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初仕事がやってきた。一応外見でスカウトされたらしい私はモデルとしてデビューすることになる。その初仕事というのが雑誌でのファッションモデル、まだ新米だからまるっと1ページに載ることはないんだけど


「知ってる人が見ませんように」


そう願うしかなかった、どうしてもバレてしまいたくない過去を思うと気分が落ちる


「なまえ、仕事行くよ」


斎藤さんから声がかかりスタジオまで車で向かう。事務所から割と近い場所にあるスタジオではすでに撮影の準備ができていた


「おぉ、斎藤さん、この子が新しい子かい?」

「いつもお世話になっております。新人のみょうじなまえをよろしくお願いします」


彼が頭を下げているので、私もペコッと頭を下げる


「うん、キレイな子じゃないか!直ぐに売れっ子になるよ」

「ありがとうございます」


社交辞令だろうけど、褒められて悪い気分にはならない。初仕事気合い入れて頑張ろう!と思えたのだ


「それではみょうじさん、こちらへどうぞ」


スタッフの人に連れられ、着替えとメイクを施してもらう。そしてついに撮影が始まった


「よろしくお願いします」


その一声にシャッターが切られた




―カシャ




―カシャッ






スタジオにはシャッターの音だけが響き渡る。それがとても心地よく感じられ、カメラに視線をやり、様々なポーズをしていった。正面の撮影になりカメラを見ると、その奥の風景には龍也さんが立っていた。何時の間に来たんだろうか


「よし、休憩にしよう」


カメラマンの声にスタッフが一斉に動き出す。私はその隙に龍也さんへ近寄った


「龍也さん、来てくれたの?」

「あぁ、お前の初仕事だからな」


そう行って私の頭に手をやる。思えば初対面の時から何度もされているような...?それが彼の癖なんだろうか


「どうだった?」

「初仕事にしちゃあ上出来だ!まだこれから伸びるぜ」


ニカッを笑って褒めてくれる。あぁこの人は、人の才能を褒めて伸ばすのが上手いんだなとふと思った


「ところで斎藤さんは?」

「斎藤は他の仕事が入ってな...だから俺が変わりに来たんだ」


そういうことだったのか、てっきり気になって来てくれたのかと思ってたのに。なんだかちょっと残念




ん?残念?



いや、別にそんなことないじゃない、一体何を考えてるんだ私は


「おい、百面相してどうした?」

「えっ、な、なんでもない!」

笑って誤魔化せばそうか、と気にしないでいてくれる

そこで休憩が終る声がかかり、また仕事に戻る。龍也さんは撮影が終わるまでずっと、スタジオに居てくれた




(龍也さんがいてなんだか安心したかも)


初仕事は無事成功に終わったようだ