付き合い始めたからと言ってそう多くの変化はまだない。そもそも学校生活が1日の半分以上を占めているのに、その中で彼氏がいて、外でも彼氏に会って、ということが恋愛初心者の私にはあまりぱっと浮かんでこなかった。クラスも同じ、部活も同じ、正直これ以上に何を望めばいいのかよくわからない
「みょうじはなんかないの?」
「何かとは...」
「......デートしたいとか、一緒に帰りたいとか」
デートとか一緒に下校するとか付き合ってるみたい...あ、そうか付き合ってるんだった。そんな事実にじわじわと顔が赤くなるのがわかった
「なに想像してんの」
「べ、別に...」
「ふぅん...」
その全てわかっていますよ、みたいな目で見るのはやめて頂きたい。付き合って2週間、その間にわかったのは赤葦は私と話すときじっと目を見てくること。少しつり目で髪の毛と同じように色素の濃いその瞳で見つめられると、思考が丸裸にされているようで恥ずかしくて今までと同じように話せなくなってしまっていた。あぁ、あの視線に気づかなければよかった...と少し思うのだけど、そうすると赤葦と付き合えなかったわけで、どちらかを譲歩するしかなかった
「あのさ、ごめんね、私こんなんで」
「どういうこと?」
「その...付き合うとか、そういうの慣れてなくって。まだ恥ずかしいとかそういうのが勝っちゃってうまく話せないし...」
「そんなの気にしてたんだ。」
「うん...」
「いいよ別に、慣れてた方が困るし、俺だってみょうじ以外に好きになったとかそういうのないからよくわかんないし」
さらりと爆弾発言をされた気がしたがスルーしておこう
「恥ずかしくてうまく話せないんだけどね、それで赤葦を不安にさせたりとかしたくないし...だから気持ちだけはちゃんと伝えようと思ってる、よ」
「例えば?」
「え?えっと...好き、とか、」
自分で言っておいて顔を覆いたくなるほど恥ずかしかった。けれどそっけない態度だと思われたくないし、こういうことはしっかり伝えた方が良いとも思うし、なんて考えていると頭の中が爆発しそうだった。ちらっと指の隙間から赤葦を見るとほんのりと頬が染まって、口元を手で隠していた
「あ、あかあ、し...?」
「...そういうの、ダメ。可愛いから」
「かっかわい...!?」
「あー...ちょっとこっちみないで」
くるりと後ろを向かされると、赤葦にぎゅっと抱きしめられた。首元を掠めるふわふわとした髪の毛が少し擽ったい
「ごめん、少しだけこのままでいて」
「...うん」
ドキドキしたけれど赤葦の温もりが心地良くて、私は暫くの間赤葦の腕の中に閉じ込められていた
2016.03.15
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