6日目
どうやって謝ろうか考えながら寄り道をして、寄り道に寄り道を重ね、途中で偶然会った坂田さんにパフェを奢りながら話を聞いてもらっていたら、すっかり遅くなってしまった。
土方さんはまだ起きているだろうけど、この時間に謝りに行ったら今帰ったことがバレバレだし。
いや、別に門限はないからいいのか…?
音を立てないように靴を脱ぐと
「遅ェ」
いつもより濃くタバコの匂いがする。
「すみません、ただ今戻りました」
「どこほっつき歩いたらこんな時間になる。日付変わってんぞ」
この声は、絶対に怒っている。それも結構怒っている。
「寄り道していたら坂田さんに会って…お話しがてら送っていただきました」
送ってもらった、と言えば、この時間に帰ったことについては咎められないと思ったのに
「ヘェ。お話しがてらこんな時間まで万事屋と…。今度会ったら上司として礼を言わないとなァ」
瞳孔ガン開きで礼と言われましても、まともな想像が出来ないんですけど…。
「あの、怒ってます?」
「怒ってないように見えるか?」
「ですよね…。昼間は急に飛び出してすみませんでした。職務放棄とみなされて当然です。罰は受けます」
頭を下げると、ため息をつかれる。
「んなこたァ、どうでもいい」
「へっ?」
じゃあ何を、そう聞こうと顔を上げると、言葉にする前に強く抱きしめられる。
「ひ、土方さん?」
「急に怒って飛び出して、携帯置いてくし追いかけてもいねェし、無意識に人を巻くルート使うな。こんな時間に帰ったと思ったら万事屋といたとか、人がどんだけ探し回ったと……、心配させんな、頼むから」
「ごめん、なさい、?」
抱きしめる力が弱まり顔を覗こうとすると、見るなと言うように肩に額を乗せてくる。
「なんで怒った」
「いや、それは、」
「言え」
弱々しく、私にもやっと聞こえるくらいの声で、怒りも何もなく呟かれる。
そんな声で言われたら、話すしかなくなる。また、ずるい。
「土方さんが、…土方さんがっ、俺に遠慮しないで山上に行けって言うから」
「んなこと言ってねェ」
「言いました!!ショックだったんです。私、今でも土方さんは、少しくらい、私のことを…」
また、女々しい事を言おうとしている。
私が1番言っちゃいけないことを。
情けない。いつからこんなに弱くなったんだろう。
「俺は、お前が山上に惚れてんなら、遠慮すんなって言ったんだ」
「同じです」
「全然ちげーよ。誰にも惚れてねェなら、どこにもくれてやるつもりなんかねェ」
今度は優しく、抱きしめられる。
この頭は、どうしても、都合よく受け取ろうとしてしまう。
「普通に考えて無理だって、私をそういう目で見るのは。だったらどうしてこんなことするんですか」
引き剥がそうとしても、その分力を込められる。
「鬼の副長の元嫁をそういう目で見られる奴がこの屯所にいんなら、俺が根性叩き直してやるって話だ。普通に考えてそんな度胸のあるやついねェだろ」
確かに。
上司の、ましてや鬼の副長の元嫁なんて、好きになろうとするだけでも背負う物が大き過ぎるのかもしれない。
私なら御免被る。
「そういう、」
納得してしまったではないか。
ただの取り越し苦労…なんて、良かったのか悪かったのか、わからない。
「あほ」
「すみません」
「ただの部下だって割り切れてたら、山崎にでも捜させる。こんなこともしねェ。つか、わかるだろ。明らかに上司部下じゃねーことシてんだろーが」
そうなんですけど。
「男性の性[さが]というものかと…」
「性なら尚更部下はねェだろ…どんだけ見境いないと思われてんだよ」
冷静になれば、感情がない部下にわざわざ手を出す理由なんて1つもない。
屯所を一歩出れば、この人に抱かれたい女子なんて腐る程いる。
「あ、ちょ、」
不意に体重をかけられ、そのまま3歩後ずさると、背中に壁が当たる。
土方さんと目があって、逸らせなくなって、
「遅くなった罰」
「んっ」
ちゅっと触れるだけのキス。
「心配させた罰」
「ん」
「俺に捜しまわらせた罰」
「あ」
だめだ、流されそうになってるけど、
「土方さん、ここ、玄関だからっ、誰かに見ら」
「見せつけてやるくれェじゃねェと、どっかのアホが自信なくして妙に勘ぐって不安になる。俺にとっても虫除けになって丁度いい」
さっきのよわーい声はどこへやら…。
いつも通りの意地悪な声で私の両腕を縫いとめて、
「日が落ちてから万事屋といた罰に、勘違いした罰」
「っ!」
唇を舌先で少し舐められて、力が抜ける。
日が落ちたら坂田さんといちゃいけないなんて、聞いてませんけど…。なんて言うと、とんでもない事になるのは目に見えている。
「土方さん、」
「ん?」
「好きです」
2人でいる時だけでいい。
上司と部下じゃないのは、一瞬でいい。
それ以上何も望まない、あなたが私を愛してくれるのは、2人でいる時だけでいい。
だから、今だけ…
「…やっぱり、部屋で待っとくんだった」
「え??」
あれ?
