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「お前のことが好きだからだ」





冷めきった悲しい涙なんかより、ずっと温かくて優しい涙が流れる。"ばか、泣くなよ"なんて言っている彼だってどこか泣きそうで、早く私の答えを言わなくちゃって焦るほどに言葉は詰まって出てこない


「俺のこと嫌いか?」


そんな訳ない、と首を横にふるふると振って否定すれば、ほっとしたように笑顔を見せる。その表情をみて私もやっと声を出せた。


「わた、しも...すき」

「なまえ...」

「でも私なんて何も持っていないのに、過去のことだって沢山の人に迷惑かけてきたのに、龍也さんまで巻き込んじゃったらどうしようって...」

「大丈夫だ、何も心配することなんてねぇよ」

「それに本当に好きになって、その...付き合ったことない、から、だからっ...付き合うってよくわかんないけど、龍也さんとはずっと一緒にいたくて、それでっ...!」

「わかったから泣くなって」


気づけば温かい腕の中抱きしめられていた


「だめ...汚れちゃう」

「散々泣いといてよく言うぜ。んな細かいこと気にしてんじゃねぇよ」

「...はい」


少し笑って言う彼の温かい顔に、少しずつ私の涙も止まっていった。落ち着いて話せるようになると、改めて、と顔を見合わせる


「なまえ、お前のことが好きだ。俺と付き合ってくれるか?」

「はい、私なんかでよければ」



ちゅっと触れるだけのキスをして笑い合った





"守る"という言葉の重さを十分理解している龍也さん。だから私は気持ちも体も彼に委ねようと決めた

ここからが本当の自分のスタート

ねぇ、二人一緒ならきっと大丈夫だよね...?






END