13

中学生になるまで、ごく普通の家庭で育ったと思う。両親がいて好きな習い事をさせてくれて、勉強もまぁまぁできて。あまり怒られることもなく、普通に生活していた。ひょっとしたら他の家庭より笑顔の少ない家族だったかもしれない。そんな生活が変わってしまったのは、中学生のある日



「なまえ、この点数は何なの!!」

「だって...風邪ひいちゃって休んだ時にやった授業のところだったから...」

「そんなの復習したらできるでしょう!?」


バシッと乾いた音と共に私の頬は赤く腫れた。今までにない悪い点数、好きだった習い事は全て辞めさせられ、塾へ行く回数が増やされた。そんな出来事があってから、テストの度心臓が軋むように痛くなった


「3問も間違えて...本当に出来の悪い子ね」


たった3問、されど3問。クラスの中で上の順位だろうが、いくら高得点を取ろうが、次はミスがあるだけで叩かれるようになった


(もう逃げたいよ...)


泣いても泣いても涙は枯れず、その分勉強するしかなかった。中学を卒業する頃には、5教科の合計は485点。学年で首位の座についたとしても母は納得しなかった


「全部で15点も落として...こんな点数で進学校について行けると思ってるの!?」


県内の有名な進学校を受験し、晴れて合格していたのに、それを全て否定する言葉。周りの子は高校に入ったらバイトしたいとか、部活に入るんだとか、目を輝かせて話しているというのに、私はどうだろう。どうやったらこの日常から逃げられるのか、そんなことばかり毎日考えていた。日に日に増えていく傷、もう限界だった

高校に入学してからも、母から受ける必要以上の暴力は止むことはなかった。どんな日でも長袖を着て痣を隠していたのに、ある日の帰り道、どうしても暑くて少し袖を巻くってしまったのをクラスの男子に見られてしまった


「みょうじ...それ、どうしたんだよ!?」

「別に...あなたに関係ないでしょ」

「痛いだろ...?手当てしてやるから家来いよ」


関係ないといっているのに、どうして私なんかにここまでしてくれるのか分からないけれど、彼は私に無関心じゃない、それだけで心が少しだけ温かくなった気がした


「その傷、誰にやられたんだ?」

「親。私の成績が悪いからって」

「ハァ!?お前が成績悪かったら俺はどうなるんだよ...」


彼は本当に落ち込んでいるようで、何だかそれがすごく可笑しくて笑ってしまった


「笑ってる顔、初めて見た...可愛いんだな、お前って」

「そんなことないよ、普通だし」


身体なんて痣だらけでオシャレもできない、土日も家で勉強、平日は塾、もはや普通でもないかもしれない








―「なまえ、大丈夫か?」


気づけば体がカタカタと震えていた。龍也さんがそれに気づいてぎゅっと手を握り締めてくれた。どうして私に触れる手はこんなにも温かいのだろう


「辛かったら話さなくても...」

「ダメ...もうここまで言ったんだもの、ちゃんと最後まで話させて?」


話した後に待ち受けているものは何かわからない、龍也さんに話すのも本当はとても怖い、けれどレンが居たらいずれわかってしまうこと。それならば第3者から伝わるよりも、自分の口から言った方がいっそのこと楽かもしれない


「続けるね...」


「あぁ」