仗助は初恋を後悔している
◇なまえさん不在。
『初恋は実らない』とよくいうけれど、本当だろうか。
おれはガキの頃からずっと、高校生になった今でも『初恋』を引きずっている。
「東方くん」
彼女がおれをそう呼ぶたび、胸が痛い。
昔は「仗助くん」だったのに、いつから苗字で呼ばれるようになったんだっけ。
普通は過ごした年月だけ距離が近づくはずなのに、おれとなまえ…みょうじは、真逆だ。
「おい、仗助。なーに不貞腐れた顔してんだ、おめーは」
「はぁ?…別に、不貞腐れてなんかねぇよ」
「その割には随分仏頂面じゃあねーかよ。みょうじと喧嘩でもしたのか?」
「なんでみょうじ…つか、なんでクラスも違う億泰がみょうじのこと知ってんだ」
「近所のスーパーでちょくちょく会ってよォ。たまに荷物とか持ってやってんだぜ、俺」
「…ふーん、そうかよ…」
「でよぉ、自分で気付いてねぇみてーだけど、おめーずっとみょうじの方見てぼーっとしてるから、俺ァてっきりみょうじとなんかあったのかと思っちまったんだよ」
「…は、」
かぁっと顔が熱くなった。
億泰の言うとおり、おれは自分じゃあ全然気が付いていなかった。
ずっと、彼女を見ていただなんてこと。
「幼馴染なんだろ?そりゃあそれで喧嘩することもあんだろうけどよ〜、あの子はいい子だぜ。大事にしてやれよ、仗助〜」
「…うっせ」
わかってんだよ、お前になんか言われなくても。そんなことは。
だからこそ、こんなに悩んでんじゃねぇかよ。
あいつが初恋じゃなけりゃ、よかったのに…。
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