14
彼は私をぎゅっと抱きしめた
「同じクラスのやつがこんな辛い思いしてるなんて...もっと早く気づいてやればよかった...」
「私、別に一人で生きていけるもの。誰かにどうこうしてもらおうなんて考えたこともなかった」
「もっと周りを頼れよ、俺らまだ子どもだろ?」
腑に落ちない言葉だった、私には一番近い場所にいる親そのものが頼れないというのに
「大人なんて...信用できない」
「だったら俺は?」
「ただのクラスメイトを?」
「その...俺...みょうじが好きなんだ」
頬を赤らめて言う彼はとても真剣で"好き"という感情は私にはよくわからないけれど、何故か頷いてしまった。今思えばここのときから既に私は狂ってしまっていたのかもしれない
「今はよくわからなくていい...いつか知ればいいから」
その日、私は彼に初めてを捧げた。人肌が温かいものだと知ったのも、抱かれたら寂しさが紛れると知ったのもこの日だった
後戻りできなくなったのも、この日から。彼がが部活で会えないと言った日は、ブラブラと街を歩いた。勉強なんて何も満たされない、塾を休むようになり、親には何も言わず外泊をして、たまに着替えを取りに帰れば体中を叩かれ蹴られ、また家を飛び出して
進学校の女子高生、それだけで街行く男は私を見た。いつからか、私の身体だけを求める人でも、それだけでいいとさえ思うようになった
「泊まるとこないの?じゃあ家来なよ」
「うん」
「お泊り代は...そうだなぁ、君の身体でどう?」
「いいよ、必要としてるなら」
快楽なんてあまり感じたことはない、ただ寂しさを紛らわせる為だけの行為。斉藤もレンも、その内の一人なだけ...と思っていたのだけれどレンだけは少し違っていたかもしれない
「なまえ、俺となまえはすごく似ているよ」
身体を重ねる度にレンはそう言った。何かを縛り上げるようなその言葉がどんな意味を持つのかわからないけれど、「あなたも寂しいのね」なんて答えた私は間違っていないと思う