「しませんか?」
「しませんよ」
…お腹がいっぱいなのだろうか?
さっきご飯をたくさん食べていたから。
スングァンが分けてくれたポッキーを持って、僕が真っ先に向かったのは大好きなジョンハニヒョンのいる休憩室。
笑顔で駆け寄ると彼も笑顔で頭を撫でてくれた。
「どした?ジュナ」
「ポッキーゲーム!」
「うん?」
「しませんか?」
「しませんよ」
彼は表情を崩さずニッコリと頬笑み、僕のそばから離れるように席を立った。
せっかく貰ったポッキーをジョンハニヒョンと一緒に分けたい…
諦めきれなくて後をついていくと鬱陶しそうに手で払われた。
「…しないよ」
「誰もいないよ」
「いやすぐそこにいるだろ。声聞こえる」
「入ってこないよ」
「くるかもしれないでしょ」
「……」
休憩室のテーブルの上にドリンクを置き、外に出て行こうとドアノブに手をかける。
そんな彼の腕を掴み、引き寄せ、ドア側に自分の背中をくっつけるようにして無理やり引き止めると、非常に困った顔をして僕を見つめるから
僕もとても困った顔をして彼を見下ろした。
「はぁー…もう…」
「だめなの?」
「だめ」
「どうして?」
「だってお前キスしたいだけだろ」
「そうだよ」
「…あぁーぁぁ…どうしようか」
片手は腰に当て、もう片方の手は額を抱え、何やら悩んでいる様子に見えた。
その悩みは僕が作ってしまったモノなんだろうけど、僕にはなぜ彼が頭を悩ませているのかが分からなかった。
だって今はチャンスなのに。
僕が作り出した、
僕とヒョンの二人きりの空間なのに。
せっかくのタイミングなのにどうして。
ポッキーゲームが嫌なら普通に食べたらいいけれど
僕はヒョンとキスをして午後からのエネルギーを補給したいだけだから。
「……かがめ」
低い声でそう言われ、僕は言われた通りに少し身体を屈ませる。
僕より少し背の低い彼と目線を合わせるくらいの位置で止まると、彼は僕の襟をガシッと掴んで引き寄せ、荒々しく噛み付くように口付けてきた。
「んう」
突然塞がれた僕の唇から驚いた効果音が飛び出る。
「……っ…」
「…ふぁ…っ…」
「…ん」
「……ぷはっ」
「……オケイ?」
柔らかくてヒンヤリと冷たくて、そしてとても甘い…
彼の唇が恋しくて恋しくて
足りなくて、まだまだ全然足りなかったから
今度は僕から…
両手でしっかりと顔を固定して、動けなくなった彼に上から塞ぎ込むようなキスをした。
「…ッ…」
「……」
「ジュ、…っ…ん、…ふっ」
逃げ回る舌を絡めとって彼の甘い唾液を吸い取る。
本当に蜜の味がして、身体にそれが取り込まれると、僕のエネルギーは完全に復活するのだ。
どんな栄養剤よりもずっと効くんだけれど
僕以外は使えない。残念ながら。
僕だけの特権なんだ
この味は
『ジョンハニヒョン〜!!』
「…っ、ばっ、離…っせ…」
「…ン」
「入ってくる、から…」
「……」
「…スングァンだ」
「…あぁー」
「先に出るから後から来い」
遮られたキスがなんとも名残惜しくて僕は唇を尖らせて彼を見つめた。
彼は口を拭いながらドアノブに手をかけ、今度こそ出て行ってしまおうとする。
「口、拭いとけよ」
「……ハイ」
カチャリとドアが開くとすぐにスングァンの声が聞こえた。
僕はキスを邪魔したその声に少し腹を立てながら、彼に言われたように口を拭った。
拭った唾液が手の甲でキラキラしていて、それを舌で舐めてみると凄く甘く感じた。
「…ハニのだ」
彼の唾液の味はひどく甘いからすぐに分かる。たとえ自分のと混ざっていたって。
手の甲についたそれも余すことなく体内に取り込んで僕は休憩室をあとにする。
これで午後からも頑張れそうだ。
『ジョンハニヒョン〜ポッキーゲームしよう〜!!』
「いいよー」
…ハニヒョン僕のこと嫌いなのかな
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