道を教えてください


(五男)

これは、ぼくが野球から帰っている時のはなし。

「道を教えて下さい」
もう夕方とも言えないくらい辺りはくらい。ちょっと細めの路地でそう話し掛けてきたのは背の高い女の人だった。
その人は足が異様に細くてバランスが取れないのかぷるぷると震えてる。同じように手も木の枝のように細くて、真っ赤なハンドバッグ?をぶら下げている。

はあはぁと何度もため息なのか呼吸なのか分からない息を吐いて、ぼくに聞いているはずなのに視線はまったく違う方向を向いている。すっげーこわい。早く逃げたいなぁ。

「あ、あの。どこに行くんすか?」

あぁ、やばい人っぽい。ぼくは早く答えて立ち去ろうと思った。

「赤塚〇〇〇-〇〇」
「……」

そこはぼくの家の住所だった。絶対間違ってない。番地まで一緒だ。

「し、知りません!!!」

ぼくは関わり合いたくないって本気で思って、冷たいかもしれないけどそう答えた。すると女はゴキッと腰が折れ曲がるほどにおじぎをして、またふらふらと路地の奥へと消えていった。

ぼくは家まで必死に走った。足が速いぼくだけど、今はすごい遅い気がした。怖くて怖くて足が震える。
玄関を開けると家の中は真っ暗だった。珍しく家の中には誰もいない。ぼくはいつもは玄関の鍵をしめたりしないけど今日はちゃんとしめた。

なんだか、空気が冷たい気がする。

誰もいないはずの暗闇から、地を這いずり回るような声が聞こえた。




「道を教えて下さい。」

- 6 -

*前次#
ALICE+