典明くんに伝えたいことがあった


◇名前変換なし。原作どおり。


彼と初めて手を繋いだ時は、敵に追われて、一度身を隠そうと走り出した時だった。
彼は迷いなくわたしの手をとり、力強く握って必死に引っ張ってくれた。

汗ばんでいたのはどっちだったのか、なんてわからないけれど、その時は当然二人ともそんなこと気にも留めていなくて…ただお互いの手の温度を感じながら足を動かすことに必死だった。

その次は、足場の悪い道に苦戦するわたしに気付き、前を歩く彼が手を差し伸べてくれた時。
包み込むように優しく、でも支えるようにしっかりと握ってくれたその手に安心して、転ぶことを恐れていたわたしの足取りも随分軽くなったものだ。

ポルナレフにからかわれて、わたしは少しだけ恥ずかしかったけど、彼は至って平気そうで…その時、わたしは胸が苦しくなったのをよく覚えてる。

それからも何度かそういう機会があって、彼ともどんどん親密になって。
その内、彼のことを好きになったんだ、と…自覚した。

けれど、それは今伝えるべきことじゃないと思った。

それでもこの旅が終われば、きっとわたしたちはバラバラになる。

だからね、その前には必ず伝えようと思ってたんだよ。
貴方を困らせてしまうかもしれないと片隅で思いながらも、それでも…。
この気持ちだけは、知っておいてほしかったんだ。

「好き…好きだよ、典明くん…っ」

両手で握りしめた彼の手は、こんなに冷たくはなかった。
こんなに力なく、それでいて硬くもなかったんだ。

わたしは、それを知っている。
知ってしまっている。

「好きだった…好きだったんだよ…」

わたしの声は、貴方に届いているでしょうか。




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