お昼休み、いつものように美月と一緒にお弁当を食べる。 同じクラスにも友達はいるけれど、お昼だけは必ず美月と一緒だ。これは1年の頃から変わっていない。ガヤガヤとした教室で、なんでもないような話をして、一緒に休み時間を過ごすのだ


「赤葦と順調なの?」


つい最近2人で下校した、と言いながらその時のことを思い出し顔が熱くなる。そんな様子を美月はニヤニヤと眺めてからかってくる


「熱いねぇ〜青春だねぇ〜」

「ヤメテクダサイ...」

「で、どこまで進んだの?」

「ぶっ...げほっ...な、え、」

「あははは!なまえ慌てすぎ!」


いきなりの質問に食べていたおかずを喉に詰まらせそうになった。人の多い教室でなんてことを聞いてくるんだこいつは。言わないよとの意味を込めて美月をジロッと睨むと、教室の入口の方で赤葦を呼ぶ声が聞こえた。部活のことだろうかとそちらを見ると、そこにはふわりと可愛らしい女の子の姿があって、あぁもしかして。なんてじくりと胸を締め付けた


「あれは...間違いなく告白だね、いいの?」

「いいのって...そんなの私が止められる権利なんてないし、言うのも聞くのも自由でしょ」

「そんな寂しそうな顔してよく言うよ」


赤葦と付き合っているのは私だ、それは間違いないのだけれど、あんなに可愛らしい女の子を見るともしかして...と不安になってしまうのだ。バレー部と数人の友達以外には他言しておらず、噂にもなっていなければあの子が私と赤葦が付き合っているということも知らないのだろう。そんな中、告白を止めるなんてことできないのだ


「そんなに不安なら隠れて付いていってみる?」

「......やだ。誰かに好きって言われてるところ見たくない」

「なまえは可愛いね〜ま、大丈夫だって。赤葦はなまえのことしか見てないから」






美月が教室に帰り1人になると心の中のもやもやが大きくなっていくようで気分が悪かった。力なく机へぺたりと張り付くと、窓から自分の心とは真逆な澄んだ青空が広がっていた

ガタンと、反対側から椅子を引く音がした。きっと赤葦が帰ってきたのだろうけれどそちらを向く気にはなれない


「なまえ寝てるの?」


ごめん、と心の中で赤葦に謝り狸寝入りでやり過ごすことにした。今口を開けば思ってもいないことを言ってしまいそうで、そうやって拗れていくよりかは狸寝入りしている方がずっと賢明な判断だと思った


こんなもやもやを引いたままで今日の部活は普通にできるのだろうか。



チャイムが鳴って午後の授業が始まっても、私は赤葦と顔を合わせることができなかった




2016.03.18