帰ったはずの末弟


(長男)



だいぶ昔のこと。俺がまだ学生だった頃かな。その日予定が空いてたトド松と地元の神社の祭りに行ったんだよ。その頃はそれなりの無茶もやってしまうような好奇心旺盛な少年だった。
祭りの夜に俺は嫌がるトド松を誘って、神社のさらに奥の方の暗い道に行こうと言った。その暗い道ってのは、昔からよくない噂が絶えないようないわば心霊スポットのような場所だった。俺達六つ子はそこに近づいては逃げて近づいては逃げてってしてたんだけど、この日思い切って入ることにした。トド松にとっちゃ災難だったなぁ。
もちろんトド松もそのことを知っているし、覚えてたみたいで、

「ちょっとおそ松兄さんほんとに嫌だよボク!!!」

なんて言っていた。

「バーカ。男なら行ってみなきゃいけねーだろー?それにお兄ちゃんいるから大丈夫だってー!」

そう俺は説得して、嫌がるトド松を無理に連れてその道に入った。暗い道は雑木林になっていて、本当に真っ暗で何も見えない。気温は夏なのにやけに低いし、生き物の声さえしない。
なにも知らない人が来たとしても、ここは嫌な場所だと思うような感じだった。トド松が俺の服を握る手がだんだんと強くなる。

「ねぇ……もう帰ろうよ……」

怖くなったのか、トド松は縋るような声でそう言った。でも俺は一度行くと言った以上、全て見て回るまでは帰りたくなかった。

「まぁ、待てよ。まだ大丈夫だって、見ようよ〜」
「ボク……もう怖いよ。もう帰っていい?」
「ダメ!それにひとりで帰んのもお前怖いだろ?」

俺はそう言ったけれど、

「もういや!!こんな所いるくらいならひとりで帰った方がマシ!!!」

トド松はそう言い残し、走ってどこかに行ってしまった。つまんねーの。と俺は思いながら、しばらく雑木林の中を探索し続けた。
しばらくすると暗がりの中から、どこからか分かんねーけどトド松の情けない声が聞こえてきた。

「なぁ、こういう怖い所に冗談半分で入ると、出るって言うじゃん。やめとこう。」
「はぁ〜?お前、だからお兄ちゃん言ったじゃん帰り道怖いだろ〜って。戻ってきたの?情けないなぁ。出るわけないだろ。」

それでもトド松はしつこく続けた。

「いや、出るらしいんだって。」

まだそんな寝ぼけたことを言ってるのかと、俺は呆れて無視をした。そんなに帰り道に付き合ってほしいのか?ほんとに怖がりだなぁ。
無視をしてしばらく歩いているうちに、俺はある違和感に気がついた。

……あれ?

さっきの……たしかに男の声だったけどトド松の声じゃねぇなぁ……喋り方もちょっと違う。

すべての事実に気づいた時、俺は急に背筋が寒くなって怖くなって……。ゾワゾワと身体中が粟立つような感覚になった。考えれば考えるほど頭は痛くなって吐きそうだ。


そんな時、また声が聞こえた。


「俺が出てるじゃねぇか」

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