「ーーっ!!」


お風呂に入ろうと脱衣所で部屋着を脱ぐ。今日も1日色々あったなぁ、なんて呑気に構えていると、目の前の鏡に映る自分の首筋より少し逸れたところに目がいく。声が出ずぱくぱくと口が開いてしまう...これは明日文句を言うしかない






「はぁ......どうやって言おうか」


昨晩意気込んでいたものの、実際本人を目の前にしてあの紅い跡のことを言うのは憚られた。というのも文句を言いながら昨日の空き教室での出来事を思い出してしまい、自分が恥ずかしくなってしまうからだ


「なまえ、どうかした?」


朝練前、そんな私の気持ちも知らないで普通に話しかけてくるあかあ...京治に、貴方のせいですと言葉の代わりにじろりと視線を送ると訳がわからないといった顔をされる


「言いたいことあるなら口で言ってくれなきゃわかんないんだけど」

「......跡、」

「なに?」

「昨日、跡、つけたでしょ...」


恥ずかしい気持ちをどうにか殺して私は怒ってますと言うように冷たく言ったはずなのに、目の前の男はどういうことだか飄々とあぁ、それのことと言ってのけた


「俺何かしたのかと思ったじゃん」

「いやしてるでしょ!」

「これからもっと色々したいと思ってるのにそれだけで恥ずかしがってたら身がもたないよ」

「い、色々って......」


京治の言葉に昨日のあったことが鮮明に蘇った。ギラついた視線に身体を触るゴツゴツとしているけれど優しい手、首筋にかかった熱い吐息まで、...そしてそれ以上のこととは、少しだけの想像が私の熱をぶわっと上げ言葉が出てこなかった


「あ、え、...えっと...」

「なに考えてたの...変態」


いつになく楽しそうに笑う京治に私は捨て台詞のように「ううううるさいっばーか!」と叫んで走り去ることしか出来なかった。爽やかな仮面を被ったとんでもない肉食動物だ






「赤葦があんなに笑ってるとこ初めて見た...」

「これもなまえちゃん効果ね〜」

「みょうじすげぇな!あれ、でも走っていっちまったぞ?」

「赤葦が何かしたんでしょ。ほら、好きな子は虐めたくなるタイプっていうか...」

「「「それだ」」」



朝のやりとりが3年生に覗かれていたことは私も京治も気づいていなかったのであった




2016.03.23