターフェはこれから用事あったりする?」

それにターフェは

「初日はバディ決めだけだろう?後は寮に帰って街を歩いて回ろうかと思ったんだ。首都エスポワールは来るのが初めてなんでね」

それを聞いたあと、フィオとフィアの二人は少し表情を暗くしながら小さく、レマン帝国出身かを聞いた。
ターフェはそれに不思議に感じながらも

「いいや?イデアルじゃないが…5年前滅びた『アルカンジュ』の出身だよ。お姫様達が逃亡中らしいな。レマン帝国の奴らが必死に探しているとか…」
「「そ、そうですか…」」

ターフェは何とも言えない二人の反応に少し視線を鋭くしながらも、直ぐに戻して

「─…フィオ達はこの街を歩くのは初めてかい?」

と問った。それに表情を明るくしながら二人は頷く。

「「は、はいじゃなくてうん!/はい!」」
「…じゃあお互いのことまだ何も知らないから一緒に見て回ろう」

そう言うターフェにフィオとフィアは照れながら

「本当ですか…!嬉しいです!ありがとうございます」
「私も嬉しい!わ、僕もそう言おうと思ってたんだ!」

それににこやかにしながらターフェは気になっていたことをフィオに問いかけた。

「─…ずっと思ってたんだが『僕』って無理に使ってないかい?女の子なのに『僕』は珍しいけれど…」
「!?そうかな!?そういう女の子もい、いると思うけど…」
「(…フィオ、無理が祟ってます…。)」
「(ふふ、マスター、フィオ様とフィア様がバディなんて幸先がいいじゃないですか〜)」
「(あぁ、そうだな。今日ばかりは大嫌いな神様に感謝するよ)」

脳裏に浮かぶのは揃いの鎧に白いドレス、揺れる色違いの長い髪。その頭上には葉で出来た冠を被った曇天から射す光に照らされた二人の後ろ姿。

「(彼女達から奪われた魔力を取り返し彼女達自身の『力』も…)」

ターフェは笑ってまた二人に手を差しのべる。

「さぁ、行こうフィオ、フィア!」


これは悪い大魔導師の生まれ変わりと



「「はい!」」


善の大魔導師と
天空の大魔導師の
生まれ変わりの三人のお話



「あ、今度はパチッとしない」

フィオはぎゅっとターフェと握手しながらそう言った。

「ほ、本当ですね…よかった…」

おずおずと握手するフィアもほっと溜め息をつく。
マスグラはおちょけながら

「当然ですよ、フィオ様、フィア様〜」

フィオは嬉しそうに笑いながら

「ふふ、友達と外を歩くって初めてだから嬉しいなぁ」

それを見てフィアも顔はあまり見えないが僅かに見える口元は頬を緩めていて

「……フィオが嬉しそうで私も嬉しいです。私も友達とは初めてです。」
「『箱入り』ってやつだったのかい?」

「友達」…そうだな仲良くしてやるさ、私の目的はお前達を殺すことではない

血だらけのまま、笑顔の女性の顔が二つまた脳裏に浮かぶ。そして、その二人は

「「─────」」

何かを呟いた。

くすりと嗤う

私の目的は「懐柔」することだからな

手を取り合い三人は歩き出す。ターフェが二人をリードして。
ふわりと三人の影が幼い誰か達と重なった。


「(大厄災であり悪の大魔導師であるターフェアイト・スピネルが2度も失敗を犯してたまるものか)…今度こそ絶対に」
第一章
そんな彼の背中をフィアは不安そうに視ていた。
「─…っ…」


はてさて、今回はどうなることやら!



To be continued

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  • 天空の大魔導師 2024.03.09