同田貫さんに触れる
◇名前変換なし。
俺たちは刀だ。
刀ってのは、要は斬るための道具。武器だ。
誰が正義だの悪だの、そんなもんは俺たちには関係ねぇ。
だから強いのでいいんだ。
その考えは…概念は、こうして肉体を与えられた今でも変わらねぇ。
それが俺たちの本質だからな。きっと変わりようもねぇのさ。
…けど、最近ちょくちょく思うことがある。
俺たちの主を、傷つけたくねぇって。
そう思うことは、あいつが主だからなのかもしれねぇ。
俺たちに肉を与え、感情を与え、そしてその感情を表すための言葉と術を与えた人間。
あいつが死んだり、多分結構ヤバい状態になろうもんなら、その時俺たちはまた元の無機物に戻るんだろう。
そして、また戦とはかけ離れた“美術品”として、永い時間がただ過ぎるだけになる。
それがまっぴら御免だから、そんなことを思っちまうのかもしれねぇ。
「同田貫さん、わたしはあなたに触れても、傷ついたりしませんよ」
「っ、」
重症で帰還した俺に差し伸べられたその手を、俺はほとんど無意識で払い除けていた。
情けねぇことに、その手に縋らないことにはそれこそ俺は使いモンにならなくなることを分かっていたのに、だ。
今にも手放しちまいそうな意識で言葉なんざ発せるわけもなく、ひゅぅ、と喉が鳴るだけだった。
…そもそも、俺自身本当のところ何を言おうとしたのか分からねぇが…。
そんな俺に、主は言った。
敵のか俺のかも分からない血がべったりとこびり付いた手をがっしり握り、はっきりと。
「大丈夫。あなたがわたしを傷つけようとしない限り、この手はわたしと共に戦ってくれる逞しい手です。わたしを守ってくれる、優しい手です。だから、どうかわたしに任せて…!」
ずっと接触することを避けてきた主の手は見た目どおり小さくて、刀どころか一切の武器を持ったこともなさそうな柔らかさだった。
祈るように俺の手を握るその両手は、俺の手に付いていた血で汚れちまっている。
…けれど。
その肉が。その皮膚が。
ほんの少しでも切れていないことは、意識を手放すその一瞬でも理解できた。
そして次に気が付いた時、まだ俺にこの身体があったなら…今までの距離をもう一歩、縮めてみたいもんだと脳裏に浮かんだ。
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