億泰くんに春が来たようで逃がした


億泰くんは惚れっぽくて、だけどその風貌と言動のせいもあり、女子の友達すらほとんどいない。

彼が転校して来た日、わたしも「怖そうな人が来ちゃったなぁ」と、内心思っていた。

それが、友達の由花子ちゃんが億泰くんの友達とお付き合いし始めて、その細い繋がりから段々と億泰くんや仗助くんともお話をするようになって。

いつしかわたしは、億泰くんのことが…異性として、好きになっていた。

荒っぽい言葉遣いとは裏腹に心配性なところや、憎めないおバカさんなところ。
友達に優しくて、優柔不断なところもあるけどいざという時頼りになる。

かっこよくて、何処かかわいい。

そんな、わたしが密かに想いを寄せる彼と、今年も同じクラスになれた。

「億泰くん、今年も同じクラスだね!」
そう言いたくてすぐ近くにいるはずの億泰くんを探すと、彼は何人かの女の子に囲まれている仗助くんをじっとりとした目で見ていた。

流石に彼が何をぼやいているかまでは聞こえないけれど、多分、「なんであいつばっかりあんなモテてんだ」とか、そんなことじゃあないだろうか。

わたし以外の女の子を見て羨ましがっている彼を見て、チクリと胸が少し痛んだ。

今年も同じクラスになれたことは、すごく嬉しい。
でももう、それだけじゃあ足りない。
わたしは、自分の気持ちを伝えたい。

その気持ちが抑えられなくて、わたしはついに。
ついに億泰くんへ、告白した。

「億泰くんのことが、好きです…!」

たった一言、シンプルな言葉。
色々言いたいこと、考えたのに。
結局絞り出せたのは、その一言だけだった。

恥ずかし過ぎて一瞬目を伏せてしまったけれど、なんとか頑張ってしっかりと前を見る。

億泰くんは…呆れたような表情を浮かべていた。

「(え、…え!?なにその反応?!どういう感情なの…?!)」

わたしが想像したどのパターンとも違う表情に、わたしの頭の中は大パニックだ。

「あのなぁ、俺だって学習すんだぜ?ガクシュー。流石に今のは一瞬ビビったよ。でもよ〜、そう何度も騙されねぇぜ、俺は」

「え、は…億泰く…何を言って、」

「あれだろォ〜?なんとかエイプリル。昨日仗助のヤローにも散々からかわれてっからな。嫌んなるぜ」

「なんとかエイプリル…?…まさか」

エイプリルフール?!昨日って言っていたし、間違いない。
でもちょっと待ってよ。
エイプリルフールは昨日の午前中でおしまいなんだよ?!

…それを。わたしの勇気を絞り出した告白を、そんな…。

「う…うわぁああん!億泰くんのおバカ!仗助くんのバカァアアッ!!」

「え、おい!なまえ―?!」




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