こんな日に


※参加型企画にて投稿頂きました作品です。

◇5部終了後。ブチャラティチーム生存の平和な世界。

「たっだいま〜〜」

ガチャっと大きく開かれたドアからごきげんな声が聞こえた。

廊下に出ていた私と目が合う。

「ああミスタ。おかえりなさい」

「会いたかったぜーなまえ」

そう言ってぎゅっと抱きしめられた。

しかしその腕はすぐに解かれ

「先に風呂入ってくっからよ」

あっけなく彼は脱衣所へ行ってしまった。

ミスタがお風呂に入っているあいだ食事の用意を整える。

昼間、花屋で見つけてきた小さなバオバブや大きなガーベラが見事で、キッチンカウンターにいっしょにならべる。

いつもとはちょっとちがう、とゆうことが大切なのだ。

鼻歌が聞こえ出し、間も無く

「おっ、何の匂いだァ?」

ミスタはリビングに戻ってきた。
かけられた首のタオルに水滴が吸い込まれて行く。

「ウマそ〜〜今日は豪華だなァ。なんかあったのか?」

「……」

「なァ なんかの日だったか?」

「…今日、誕生日」

今度はミスタが黙り、しずかにソファにむかうとゆっくり沈んだ。

「あ〜〜そうだったなァ〜〜わりィ」

「…食べてきたんだ?」

「まァ腹減ってたしよォ」

もうバオバブもガーベラも目に映らない。

「…そう」

ダイニングテーブルのお皿を勢いよくつかむと、キッチンのゴミ箱のペダルを私は思いきり踏んだ。

「おい待て待て待てッッ!!」

「なにを?」

大皿の底が熱い。
彼は何を言っているのか。

なぜ自分も止まったのか。
今度は顔の高さまで皿を持ち上げたとき

「「やめろッ!」」

ブチャラティとナランチャがリビングへ顔を出した。

「オイオイ、おせーよォ〜!」

そしてミスタはソファにうなだれた。

「なまえ、遅くなってすまない。ミスタに君の誕生日だって聞いてな」

ブチャラティが困ったように話す。
ナランチャが袋からドリンクのボトルを何本も取り出しながら安堵した。

「危なかったぜェ〜〜。もう一歩でなまえの料理食えなくなるところだったよォ」

ふたりが入ってきたことに気づかなかった。
すると玄関ドアの音が聞こえ、さらにリビングに2人やって来た。

「アレ?どうかしたんですか?」

「なんだ。ケンカでもしてたか?」

フーゴとアバッキオの疑問は的中だ。
ふたりは楽しそうに、それぞれにお酒の入った袋を私に差し出した。

「危機一髪だったぜ〜〜。ウソは苦手なんだよなァ。なまえ、悪かった!全部ウソだ」

「なに…?」

本当になんと言えばいいのかわからない。

持ち上げていた大皿は、いつのまにか胸の前に落ち着いていた。

「だからァ、みんななまえの誕生日だって言ったら行きたいって言うからよォ。全員揃うまで時間稼ぎしてから、驚かそうと思ってたんだよ」

「とにかくミスタが早く帰りたがっていたからな、うまくやってくれるだろうと思っていたんだが…。だが、みんな君の誕生日を祝いたかったのも本当だ。どうか許してくれ」

ブチャラティにそう言われては、納得するもしないもない。

ただありがたくうれしいことだ。

「ごめんなさい…。台無しになるところだった」

「まァ、事情がわからねェのに素直に驚けってのも無理な話だな」

なんて染みるんだろう。
むらさきの唇は優しさを紡ぐ。

「ミスタ、あなたのウソがヘタだったんですよ」

「なんだよフーゴ、オメェもかよ…」

「それよりさァ、なまえの料理も無事だったんだし、早く食おうぜ〜〜オレ腹減ったよ〜」

「ごめんねナランチャ。すぐに用意するね」

バオバブやガーベラに色が戻ったのに、みんなの言葉で少しかすんでしまった。

気持の収まったころ、料理もワインも美しく見えた。
席に着くとフーゴから紙袋を手渡される。

「残念ながらジョルノは来られないんですが、コレを預かってきました。なまえ、開けてみてください」

「ありがとう」

全員が見守る。
誕生日プレゼントなんてドキドキしてしまう。

大きな紙袋には、短いバラのブーケがたっぷりと束ねられていた。
白い封筒が差し込まれている。

「手紙ですね。なんて書いてあるんです?」

お祝いのメッセージとともに情熱的な言葉が並んでいた。

とてもみんなの前で、ミスタの前で読める内容ではない。

「…うん」

「なんて書いてあんだよ」

ミスタとナランチャが手紙を覗きこんだ。

「オイオイ、コレって日本語でかいてあるんじゃあねェの?」

フーゴはさっと手紙を私の手から抜くと

「ボクも少しなら読めます。《なまえ、誕生日おめでとう。今日は会いに行けなくて本当に残念だ。日をあらためて、君をデートに誘いたい。ボクはまだ君をあきらめてはいない。愛しいなまえへ、ジョルノ》」

読んでしまった。

「オイオイオイオイ! オレがいるのに堂々と告白してんじゃあねェよ!ったくよォ〜…」

ミスタは頬杖をつき横を向いてしまった。

「いいんですか?本当になまえをとられてしまいますよ」

しかしミスタの視線がこちらへ戻ってきて、にやりと微笑んだ。

「大丈夫だ。2人のときになまえは、オレがたっぷり愛してるからな」

私は熱くなる顔で自分のひざを見つめることになった。

「ま、せいぜい取られねェように頑張るんだな」

めずらしくアバッキオに笑顔が見て取れる。

「だぁから、大丈夫だって!」

「オレたち全員がライバルでもか?」

「「…え?」」

とんでもない爆弾発言が飛び出し、ミスタと私は微笑むメンバーに停止してしまうのだった。


end


★筆者:まり様




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