※森然と生川のマネージャーは名前は出ていますが学年がわからないので、夢主と同じ2年生ということになっています








"ごめん、今日はマネージャーのみんなで色々と話すみたい"

LINEで京治に送ればすぐに既読がつき返事がくる

"わかった。早めに休みなよ、おやすみ"

正直言えば今すぐ京治のところに行きたい。でもマネージャーとの交流も勿論大切で、その上私が逃げられないように大好きな◯り◯りくんの梨味まで用意されてたら断れない。ごめん京治、アイスに釣られました


「ではこれから合宿恒例の恋話大会を開催します!!」

「しま〜す!」


いつから恒例になったんですか、そんな表情をしながらかおり先輩と雪絵先輩を見つめる。みんなわくわくとしているけれど、仁花ちゃんはぴしりと固まっている。あぁ、面倒くさいことにならなければいいな...


「ほらほらなまえちゃん、赤葦みたいに面倒くさいですって顔しないの」

「付き合ってから似てきたね〜」


本当に、もう、これは私を餌に恋話しようと言っているとしか思えなくて。他人の恋話が蜜の味、と言える女子高生しかいないこの部屋の温度が密かに上がったような気がした


「なまえちゃんの彼氏が赤葦!?」

「あのセッターの子だよね!」

「かかかか彼氏っすか!!」


英里ちゃんも真子ちゃんも、そして真っ赤になってる仁花ちゃんもそんなキラキラ目で見てこないで。黙っているけれど潔子さんの視線もぐさりと突き刺さる、うちの先輩たちはにやにやしているしこの場にはきっと私の敵しかいない...つまりは覚悟を決めるしかないのだろう


「なまえちゃんは赤葦のどこが好きなの〜?」

「ど、どこがって言われると難しいですけど...しっかりしてる所とか、あと優しいとこ....です」

「やだなまえちゃんってば照れてるの可愛いー」

「そ、そういう英里ちゃんとか真子ちゃんはどうなの!?そっちの学校頼もしそうな人たくさんいるよね!?」


話を振った2人はうーんと唸って"だってブロッコリー(タラコ)だよ?"とハモった。一瞬空気が凍ったのちに誰がぷっと吹き出す。それにつられるようにみんなが笑いだす


「私たちはもうバレー部内で恋愛しないって決めてるから」

「バスケ部とか狙ってる」

「狙い目が生々しい...!」

「せ、先輩方はこう...女の子として日頃気をつけていることって、何かありますか!?」


仁花ちゃんが何か覚悟を決めた表情で質問をする。そんなに思い詰めて聞くような話じゃないと思うけど、なんだか一生懸命で可愛いなぁと、微笑ましい気持ちで後輩を見る


「私は彼氏とか好きな人はいないけど、いつでも姿勢良く過ごすようにしてるかな」


と潔子さん。確かにいつ見ても彼女は凛としていて見惚れてしまうくらいだ


「私は髪の毛の手入れかな〜お風呂上がりのオイルだけはちょっと高いの使ってる〜」

「雪絵の髪の毛すごくいい匂いする...!」

「なるほど、これが女子力ってやつですね!」


雪絵先輩の艶々な髪はそうやって手入れされていたのか、と納得する


「それで...なまえ先輩は!?彼氏さんがいる先輩の気をつけてること、教えてください!!」

「えっ、私!?うーん...そうだなぁ...」


ぐるぐると思考を巡らせ振り返ってみる。服装は付き合う前も後も特に変わらない、食生活を変えるとかそういうこともしていないし、運動もマネージャー業が普段からハードだしそれ以上にはしていない...あぁ、一つだけ、やり始めたことがある


「肌の手入れはしっかりするようになったかな」

「そういえばなまえちゃん、最近綺麗になったよね」

「本当ですか?効果が出てればいいんですけど」

「わーもちもちしてる!どうやったらこうなるの?」


私も触らせて!とみんなに頬をぷにぷにとやられる。これじゃあ話せません...と黙っていると、何やらかおり先輩が思いついたようにニヤリと笑った


「ははーん...キスするときに顔近づくから肌のこと気にしてるんでしょ?」

「..........っ!!」


ぶわっと一瞬で顔が赤くなるのがわかった。ずばり図星を言い当てられた、ぱくぱくと言葉に音が乗らず正にその通りですと言っているようなものだった。かおり先輩だけでなく仁花ちゃん以外の全員がにやにやとこちらを見ている


「その反応はもうキスは済ませたね?」

「さあどこまで進んだのか吐いてもらおうか〜」


手をわきわきと怪しげに動かしながら近寄られ身の危険を感じる。その前に真っ赤になってフリーズしてる仁花ちゃんに誰か気づいてあげて...私はもう逃げよう、そうしよう


「も、もう寝ます!!」


宣言してがばっと布団を頭まで被ったけれど、ここにいる人たちがそれを許すはずもなく



マネージャーの部屋は夜遅くまで灯りの中、楽しげな声で賑わっていた




2016.04.09