億泰は料理が得意


◇少ししんみり。


自慢じゃあねえが、俺ァこう見えてけっこー料理はできる方だ。

お袋が死んで、親父があんなことになってから、一時期は兄貴が頑張って料理を作ってくれていたこともあった。
けど、俺もそこそこでかくなって、兄貴がまぁ色んなことに忙しくなったもんだから、その内料理の担当は俺って感じになってたんだ。

最初はそりゃあ酷ぇもんだった。
味はもちろん、あっちこっち切ったり火傷したりよォ。
なんか知んねーけど怪我ばっかしてたような気がするぜ。

兄貴も眉間に皺寄せて「不味い」ばっか言ってた。
…そんでも、作ったもんは全部食ってくれたんだよ、兄貴は。

俺はよく兄貴にゃあ馬鹿だ役立たずだと言われてきたけど、それでも残さず料理とも言えねえようなそれを食ってくれる兄貴のためにも、せめてそんくれーは頑張らねえと、と思って練習したんだ。

その甲斐あって、今では料理に関しちゃそこそこの自信がある。

今、目の前に置かれた少し歪なオムライスだって、多分俺ならもっとうまく作れると思うんだ。

でもよォ、俺だけのために誰かが作ってくれた料理なんて、いったいいつぶりだろうなぁ…。

「わたしあんまり料理得意じゃなくて…ごめんね、これからもっと練習するから、今はムリに食べなくても、」

「…いや、悪いなまえ…うまいよ。充分、うまい」

あったけーっつーか、やさしいっつーか。
なんて言ったらいいか分かんねえけど、なまえが作ってくれたこのオムライスは、多分どう頑張ったってなまえ以外の誰にも作れないトクベツな料理なんだろう。




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