承子ちゃんからのお手紙


◇名前変換なし。


「あっ、届いてる…!」

春から通い始めた専門学校から帰って、まず最初にすることは、家のポストを確認すること。
ポストの中には毎日のように何かしら入っているけれど、わたしが待っているのはいつも同じ。

アメリカからのエアメール。
承子ちゃんからのお手紙です。

昨年、夏の終わりにアメリカの大学へ留学した承子ちゃん。
時折電話でお話をしているけれど、やはり国際電話はお財布に優しくなく…。月に一度くらい、ほんの短い時間だけしかお喋りできません。

だけど、お互いに相手がどんな風に過ごしているのかもっと知りたくて。
だからこうして交換日記のように手紙をやり取りしているのです。

本当は承子ちゃんの声で直接聞きたいのが本音ですが…。
でも、承子ちゃんの綺麗な字で書かれた数枚のお手紙を読むのは楽しいし、何度でも読み返すことができるのは嬉しいです。
それに、何通かに数枚同封されてくる写真も、わたしの知らない景色や遠く離れた承子ちゃんの姿を見ることができるので、すごく…すごく楽しみです。

「わぁ、流石承子ちゃん…美男美女の中にいても全然違和感ない…」

今日届いたお手紙にも、写真が同封されていました。
お手紙には、ご学友の中に写真撮影が趣味の方がいて、その方が撮った大学のワンシーンなのだと書かれていました。

写っている承子ちゃんは、声を掛けられて丁度カメラの方へ視線を向けたところのような、カメラを意識していない感じの表情です。
「なんだ?」っていう声が聞こえてきそうで、くすっと笑ってしまいました。

この撮影をした方は、承子ちゃんが写真に撮られることをあまり好きではないと、分かっているのでしょう。
それとも、素の承子ちゃんが一番綺麗でかわいいと知ってこういう写真を…、

「…ハ…ッ!」

大変です、どうしましょう…!

承子ちゃんが写った貴重な写真。
嬉しいはずなのに、胸がもやもやしてしまいます。

撮影をした方に対するもやもやだけじゃあなく、一緒に写っている美男美女にまで言い知れぬ感情が湧きあがってきます。

承子ちゃん、わたし…女性と男性、どちらに嫉妬したらいいんでしょうか…?!



もちろん承子ちゃんは両方にする。




- 1/100 -

前ページ/次ページ


一覧へ

トップページへ