1週間の休みを挟んで、また合宿が始まった


「みょうじさーん!」

「はーい」


同じ場所にいるのに、忙しく走り回る彼女に話しかける暇なんてない


「みょうじーわりぃ、指やってもらっていい?」

「わ、腫れてますね...まず冷やしましょう」


マネージャーの役目だから、あぁして俺以外の男に触れたりもする。もちろんそこに恋愛感情などないことはわかっているけれど、それでもいい気はしない。そして一番心配なのは


「あーあっちぃなー」

「暑いなら離れてくれますか?」

「なまえちゃんつれねぇな」

「暑いです、邪魔です」

「おー怖ぇ〜」


件の男、黒尾さんと目が合った気がする...つまりは俺へ見せつけているんだろうけど


「黒尾さんいい加減離れてください」

「はいはい、あ、赤葦こっち見てんぞ?」

「え?あ、ほんとだ、赤葦ー!」


なまえは心底面倒な顔をしながら肩に回っていた黒尾さんの腕を剥がし、俺の姿を見つけた途端にふんわりとした笑顔で手を振った。なにそれ、可愛いんだけど

隣にいる黒尾さんのことも忘れて、思わず微笑んで手を振り返した。なまえのことが好きすぎて嫉妬してしまうけど、彼女の中で俺は特別だということも勿論わかっている

(今はあの笑顔だけで我慢しよう)

「午後も頑張ってー!」


大きな声で大きく手を振って、本当に恥ずかしくなるくらい可愛い。なまえの"頑張って"という言葉だけでやる気が出るのだから俺も案外単純だ。よし、頑張ろう






「あ、赤葦ってあんな風に笑ったりするんだな...」

「何言ってるんですか黒尾さん、赤葦は結構笑いますよ」

「それってなまえちゃんの前だけじゃねぇの?」

「そんなことないです」


だってテスト期間が終わって漸く部活を始められる時の京治は、それはそれは嬉しそうに笑っていたのだから。京治は木兎さんのことをバレー馬鹿だなんていうけど、京治も大概負けていないと思う


「なまえちゃんも赤葦に見せる笑顔、俺にも向けてくれよ」

「嫌です、っていうか黒尾さんには無理です」

「ひどくね?」

「ほら、もうすぐ休憩終わりますよ!」



京治の笑顔も見れたし、私も頑張ろう




2016.04.08