今だけ…。俺も、とか、言わないの?
今さら何の後悔??
スタスタと歩き始めた土方さんの後を追う。
え、もしかして、機嫌損ねた?
嘘でしょ???
愛の言葉を述べた直後だよ???
訳のわからぬままとりあえず付いていく。
副長室の前に着いた途端、腕を掴まれて強引に部屋へ入れられると、激しすぎるくらいのキスが降ってきた。
真っ暗な部屋の中で土方さんの表情はわからないけど、強引なのに私の腕が痛くない力加減を心得ていて、壁に押しやる時はいつも頭をぶつけないように自分の手を回してくれて、余裕がないみたいなキスも気持ちよくて、絶え間なく注がれる愛に、涙が出そうな程ドキドキさせられている。
キスしていなくても、頭がクラクラするほどこの人が好きだ。
溶けて1つになってしまうと思うほど深く、甘く、熱く、焦れったいほどゆっくりと愛を伝え合い、確かめあって、最後にはやっぱり
「俺は、愛してる」
望み以上の、最上をくれる。
「もっかい、言って」
「調子のんな」
「あっ、!んんっちょっ、」
夢の中ではなく、薄っすらと感じた髪を撫でられている現実で、
「愛してる、優生」
やっぱり最上をくれるから、
どうしようもなく満たされて、この日私は、ちゃんと幸せだと言うことをついつい話してしまうのだった。
……
「ん、トシ?」
「起きたか、今日のお前の仕事はこれとこれ」
「んー?」
「昨日の見廻りサボりの始末書と明日の山上の歓迎会の段取り、考えとけ」
「始末…?!どうでもいいって言っ」
「仕事サボっていいわけねェだろ」
「昨日と言ってること違う」
「覚えてねェ」
布団に寝そべったまま、全裸で駄々をこねているところへ総悟くんがやってきて、山上くんが私のことを心配してくれている話を聞くのは15分後のお話。
監察日記- Another side-
6日目
どうやって謝ろうか考えながら寄り道をして、寄り道に寄り道を重ね、途中で偶然会った坂田さんにパフェを奢りながら話を聞いてもらっていたら、すっかり遅くなってしまった。
土方さんはまだ起きているだろうけど、この時間に謝りに行ったら今帰ったことがバレバレだし。
いや、別に門限はないからいいのか…?
音を立てないように靴を脱ぐと
「遅ェ」
いつもより濃くタバコの匂いがする。
「すみません、ただ今戻りました」
「どこほっつき歩いたらこんな時間になる。日付変わってんぞ」
この声は、絶対に怒っている。それも結構怒っている。
「寄り道していたら坂田さんに会って…お話しがてら送っていただきました」
送ってもらった、と言えば、この時間に帰ったことについては咎められないと思ったのに
「ヘェ。お話しがてらこんな時間まで万事屋と…。今度会ったら上司として礼を言わないとなァ」
瞳孔ガン開きで礼と言われましても、まともな想像が出来ないんですけど…。
「あの、怒ってます?」
「怒ってないように見えるか?」
「ですよね…。昼間は急に飛び出してすみませんでした。職務放棄とみなされて当然です。罰は受けます」
頭を下げると、ため息をつかれる。
「んなこたァ、どうでもいい」
「へっ?」
じゃあ何を、そう聞こうと顔を上げると、言葉にする前に強く抱きしめられる。
「ひ、土方さん?」
「急に怒って飛び出して、携帯置いてくし追いかけてもいねェし、無意識に人を巻くルート使うな。こんな時間に帰ったと思ったら万事屋といたとか、人がどんだけ探し回ったと……、心配させんな、頼むから」
「ごめん、なさい、?」
抱きしめる力が弱まり顔を覗こうとすると、見るなと言うように肩に額を乗せてくる。
「なんで怒った」
「いや、それは、」
「言え」
弱々しく、私にもやっと聞こえるくらいの声で、怒りも何もなく呟かれる。
そんな声で言われたら、話すしかなくなる。また、ずるい。
「土方さんが、…土方さんがっ、俺に遠慮しないで山上に行けって言うから」
「んなこと言ってねェ」
「言いました!!ショックだったんです。私、今でも土方さんは、少しくらい、私のことを…」
また、女々しい事を言おうとしている。
私が1番言っちゃいけないことを。
情けない。いつからこんなに弱くなったんだろう。
「俺は、お前が山上に惚れてんなら、遠慮すんなって言ったんだ」
「同じです」
「全然ちげーよ。誰にも惚れてねェなら、どこにもくれてやるつもりなんかねェ」
