「みょうじ、まだマネの仕事ある?」
部活もそろそろ終わる頃、木兎先輩の自主練に付き合うであろう赤葦がその準備をしながら聞いてきた。ポケットに入れていたメモ帳を見返すと、"1週間後までに倉庫整理"とある
「なくはない、かな」
「どのくらい時間かかるの?」
「やり始めたら1時間くらいはかかると思う」
「じゃあその仕事して待ってて」
「え?」
「一緒に帰ろ」
赤葦の言葉を頭の中で噛み砕いて理解する。もちろん断る理由がなくにこりと笑って快諾する
「じゃあまた後で」
ぽんぽんと頭を撫でて、赤葦はまた木兎先輩の方へと向かっていった。影からこっそり覗いていたらしい雪絵先輩に「あららら?」とニヤけられたがもう自主練の時間になるので許して頂きたい
「ふぅ...疲れた...」
倉庫には雑多に置かれた段ボール、その上に埃などが積み重なりまぁ酷いことになっていた。話す相手もいないので集中して掃除と整頓に取り掛かると、1時間もしない内に終わらせることができた。時計を見れば、最後に確認した時から45分経っている。赤葦達はまだ自主練しているだろうか?ボトルが空になっていそうな気がするので何本かドリンクを作って持って行こう
ガラガラと体育館の入り口を開けると、その場にいた5〜6人の視線が集まった
「ドリンク作ったんですけど飲みますか?」
「まじか!みょうじサンキューな!」
「おーありがとー」
次々に先輩方に一言かけられドリンクを渡していく。最後に赤葦に渡すと「もう終わったの?」と聞かれたので、うん、と返事をした。この雰囲気じゃあまだ自主練終わらないかな、と思っていると
「多分もう少しだから、そこで見てて。あとこれ使っていいから」
と上着を渡される。少しずつ夏に近づいているとはいえ、夜はまだひんやりと冷たい空気で覆われている。既に制服に着替えて来ていた私には体育館は少し寒かった
「ありがとう」
と言って上着を受け取るとまだじんわりと暖かかった。コートから少し離れて危なくない場所に腰を下ろして膝の上に上着をかける
「くっそ...お前らラブラブかよ!青春かよ!」
「みょうじいいなぁ...俺も赤葦に優しくされてーよ!!」
「じゃあ怒られるようなことしなければいいんですよ」
「全くもって赤葦の言う通りだな」
コート内でガヤガヤと繰り広げられる会話に笑ってしまう。そこからはまた真剣にバレーをやるのだから、この人達は本当にバレー馬鹿だと思う。そして私もその練習風景を食い入るように見つめるのだから同属かもしれない
(それにしても赤葦かっこいいな...)
真剣にボールへ向かう姿にまた心がぐっと惹きつけられた
2016.03.16
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