その腕、そのままでの続き。

「ねぇ、なまえって荒北と付き合ってるの?」
『え?!付き合ってないよ!やめてよ!』
「そうなんだ?でもなんか仲良くない?」
『いやそれは……二の腕が好かれてるだけであって…』

最近たまに聞かれるようになってしまった荒北くんとの関係。
ある日突然二の腕を揉ませてと言った荒北くんは、それ以降毎日のように私の二の腕を揉む。
二の腕目的に毎日1度は話しかけられるし、勘違いされてもしょうがないかもしれないけど、そんな甘い関係ではなく、ただ二の腕を揉まれてるだけ。
ただ、以前よりかは話すようになったのは事実だけど。

「なまえチャン?今日も良いだろ?」
『……荒北くん、いい加減飽きないの?』
「飽きない」
『……はぁ』
「早く」

急かされて、荒北くん側の腕を少し浮かせば素早く掴まれて揉まれた。
相変わらず欲求に忠実な彼はすこし乱暴に、ふにふにと揉む。
この揉まれてる間が、私はどうしたら良いか分からなくて1番苦手。荒北くんは一体何を考えて揉んでるんだろう。

『荒北くんならさ、他にも揉まれてくれるというか、むしろ揉んでって言ってくる女の子いっぱいいるんじゃないの?』
「あァ?キモいじゃん揉んでとか言う女」
『ちょっと意味が違うかもしれないけど…』
「しかもなまえチャンのが気持ち良いだろォ?」
『……そう?』
「おう」

いつまで続くんだろう、この関係……。
まさか荒北くんが飽きるまで?それとも荒北くんに彼女でも出来たら止めてくれるのかな?

『荒北くんて彼女とか作らないの?』
「はぁ……?なに、なまえチャン俺のこと好きな訳ェ?」
『え、なんでそうなるの!』
「気になるんだろ?」
『……ちょっと意味が違うけど』
「まァ。しばらくはなまえチャンのこの腕があるからいらないんじゃナァイ?」
『え……じゃあこれずっと続くの?』
「あ?嫌なわけェ?」

ぎらり、荒北くんの眼が光って、思わず声にならない声が出た。やっぱりこういう眼をする荒北くんはまだ苦手だ。獲物を狩る狼みたいな眼で見られたら、頷くしかないんだもん。
こうして私は、荒北くんに振り回されていくのかなぁ。

「つーかさ、なまえチャンが彼女になれば一石二鳥じゃね?」
『えっ……!?』
「……なーんてな。そこまではさすがに押し付けねぇヨ」

荒北くんは、切れ長の目を更に細めて笑った。
……なんだ、冗談なのか。良かった。危うく私の心臓が止まる所だった。
それでもバクバクと強く脈打っていて、ちょっと苦しい。男の子に告白なんてされたことなんて、ほとんどないし顔もちょっと熱い。(告白なんかされていなくて、冗談なんだけど)

「ま、なまえチャン次第だけどな?」

またな、立ち上がった荒北くんはそう言って、ポンと私の頭に手を置いてからそのまま教室を出ていった。

その言葉、本気ですか?

さっきとは比べものにならないほど、一気に顔の熱が上がった。
荒北くん、それは反則ではないですか?明日からどう接すれば良いのか、恋愛初心者の私には分からなさすぎて、今日は眠れないかもしれない。

そもそも、私は荒北くんが好きなわけ?
まずはそこから悩まなくちゃいけないのかも……なんて思ったら、なんだか頭が痛くなってきた。

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