恋なんて、この世で1番してはいけないことだと教わった。愛なんて、必要ないと思っていた。
「大丈夫Kaい?」
君に声をかけられるまでは。
1:最悪で最高な出逢い
澄み渡った空。そんな晴天に似つかわしく無いのは私の気持ち。今日も私の上を沢山の男達が乗って、満足気に腰を振っていた。いい加減痛いし、降り注ぐ汗も喘ぎ声も気持ち悪い。今日何度目かの欲を吐いた男は私の顎を掴んでゆっくりと唇にキスをしようとしている。
「やめて。そんな事するならもう終わりだから」
肘で相手の顎を退けると、つまらなさそうな顔をした後に体を離した。それと同時に胎内から引き抜かれたソレ。まだ、物足りなさそうに動いていたけれど、もう疲れたから嫌だった。身なりを整えて立ち上がると欲望が重力に従って溢れ出した。気持ち悪い。後でちゃんと薬飲まないと。そんなことを思いながら後処理をしていると辺りは誰もいなくなっていた。ポケットティッシュが切れ、少し離れた場所にあるスクールバッグに手を伸ばすとご丁寧に携帯電話が書かれた紙切れが数枚、ポケットティッシュの中に押し込められていて、余計に吐き気がした。
「ははッ…電話なんか掛けないってば」
ポケットティッシュは有難く使わせて貰おうかなと思いつつ入ってたメモ用紙を握りつぶし、粉々に千切る。粉々にしたのは私のせめてもの優しさである。このご時世、どこで情報の漏洩があるか分からないからね。優しいなぁ、私は。なんて思いながらパンツを履いて、軽く制汗スプレーを体に吹き掛けた。晴天の青空はアスファルトに反射して、私を蝕んだ。特に何も入ってない筈のスクールバッグが重い。今日は人数が予定よりも多かったから、少し疲れたのかな。そう言えば水分補給もして無いな。日差しはどんどん強さを増して、辺りが歪む。気持ち悪い、吐き気がする。そう思ったらもうどんどん具合いは悪くなる一方で。思わず蹲った。日が照りつける。頭もクラクラする。意識も遠のく。これは熱中症を通り越して、天国へのカウントダウンが始まったかも知れない。蹲っているせいなのか、パンツにまだ残っていた欲望が溢れ出てきた。気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い…!いっその事、このまま天へ…。そんな事を思っていると、急に日陰が出来た。雲が通ったか?いや、よく知っている、さっきも嗅いだ匂いもした。酸っぱくて、それでいてどこか安心する。私の大嫌いな汗の匂い。
「大丈夫Kaい?」
顔を上げると心配そうに見つめる瞳と派手なバンダナが見えた。そして、すぐに手を差し出して、立てるKaい?と聞かれた。その手を取ると引っ張られ、すぐに立ち上がる事が出来た。小さめのそれでいてゴツゴツした手、いつも触ってくる奴らとは違う感じがして、不思議と掴むことが出来た。じっ、と手を見つめていたせいか、どうしたんだYo、そんなに見つめて!と言って、少し困ったように笑った。その笑顔になんだか脈打つ感じがして、慌てて手を離した。
「ご、ごめんなさい!」
「HAHA〜N?もしかして、惚れたKaい?」
「はぁ?」
思いっ切り間抜けな声が出た。どうしてそうなる。惚れる?そんなバカな話は無い。でも変に動悸がする…具合、良くないし早く帰ろう。お礼を言って立ち去ろうとすると、ふらり、視界が歪んだ。おっと、と言う声がしたと思ったら、衝撃と共に嫌いな匂いに包まれた。あ、抱き締められてる。
「ん、とに、大丈夫かYo」
「ありがとう、ごめんなさい。ちょっと離して」
「でもYo…」
「本当に、大丈夫。離して」
そう言えば、そうKa…と言って男は私を離してくれた。鼓動がどんどん早くなって、胎内から欲望が滴り、パンツに滲んだ。受け止めきれなくなった欲は脚を伝っている。気持ち悪い。早く帰りたい。そう言えばピルは飲んだっけ?あれ?どうだったっけ?フラフラしながら歩くと、本当に大丈夫Kaい?とまた、声を掛けられた。しつこい。放っておいて。初対面のクセに、男のクセに。アンタだって、どうせ…。
「…ああ、そうか」
コイツも男、だった。欲望に感化されたんだ。そうか、そうなんだ。振り向いて笑うと男は少し後ずさった。そしてじりじりと詰め寄ると、男の背は塀にぶつかり、行き場を失くした。
「そうなら、そうと早く言いなさいよ」
「Ha?」
「シたい、んでしょ?」
汗の匂いがした。さっき掴んだ手をまた握ると、男はビクリと跳ね上がる。小さめでゴツゴツした手…なんだか引かれる。瞳を大きく開けて、顔を真っ赤にしている男の反応はまるで処女。いや、この場合は童貞って言った方が正しいのか。まあ、そんな事はどうでもいいの。なんだかコイツを見ていると子宮が疼いてしょうがない。食べたい、食べたいって体が言ってる。そっと頬に手を伸ばせば汗が付いた。大嫌いな汗、でも、コイツのならいいかな…。
「ねぇ、遊びましょう?」
ゆっくりと唇に指を這わせて、顔を近づける。普段キスなんてしないけれど、アンタは私を珍しく興奮させてくれたから、ご褒美。そっと、触れるまで数センチ、そんな時だった。やたら大きな、騒々しい声がした。そして、目が覚めたように男は私を引き剥がした。
「ご、ごめんNa!」
それだけ言って男は目の前から立ち去った。残された私は呆然。まさか、振りほどかれるとは…。そんなこと今までは1度もなかったのに。ドクリ、心臓が高鳴り、体が震えた。何、あの男…。そう思っていると、さっきまで男がいた場所には鍵が落ちている。
「十二支高校野球部…か、ふーん」
こんなに興奮させてくれる男なんて久しぶり過ぎだし、何より面白い。たまには童貞食うのも楽しいかな!そんな気持ちでポケットに鍵をしまい込み、ゆっくりと歩き出した。
「さて、十二支高校はどこかしら?」
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