あの子もいいな、あの子もいいな…そして頭の中でピンク色の妄想に入り浸る講義中。隣の席は愛しのナマエじゃなくて、今度はアレンだから、本当に暇。つか、アイツは今何してるんさ、なんて思って取り出したスマートフォン。メールをしようと、ナマエの連絡先を出して打った、今何してんるんさ、と。でも、一向に送信ボタンが押せないんさ。それより、他の女の子達からのメールが鬱陶しい。今、俺様は忙しいんさ、なんて思ってメールを削除しようとボタンを押した。

「あっ!」

思わず大きな声が出て、皆してこっちを向いた。それを誤魔化しながらやり過ごし、改めて画面を見れば、送信しましたの文字が表示されている。宛先は…ナマエだ。やっばー…送ってしまったさ。うわーうわー…冷や汗ダラダラかいてるから隣のアレンに、なんで寒いのに汗かいてるんですか?なんて言われるから、もうどうにでもなれって感じさね。しばらくしてピコピコと、音が鳴る。画面を見れば、ナマエの文字…返ってきた!思わずニヤニヤしてしまうから、今度はアレンに気持ち悪い、と言われた。辛辣さね。でも、そんなことより幼馴染みの動向さ。メールの本文を見れば、絵文字も何も無い文で、ティキ助教授の所にお手伝い、なんて書いてあったから愕然とした。よりによってなんであんな色ボケ助教授の所に…なんて思いながら画面を見ていると、家での出来事を思い出す。ナマエのメールの相手はティキだった。

「…今度は何を唸っているんですか、鬱陶しい」

ノートの上にうなだれていると横から辛辣な言葉が降ってくる。よりによってあの野郎の所とか…本当にあの子は自分の身を守るって事をしないんだから。どうすんの、ティキの研究室に2人っきりとか…それは、それは…!

「アレン、聞いて…ナマエが色ボケ助教授に喰われちゃう!」
「…ラビに色ボケと言われる相手、可哀想ですね」
「相手はティキさ!可哀想でも何でもないさ!」
「まあ、一理ありますけど。それにしても…」

そんなイヤラシイ事にしか頭働かないのになんでこの大学の首席なんですか?やっぱりお金なんですか?なんて言いながらアレンは黒い笑顔を浮かべている。握ってるシャーペンが嫌な音したさ。そんなアレンの様子に引きつつもこの状況を打破する策を練る。リーバー准教授の講義は必須、コレ落としたら本当に単位危うい。俺は成績良いけど講義日数が足りないから抜けれない。次に同時進行で愛しの幼馴染みが狼の巣にいる、貞操の危機さね。つか、ナマエ、いい歳になるのにまだヴァージンなんさ?もしかして、それを気にしてあの色ボケ助教授ティキん所に行ったんさ?ハジメテは大人のオトコが良かったんさ?俺じゃダメなんさ?つか、ナマエのヴァージンは俺が貰う筈だったのに…!

「ラビ、口に出てますよ」
「…無理」
「はい?」
「アレン、あとよろしくさ」
「はぁ…って!ちょっと、ラビ、講義抜ける気ですか?!」

アレンが小声で何か言っているが聞こえない。自分の単位とナマエの貞操を天秤に掛けたら、圧倒的にナマエさ。つか、天秤に掛けるまでもねぇよ。中腰になりながらこっそり講義を抜け出した。広いキャンパスの中、目指すはティキの研究室。以前、ナマエが、ティキ助教授のゼミに入りたい、なんて言って一緒に見に行った事が1度だけある。俺は記憶力は良いんさ。だから、それを頼りに研究室を探した。重々しいドアがほんの少し開いたティキの研究室。中から声がする。低い声と高い声、ティキとナマエだってすぐに分かった。暗くて中はよく見えない。楽しそうに話す声だけが聞こえる。足が竦む。

「先生?」
「いや、何でもないよ。続けて」
「はい…」

何をしているんさ、本当に。本当に神聖なキャンパスであんな事やこんな事してるんさ?!大学生に手を出して許されると思ってるんさ?!

「ティキ先生…」

ナマエの声が聞こえたと思ったら影が重なった。それを見て胸が抉られる想いだ。なんなんさ、これ…まるで、まるで…。

「恋人さ…」

ポツリ、呟いた言葉に影は離れ、誰だ、と低い声がした。あー、多分ティキさ。出歯亀バレたさ。逃げるのも負けた気がしてそっと中に入れば、やあ少年、と声がした。余裕そうなティキが心底ムカつくさ。肝心の幼馴染みは、ラビ、何で居るの?だって。手には目薬、そして涙目のティキ…あれ?

「いやー、ナマエちゃんに目薬挿して貰っててね。こう、論文ばっかり読んでいると目が疲れてしまってね」
「目薬…?挿す…?」
「先生は頑張りすぎなんですよ。今コーヒー入れてきますね」

そう言って幼馴染みは奥へと消えていった。講義を抜け出した事も、キス(?)を見た事にもお咎めない。これって、本当に…。

「俺様、眼中に無い?」
「少年」
「どわさ!」

本日2回目、背後から声掛けに飛び上がる俺。情けないったら無い。少年もコーヒー飲む?なんて言われて頷けば、ナマエちゃんコーヒー3つ!なんて言うからまるで、まるで…!

「俺が彼氏みたい?」
「っ…?!」
「クックックッ…少年、わかり易いね」

さっきも彼女とのやり取りをキスしてると勘違いした感じかな?なんてティキに言われて柄にもなく顔が熱い。チクショー…完全に遊ばれてる。そんなんじゃないさ、とポーカーフェイス気取ってももう遅い。笑われてるし、少年はそんなに彼女が好きか、と言われてもうどうにもならない。

「…だったら?」

もう、開き直るしかないさ、なんて思って言うと、かーわいいねぇ、だって。コノヤロー大人の余裕本当にムカつく!

「ナマエちゃんとは何にもないよ。今は、ね…?」
「ナマエ泣かせたら許さねぇから」
「怖いねぇ、ナイト様って奴?」
「…そんなんじゃねぇよ」

そう、そんなんじゃない。俺にはナマエを守る資格もないんさ。幼馴染みって言う泥沼にハマって動けない哀れな奴なんさ…。しばらくして、コーヒー出来たよ、なんて出てくる幼馴染み。ちゃんと3つマグカップがある事がまたムカつくんさ。

「先生、はい」
「ありがとう。ナマエちゃん」
「はい、これラビの」

そう言って渡されたブラックコーヒーは苦くて、苦くて…インスタントコーヒーなのか、混ぜた後みたいでグルグルとコーヒーが回っている。本当に泥沼、今の俺はこの中心にいる。まるでこの恋から手を離して沈んでしまえ、と言われてるようで悲しかった。







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