ブローノ・ブチャラティという人が好きになった
優しい人は嫌いだ。
捻くれていると思われるかもしれない。けれど、自分を犠牲にする優しさも、老若男女に振りまかれる優しさも…わたしは嫌い。
わたしだけが特別であればいい。そう思ってしまうから。
そんな醜い感情が、いつかあふれ出して、優しいその人を傷つけてしまう気がするから。
「…でも、貴方が優しいから…わたしは好きになったんだ」
なんという矛盾。
自分で口にしておいて、笑ってしまえるくらい矛盾している。
思いがけない告白に、彼は驚いた表情をしている。
まいったなぁ、困らせるつもりはなかったんだけれど。わたしにとっても、思いがけない告白だったから、わたしもびっくりしてるんだ。
酔った勢い、で誤魔化せる雰囲気じゃあないよねぇ…。
付き合ってほしい、と言ったわけでもなく、ただ好き、と言ったわたしに、彼は何と返したらいいのかと口籠もっているようだった。
「ね、ブローノって、呼んでもいい?」
彼とわたしの逃げ道を作りたくて、敢えて問いのカタチで言葉を上書きする。
「ああ…構わない」
「やった。ありがとう」
少し気まずそうな笑顔でも、それでもそう返してくれた彼に心から感謝する。
わたしだけが特別であればいい。そう思う気持ちは、確かに今もこの胸にある。
けれど、老若男女、色々な街の人たちから声を掛けられるような、そんな彼を好きになったから。
わたしも少し、今のわたしを変えられるだろうか。
なんて、そんな風に思えるんだ。
「…では、オレもなまえ…と呼んでいいだろうか?」
「えっ、…うん。もちろん!」
「そうか。…ありがとう」
…人の気も知らないで、まったくこの人は。
なんてきれいな笑顔を浮かべているのだろう。
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