再会


※一応年数とか確認したつもりですが、間違っていたらすみません。


1984年、エジプト 某所。

見渡す限り暗雲が立ち込め、時刻は昼を過ぎたばかりだというのに、街は夜に差し掛かったような薄暗さに包まれている。

降りしきる雨の中、一人の男が歩いていた。

男は、一切の雨具を持たず、しかし雨に濡れることなどまったく意に介していないようで。

その悠然と歩く様と、彼の持つ美しい容姿に、すれ違う街の人々の多くが振り返った。

男の名は、DIO。

1年前にこの地へ辿り着き、とある老婆から幽波紋の存在を教えられた彼が探し求めるものは、すべてを手に入れるための“駒”となるもの。
自分と同じ、幽波紋を持つ者である。

絶え間ない雨により通行人も疎らな道を、一人の少女…否、幼女というのが正しいだろうか。
5歳ほどの女児が、DIOの向かう方からやって来る。

DIOは一瞬だけ、彼女に目をやった。

特に彼女が特別な力があると感じたわけではない。

ただ、似ていると思ったのだ。

自分が過去に心を許していた唯一の存在に、その瞳が、似ていると。

DIOは、その人物の最期を知らない。
しかし、彼女と過ごした故郷であるイギリスから、貧しかった彼女の子孫がこの遠く離れた地に移り渡ったとは、些か考えにくいことだった。
それに、万が一子孫であったとしても、自分にはもうなんの関係もない。

女児とすれ違う。その時。

「…でぃお?」

名を、呼ばれた。

自然、彼の足は止まり、声の主である女児を見下ろす。

女児は、大きな瞳で真っ直ぐにDIOを見上げている。

「わたし、あなたのことを知っています」

「…私はお前を知らない。お前は、何者だ」

「わたし?わたしはなまえっていいます」

今度こそ、DIOは驚きに目を見開いた。

「なまえ…だと?」

名前まで同じなど、あり得ることか。

にこり、と笑ってみせる女児…なまえの笑顔は、100年以上前の記憶に残る“彼女”と重なることはない。
やはりそれは子供の屈託ない笑顔。

だが、DIOは確信した。

なまえと名乗るこの目の前の女児は、“彼女”の生まれ変わりだ、と。

「でも、どうしてあなたの事を知っているのか、よく覚えていなくて。前に会ったことがありますか?」

不思議そうに首を傾げるなまえに、DIOは自ら膝を折り、その視線を合わせる。

「ああ。随分前だが、確かに私はお前と会っている」

「やっぱり!そうなんですね」

「なぁ、なまえよ」

「なんでしょう?」

「私と友達にならないか?」

「ともだち?わあっ、なりたいです!」

「そうか。ならば一緒に来てくれるな?」

「え?」

何処へ?
そう動きかけたなまえの口は、しかし言葉を発することなく閉じられた。

彼女は気を失い、DIOの腕の中へと倒れこむ。

しっかりと抱きしめるように彼女を受け止め、その小さな身体を抱き上げ、立ち上がる。

「もう手放すものか、二度と」

小さく呟かれたその言葉は雨音にかき消され、誰の耳に届くことなく、彼の胸の内に沈んでいった。



end




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