手を繋いだままやって来たリーバー准教授の研究室。俺達の顔、いや、正確に言えば俺の顔を見るなりリーバー准教授は眉間にシワを作り、俺の講義抜け出してデートとはいい身分だなラビ、と言われた。デート…そんな甘いもんではないさね。一方隣の幼なじみは俺の手を離したと思ったら、コムイに駆け寄っていた。あ、助けてくれないんですね、はい。

「コムイ教授、お願いします」
「んーナマエちゃんのお願いなら大歓迎だよ!丁度人手欲しかったし」
「ありがとうございます」
「待つさ!ナマエ!俺コムイの助手するなんて言ってな…」

全部言い終わらない内にナマエがこっちを向いた。そりゃあもうすごい白い目で見られたから、冷や汗が出る。

「煮るなり焼くなり好きにしてくださって構わないので」
「待つさ!それ俺様死ぬ!」
「タダじゃ死なないので大丈夫です」

そうさね、ナマエのヴァージン貰うまで死ねな…じゃなくて!本当にナマエからの信頼はゼロと言うかむしろマイナスで凹む。ここで助手を引き受けてプラスに!ってしたい所だけどよりによってコムイとか本当に本当に…。

「…やる気出ないさ」
「じゃあ、どうしたらやる気出るの」

呟いた言葉に不意に投げかけられた疑問。顔を上げるとコムイの近くに居たはずの幼馴染みが目の前に。やる気…やる気…あ!

「ナマエがご褒美くれるならやる気出るさ」

我ながらアホなことを言ったと思う。でももう言ったからには後戻りは出来ない。目の前にはキョトンとした表情の幼馴染み。後ろのリナリーは苦笑いだし、コムイに至っては、ヤる気の間違いじゃないの?とか言ってる。それはあながち間違いじゃないけれど。あわよくばハジメテ欲しいよ。もう欲望むき出しでもいいよ。ナマエが手に入るなら。なんて思っていると幼馴染みは頭を悩ませ始めた。おっ、いい展開…

「…ラビ、お前俺の講義抜けたのをナマエに何とかしてもらってその為にコムイ教授の助手するんだよな?」

眉間に皺を寄せたリーバー准教授が肩を震わせて言うと単純明快幼馴染みは、あ、そっか。そうだねと言って、これがご褒美だね?と圧をかけてきた。ご褒美作戦大失敗。

「ラビ、お前本当にいい根性してるよな」
「アハハ…そんな事ないさ」
「ではコムイ教授、お願いします」
「助けてくれないんさ?!」

知りませんとも言うが如くナマエは振り返りもせずに部屋を出た。リナリーには自業自得ね、なんて言われる。あぁ…俺の人生終わったさ。遊ぶ事も出来なくなるんさ…これから。リーバー准教授も出ていき、無情にも部屋のドアが閉まる。恐る恐る振り向くと満面の笑みのコムイが何やら恐ろしい機械を用意していた。

「さあ、ラビ実験開始だよ!」

本日何度目かの冷や汗と共に俺様の想像を絶する日々が始まったと言っても過言ではない。

「ラビ、ラビ…大丈夫ですか?」

ボーッする視界の端に映るは綺麗な白髪の女の子…ではなくてアレン。体を起こし目を擦るといつの間にかカフェに居る。あ、そっか、休憩に来んさ、俺様。カフェイン取らないとやってらんないさこれ…と思いつつコーヒーを飲みながらアレンに目をやると溜め息を着いた。

「ラビもバカですね。抜け出さなきゃこんな事にはならなかったのに」
「だってーナマエの貞操の危機だったさ。一刻を争ったんさ」
「確かにティキは危ないですけど。そもそもナマエが彼のこと大好きなんですからしょうがないでしょう?」
「そうと決まった訳では無いさ!」
「いや、負け戦ですよ」

ナマエも趣味悪いですけどね、と言うアレンには少し腹立たしいが賛同も出来るからそれ以上何も言えなくなった。コムイの所で軟禁されてたから愛しの幼馴染みの行方もわからない。またあの色ボケの所だったらどうしよう…。

「はぁ〜不毛さ」
「本当ですね。溜め息ばかりつかないで下さい。資料が息で飛びます」
「カフェに来た時くらい休むさ、アレン」
「この課題終わらないんですよ。全然解けなくて…」
「…これ、この公式使うんさ」
「え?だってこれこっちじゃ…」
「違う違う、これはこの応用だからこっちさね。間違えやすいけどこっちの方がイイさ」
「…あ、本当だ。解けました」
「よかったさ」
「…ラビはなんでこの大学にいるんですか?」

アレンの言葉に今日の廊下でのナマエとのやり取りを思い出す。なんでこの大学に、か…深い意味なんかない。ナマエは追いつきたい、って言ってたさ。一体誰に…。考えているとこっちにキラキラした集団がやってくる。正確に言えば周りがキラキラした、だが。女の子達にきゃあきゃあ言われている中心人物は目を三角にし、舌打ちしながらこっちにやって来た。ユウさ。

「相変わらずうるさいですね。ラビ程じゃないですけど」
「俺様モテるから」
「脳内空っぽのパッションピンクなのに…」
「…すっげードス効いた声さアレン」
「おい、赤毛」

ユウは目の前に来るとコムイが呼んでんぞ、とぶっきらぼうに言い、ドカッと椅子に座る。その拍子にアレンの資料が空を舞い、立っていた俺様が取った。

「ほい、アレン」
「ありがとうございます、ラビ。全く…何でもかんでも乱暴なんですから」
「ハッ、こんな所で課題なんかしてるからだろ」
「計画性も無く溜め込んで後で困っている人よりはマシだと思いますけど」
「もう終わった」
「そうですか。どうせ教えてくださる方が居ないので間違いだらけでしょうね」
「ア?」

犬猿の中のアレンとユウが火花を散らしている。とばっちりを受けたくないので、そっと後ずさるとまた違う女の子の集団に囲まれた。ラビ、今日遊んでー!とかラビ、今日飲もうよ!とか、そんなお誘い。いつもなら喜んで受けるけど、今日はコムイのせいでそんな気力も無い。遠くでケンカの声を聞きながら女の子達に丁重にお断りをすると1人の女の子が腕を掴んだ。ナマエさ。

「ラビ、さっき神田に言付け頼んだのにまだこんな所にいたの?」

今日はやたらとナマエに触られる。嬉しいけど少し不安だ。だって周りには女の子の集団。すごい勢いでナマエを威嚇していた。

「今行くところさ」

穏便に済ませようとそう言えば、そう…、とだけ呟いて手を離した。そして、邪魔してごめんなさい、と言いその場を離れた。どことなく表情が寂しそうは気がしたのは気のせいさ?しばらくして女の子達が何あれ!お高く止まりすぎ!とかあの子、ラビの幼馴染みだからって調子乗りすぎ!とか騒ぎ出した。あーあ、これは収拾着かないさね。騒ぎを聞きつけたのかアレンとユウもやって来た。そして言う。ラビ最低ですね、お前最低だな、を同時に。なんで君達こんな時ばかり相性イイんさ…。ガックリしたいのを我慢してナマエの後ろ姿を見つめた。今日俺がしたポニーテールが揺れていた。








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