お見送り


「あ、典明さん、時間が…」

「ああ、本当だ」

皆様、おはようございます。
典明さんが三人に見える…もとい、本当に三人になってしまってから、早1時間と少しが経ちました。

残念ながら今日は平日。
典明さんはそろそろ出勤のお時間です。

「そういえば、赤髪は何処で働いてるんだ?」

「ああ、SPW財団の超常現象解析チームだ」

「SPW財団!?ある意味自分で言うのもなんだが、なんだってそんな超一流企業に就職できたんだ」

「まあ、そうだね。それこそ自分で言うのもなんだが、コネに近い」

「またそんな。典明さん、スカウトされたんですよ、SPW財団の人から」

「…信じられないな」

「やっぱりそれ、ジョースターさん繋がりってことだよな」

「ああ」

「…承太郎は、どうしてるんだ」

「今でも一緒に仕事したりしてる。…さて、」

他愛ない会話をしながらも、緩めに巻いていたネクタイを締め直して立ち上がり、鞄の中身をチェックする典明さん。
わたしはいつもどおり上着を取りに行って、それを典明さんに渡す。

なんだかいつもどおりのことなんだけれど、何故か他の人の視線があると思うと…ちょっとだけ、不思議な緊張感があります。

「今日、承太郎に今起きていることについて連絡してみる。もしかしたら一緒に帰ってくるかもしれないから、その時は連絡するよ」

「はい、お願いします」

「あと、何かあったら遠慮せずに連絡してくれ」

「ふふっ、大丈夫ですよ」

「じゃあ、行ってきます」

「はい、いってらっしゃい!お気をつけて」

「キミも気をつけて」

パタン

玄関のドアが閉まり、小さく聞こえる靴の鳴る音がやがて聞こえなくなる。

「やれやれ、僕らも大概信用ないな」

「まあ、疑い深いところは僕らと一緒ってことだ」

「ふふっ、違いますよ。典くん、典明くん」

「違う?なにが、」

「典明さんは、お二人の事も心配してるんだと思います」

「心配…いや、してないと思うけれど」

「だって、お二人だって不安でしょう?」

「それは、まあ…」

「違う、とは言えない…ですね」

「分かってますよ、ちゃんと」


典明さんも、わたしも。
不安なまま過ごすのなんて、辛いし、苦しい。お二人がせめて不安でなくなるように、その心を支えられたら。そう思っています。




- 5/68 -

前ページ/次ページ


一覧へ

トップページへ