5日目(答え合わせ)
朝。
山上くんをフォローしようと食堂へいくと、隊士たちの笑い声が聞こえくる。
土方さんと顔を見合わせて、ゆっくり近くと
「優生相手によくそんな想像できるよな!」
「いろんな意味で無理だわ、優生は!」
「おいおい、副長と優生ならありえるぞ!」
聞き捨てならない。
ならなすぎる。
それは土方さんも同じだったようで。
「なーにが冗談になんねェって?」
「何がありえるって?」
隊士たちの前へ出ると、全員の顔が引きつる。
失礼しちゃうわ、まったく。
「誰相手だとそんな想像できねェんだよ」
もう少しビビらしてやろうと、一歩前に出た土方さんに続き進みでる。
「"いろんな意味"で無理って何」
「いや無理だろ」
隣から、思わぬ返答が返ってくる。
聞き間違い?
「何か言いましたか副長」
「普通に考えて無理だろ」
「は?!私たち今仲間じゃないんですか?!」
いやいや、今は2人でビビらすとこでしょうよ!
ってかそれより、普通に考えて無理?
昨日あんなことしといてそこまで言いますか。
総悟くんの声で話が戻る。
どうやら昨日山上君が部屋を飛び出した話をしていたらしい。
まさか見られていたなんて、私としたことが気づかなかった。
山上君が話すほどに私までいたたまれなくなっていく。
なんだかとっても恥ずかしいし…あながち完全な間違いでもないし…
みんなにからかわれ、遊ばれ、顔を真っ赤にして涙目で話す山上君が可哀想でならない。
こういう時は、上司の山崎君に当た…言い聞かせておかないと。
別に自分の恥ずかしさを誤魔化してるわけではありません。はい。
山上君の誤解も解け、私達が夫婦だったことも伝わって、きっと一件落着だ。
総悟くんは結構、意外と面倒見がいいこともわかったし。
「あ」
「んだよ」
そんなわけで土方さんと見廻り中なのですが。
「山上君の誤解、まだあった」
ヒーローが私じゃないこと、まだ言ってなかった。
「口を開けば山上だな、お前は」
「そうだ、土方さん、昨日気付いてたんですか?」
「当たり前だろ」
「えぇっ!言ってくださいよ。いつからですか?」
知ってたら、無駄にドキドキしなかったのに。
「振り返って、襖が開いてんのが見えたんだよ。教えてやらねーとって言ったろーが」
「そんなんで分かるかぁ!」
あ、いけないいけない、勤務中だった。
「もっと分かりやすくですね…」
「バレたらテストになんねェだろ」
「テストって、本気だったんですか?あの場の思いつきかと」
テストのためと言われては、何も言い返せない。
くそう、ずるい…。
「ったく、珍しく早く仕事終わらせてゆっくりしようと思ったら覗きなんてしやがって」
「まあまあ、覗くつもりで部屋に来たわけじゃないですし…ね?」
私だって覗かれたのにフォローしているのは、副長様のご機嫌をとるため。
なのに、
「やけに肩もつじゃねェか」
「だって、山上君はそんな人じゃありませんもん。見てればわかります」
「へぇ。よく見てんな」
隊士達とも仲良くしているし、総悟くんも実力を買っているから可愛がっているんだろうと思う。
土方さんだって、ちゃんとは言わないけど、首を飛ばせるのにテストなんてしている。
だからなのに、
「あいつも、よく見てるしな」
「そうですね。観察力と直感は冴えてますよね。あとは経験積んで…」
「お前ェのことだよ」
「へっ?」
「所作がどうとか、言ってたろ」
運転しながらゆっくりと煙を吐く。
土方さんが何を言いたいのか、必死に頭を回す。
「お前ェがそんなに誰かを褒めるなんて珍しい。惚れたか?山上に」
「えっと…?」
「んだよ、俺に遠慮すんな。別れてんだし」
こんな時に、思い出してしまった。
"普通に考えて無理"
そうか、土方さんはとっくに、私のことなんてどうでもよかったんだ。
わかっていたじゃないか、そんなこと。
終わったことに引きずられない、振り向かない、そんな人だ。
私が勝手に、都合のいいことを都合のいいように受け取っていた、それは自分でもわかっていたじゃないか。
土方さんだって男だ。
気持ちがなくとも溜まるもんは溜まるし、抱ける。男の人ってそういうものだ。
そんなのとっくに理解して、受け入れていた。
なのに、そこに愛があるなんて、私の勝手だ。
私が私でいるための、勝手な解釈だとわかっていたはずなのに。
優しさなんて、私だけに向けられるものじゃないのをわかっているはずなのに。
別れたんだ。
それでも想うのは私の勝手で、忘れるのは土方さんの勝手で、もう関係ない。
みんなが元夫婦として扱って来るとき、土方さんがそれを否定しないから、忘れていた。まだ特別なんだと思いかけていた。
新しいタバコの煙をゆっくり吐く土方さんにイライラして、目頭が熱くなって、
「厠行きたいです」
「あァ?」
「停めてください」
「お前、話の途中で何考えてたん…おい」
「長くなるんで先に帰っててください。歩いて帰ります」
「おい、厠そっちじゃ」
「女に厠のこと聞くなんて最低です、じゃあ」
勢いよくドアを閉めて、小走りに駆け出して、後悔する。
私が悪いのに、悲しくなることじゃないのに、当たるのは間違ってるのに、怒ってしまった。
「何してんだ、もう」
余裕がなくて、自分にイライラする。
これでは、あそこで恋愛する資格がない。土方さんを好きでいる資格がない。
こんな女みたいなこと、してはいけない。
「頭冷やして帰って、謝ろう」
誤解を解いて、許してもらえなければ、屯所を出るしかない。
監察日記- Another side-
5日目(答え合わせ)
朝。
山上くんをフォローしようと食堂へいくと、隊士たちの笑い声が聞こえくる。
土方さんと顔を見合わせて、ゆっくり近くと
「優生相手によくそんな想像できるよな!」
「いろんな意味で無理だわ、優生は!」
「おいおい、副長と優生ならありえるぞ!」
聞き捨てならない。
ならなすぎる。
それは土方さんも同じだったようで。
「なーにが冗談になんねェって?」
「何がありえるって?」
隊士たちの前へ出ると、全員の顔が引きつる。
失礼しちゃうわ、まったく。
「誰相手だとそんな想像できねェんだよ」
もう少しビビらしてやろうと、一歩前に出た土方さんに続き進みでる。
「"いろんな意味"で無理って何」
「いや無理だろ」
隣から、思わぬ返答が返ってくる。
聞き間違い?
