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なまえと初めて出会ったのは、土砂降りの雨の中だった。何をしてもやる気のないだらけきった日々、容姿と"神宮寺"の名ばかりを求めて寄ってくる女、そんな自分を馬鹿にするように轟々と降る雨、全てが気に食わなかった


「こんな所で何をしてるんだい?」


目の前に佇むぶ濡れの女。自分より少しだけ年上に見えた彼女は、表情なく「何も」と言った。その瞳は寂しそうに揺られていて、触れてしまえば儚く散ってしまいそうなほどだった


「俺は神宮寺レン、君は?」

「なまえ」


誰かに縋りたいのに、できない、そんな様子が自分と重なってみてた、だから家へ連れて帰った、もちろん少しだけ抵抗はされたけど。強引なことをしてもそれでも自分の家へ帰りたいと言わないのを見ると、何か事情があるに違いない


「お風呂に入ろう」


手を掴んでバスルームに入る、大方一人でと思ったのだろう。一緒に服を脱いでいることに驚いている


「貴方も一緒に入るの?」

「レンって呼んでよ」

「答えになってない」


そう言いながらもやはり大きな抵抗はない


「ねぇってば...はぁ、レン?」

「なんだい?」

「どうしてここに連れて来たの」


やっと名前を呼んでくれたなまえから出た質問に「なんでだろうね」と曖昧に答える。裸になった彼女と共に広いバスタブの中に入る。後ろからぎゅっと抱え込むと、肩や鎖骨の辺りに薄っすらと傷跡があるのがみえた。もしかすると、これが彼女が家に帰りたくない理由?


「ねぇなまえ、この傷跡は...」

「傷?そんなの忘れちゃった」


言葉とは裏腹になまえの声色は沈んでいるように思えた。その表情にどうしようもなく引き込まれた。踏み込んではいけない理由があるのかもしれない。だけどきっと彼女も一緒だ。ねぇ、その瞳の理由を利かせて、もっと君を教えて、きっと俺も君と同じだから


「やっ...ん、はぁっ...」

「なまえ...っ」


気づけば彼女を振り向かせて唇を奪っていた。一人雨に濡れていた君のことが知りたくてどうしようもないんだ



深い深い、君の心の闇も全てを教えてよ