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それから二日後、テレビ出演が決まった。ニュース番組の小さなコーナーだけれど、それは唐突にも明日の夜の生放送だという


それまでに過去の気持ちを整理させないと


「あっ、事務所に忘れ物しちゃった...」


歩いて10分くらい、夜道だけどこのくらい平気だ。事務所にはまだ斎藤さんがいた筈だしなるべく早歩きで事務所に向かおう。と急いで戻るとやはりそこには斎藤さんがいた


「あれ、なまえどうしたの?」


優しい笑顔が待っていた


「ちょっと忘れ物しちゃって」

「そっか、夜道大丈夫?もう少し待ってくれたら送っていけるけど」

「ほんと?じゃあちょっとお願いしようかな」


ありがたいことに送って行ってくれるらしい。顔が世間に出まわってるということは、それなりに危険もある。だからここは甘えさせてもらおう。私はお礼にとコーヒーを煎れた

仕事の邪魔をしてはいけないと無言で携帯を触ってい何分か経った。ふと気がつくと、先ほどまでパソコンに向けられていた斎藤さんの目が、私の方を見ていた


「何...?」

「いや、やっぱどの角度から見てもなまえは綺麗だと思ってね」


さすが俺が見込んだ人だ!と一人納得しているようだった


「自分ではそんなこと思わないけど...でも仕事だからそれを誇りとして頑張るよ!」

「その意気だ!」


この事務所の人は優しいな、なんて思っていたらいつの間にか斎藤さんが近くにいた


「ところでなまえ、俺のこと覚えてる?」

「スカウトで声かけたときが初対面...でしょ?」

「あはは、それが違うんだよねぇ」


先ほどまでの優しい笑みはどこかに消えていた





嫌な予感しかしない


記憶を辿っても、どこにも繋がることはない。不安だけが頭を通り抜ける


「なまえは何年か前に、俺に抱かれたことあるんだよ」


あぁ、こんなとこにまで居たのか...

「やっと、戻ってきてくれたんだね」

ニヤっと笑う顔は狂っていた


「街で君を見かけたとき、吃驚したよ。まさかこんな綺麗になっているとはってね。あの時から見た目は好いとは思っていたけど」

「過去を知っててなんで声なんてかけたの...」

「なまえをまた抱けるって思ってね...」


そう言った瞬間、私は床に押し倒されていた。嫌な記憶がだんだんと蘇っていく


「誰とでもヤってくれるんだろう?君はビッチだからね」

「離して!!」

「あのときみたいに縋ってこいよ、抱いてってね」


両手を抑え付けられ、身動きがとれない。必死にもがいても男の力なんてビクともしない


「もう過去の私じゃないの!!!!」


そんな叫び、誰にも届かないのはわかっていた


「何言ってるんだ、君の身体なんて抱かれるためにあるようなものじゃないか」



なんで、こんな奴なんかに...。卑劣な言葉はどんどん私の心を蝕んでいく。こんな筈じゃない、やり直したかったのに、ここでまた過去に戻るのは嫌、嫌だ!!!!


涙が頬を伝った時、扉が開かれた



「な...斎藤!!!!てめぇ何してんだ!!!!」