「何か言いましたか副長」
「普通に考えて無理だろ」
「は?!私たち今仲間じゃないんですか?!」
いやいや、今は2人でビビらすとこでしょうよ!
ってかそれより、普通に考えて無理?
昨日あんなことしといてそこまで言いますか。
総悟くんの声で話が戻る。
どうやら昨日山上君が部屋を飛び出した話をしていたらしい。
まさか見られていたなんて、私としたことが気づかなかった。
山上君が話すほどに私までいたたまれなくなっていく。
なんだかとっても恥ずかしいし…あながち完全な間違いでもないし…
みんなにからかわれ、遊ばれ、顔を真っ赤にして涙目で話す山上君が可哀想でならない。
こういう時は、上司の山崎君に当た…言い聞かせておかないと。
別に自分の恥ずかしさを誤魔化してるわけではありません。はい。
山上君の誤解も解け、私達が夫婦だったことも伝わって、きっと一件落着だ。
総悟くんは結構、意外と面倒見がいいこともわかったし。
「あ」
「んだよ」
そんなわけで土方さんと見廻り中なのですが。
「山上君の誤解、まだあった」
ヒーローが私じゃないこと、まだ言ってなかった。
「口を開けば山上だな、お前は」
「そうだ、土方さん、昨日気付いてたんですか?」
「当たり前だろ」
「えぇっ!言ってくださいよ。いつからですか?」
知ってたら、無駄にドキドキしなかったのに。
「振り返って、襖が開いてんのが見えたんだよ。教えてやらねーとって言ったろーが」
「そんなんで分かるかぁ!」
あ、いけないいけない、勤務中だった。
「もっと分かりやすくですね…」
「バレたらテストになんねェだろ」
「テストって、本気だったんですか?あの場の思いつきかと」
テストのためと言われては、何も言い返せない。
くそう、ずるい…。
「ったく、珍しく早く仕事終わらせてゆっくりしようと思ったら覗きなんてしやがって」
「まあまあ、覗くつもりで部屋に来たわけじゃないですし…ね?」
私だって覗かれたのにフォローしているのは、副長様のご機嫌をとるため。
なのに、
「やけに肩もつじゃねェか」
「だって、山上君はそんな人じゃありませんもん。見てればわかります」
「へぇ。よく見てんな」
隊士達とも仲良くしているし、総悟くんも実力を買っているから可愛がっているんだろうと思う。
土方さんだって、ちゃんとは言わないけど、首を飛ばせるのにテストなんてしている。
だからなのに、
「あいつも、よく見てるしな」
「そうですね。観察力と直感は冴えてますよね。あとは経験積んで…」
「お前ェのことだよ」
「へっ?」
「所作がどうとか、言ってたろ」
運転しながらゆっくりと煙を吐く。
土方さんが何を言いたいのか、必死に頭を回す。
「お前ェがそんなに誰かを褒めるなんて珍しい。惚れたか?山上に」
「えっと…?」
「んだよ、俺に遠慮すんな。別れてんだし」
こんな時に、思い出してしまった。
"普通に考えて無理"
そうか、土方さんはとっくに、私のことなんてどうでもよかったんだ。
わかっていたじゃないか、そんなこと。
終わったことに引きずられない、振り向かない、そんな人だ。
私が勝手に、都合のいいことを都合のいいように受け取っていた、それは自分でもわかっていたじゃないか。
土方さんだって男だ。
気持ちがなくとも溜まるもんは溜まるし、抱ける。男の人ってそういうものだ。
そんなのとっくに理解して、受け入れていた。
なのに、そこに愛があるなんて、私の勝手だ。
私が私でいるための、勝手な解釈だとわかっていたはずなのに。
優しさなんて、私だけに向けられるものじゃないのをわかっているはずなのに。
別れたんだ。
それでも想うのは私の勝手で、忘れるのは土方さんの勝手で、もう関係ない。
みんなが元夫婦として扱って来るとき、土方さんがそれを否定しないから、忘れていた。まだ特別なんだと思いかけていた。
新しいタバコの煙をゆっくり吐く土方さんにイライラして、目頭が熱くなって、
「厠行きたいです」
「あァ?」
「停めてください」
「お前、話の途中で何考えてたん…おい」
「長くなるんで先に帰っててください。歩いて帰ります」
「おい、厠そっちじゃ」
「女に厠のこと聞くなんて最低です、じゃあ」
勢いよくドアを閉めて、小走りに駆け出して、後悔する。
私が悪いのに、悲しくなることじゃないのに、当たるのは間違ってるのに、怒ってしまった。
「何してんだ、もう」
余裕がなくて、自分にイライラする。
これでは、あそこで恋愛する資格がない。土方さんを好きでいる資格がない。
こんな女みたいなこと、してはいけない。
「頭冷やして帰って、謝ろう」
誤解を解いて、許してもらえなければ、屯所を出るしかない。
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好きだけじゃやってけない