今度は優しく、抱きしめられる。
この頭は、どうしても、都合よく受け取ろうとしてしまう。
「普通に考えて無理だって、私をそういう目で見るのは。だったらどうしてこんなことするんですか」
引き剥がそうとしても、その分力を込められる。
「鬼の副長の元嫁をそういう目で見られる奴がこの屯所にいんなら、俺が根性叩き直してやるって話だ。普通に考えてそんな度胸のあるやついねェだろ」
確かに。
上司の、ましてや鬼の副長の元嫁なんて、好きになろうとするだけでも背負う物が大き過ぎるのかもしれない。
私なら御免被る。
「そういう、」
納得してしまったではないか。
ただの取り越し苦労…なんて、良かったのか悪かったのか、わからない。
「あほ」
「すみません」
「ただの部下だって割り切れてたら、山崎にでも捜させる。こんなこともしねェ。つか、わかるだろ。明らかに上司部下じゃねーことシてんだろーが」
そうなんですけど。
「男性の性[さが]というものかと…」
「性なら尚更部下はねェだろ…どんだけ見境いないと思われてんだよ」
冷静になれば、感情がない部下にわざわざ手を出す理由なんて1つもない。
屯所を一歩出れば、この人に抱かれたい女子なんて腐る程いる。
「あ、ちょ、」
不意に体重をかけられ、そのまま3歩後ずさると、背中に壁が当たる。
土方さんと目があって、逸らせなくなって、
「遅くなった罰」
「んっ」
ちゅっと触れるだけのキス。
「心配させた罰」
「ん」
「俺に捜しまわらせた罰」
「あ」
だめだ、流されそうになってるけど、
「土方さん、ここ、玄関だからっ、誰かに見ら」
「見せつけてやるくれェじゃねェと、どっかのアホが自信なくして妙に勘ぐって不安になる。俺にとっても虫除けになって丁度いい」
さっきのよわーい声はどこへやら…。
いつも通りの意地悪な声で私の両腕を縫いとめて、
「日が落ちてから万事屋といた罰に、勘違いした罰」
「っ!」
唇を舌先で少し舐められて、力が抜ける。
日が落ちたら坂田さんといちゃいけないなんて、聞いてませんけど…。なんて言うと、とんでもない事になるのは目に見えている。
「土方さん、」
「ん?」
「好きです」
2人でいる時だけでいい。
上司と部下じゃないのは、一瞬でいい。
それ以上何も望まない、あなたが私を愛してくれるのは、2人でいる時だけでいい。
だから、今だけ…
「…やっぱり、部屋で待っとくんだった」
「え??」
あれ?
今だけ…。俺も、とか、言わないの?
今さら何の後悔??
スタスタと歩き始めた土方さんの後を追う。
え、もしかして、機嫌損ねた?
嘘でしょ???
愛の言葉を述べた直後だよ???
訳のわからぬままとりあえず付いていく。
副長室の前に着いた途端、腕を掴まれて強引に部屋へ入れられると、激しすぎるくらいのキスが降ってきた。
真っ暗な部屋の中で土方さんの表情はわからないけど、強引なのに私の腕が痛くない力加減を心得ていて、壁に押しやる時はいつも頭をぶつけないように自分の手を回してくれて、余裕がないみたいなキスも気持ちよくて、絶え間なく注がれる愛に、涙が出そうな程ドキドキさせられている。
キスしていなくても、頭がクラクラするほどこの人が好きだ。
溶けて1つになってしまうと思うほど深く、甘く、熱く、焦れったいほどゆっくりと愛を伝え合い、確かめあって、最後にはやっぱり
「俺は、愛してる」
望み以上の、最上をくれる。
「もっかい、言って」
「調子のんな」
「あっ、!んんっちょっ、」
夢の中ではなく、薄っすらと感じた髪を撫でられている現実で、
「愛してる、優生」
やっぱり最上をくれるから、
どうしようもなく満たされて、この日私は、ちゃんと幸せだと言うことをついつい話してしまうのだった。
……
「ん、トシ?」
「起きたか、今日のお前の仕事はこれとこれ」
「んー?」
「昨日の見廻りサボりの始末書と明日の山上の歓迎会の段取り、考えとけ」
「始末…?!どうでもいいって言っ」
「仕事サボっていいわけねェだろ」
「昨日と言ってること違う」
「覚えてねェ」
布団に寝そべったまま、全裸で駄々をこねているところへ総悟くんがやってきて、山上くんが私のことを心配してくれている話を聞くのは15分後のお話。
- 7 -
*前 次#
戻る
好きだけじゃやってけない