承太郎に食われると感じた瞬間
◇平和な日常。
食われる。
口を開けてわたしの唇を覆うように塞いだ承太郎のキスに、わたしはそんな4文字を思い浮かべた。
実際、わたしの唇は今彼の口内に含まれているような状態だし、彼の舌は唇どころかこちらの口内にまで侵入し、あちこちを擦りあげていく。
吐く息や声すらも、すべて承太郎に飲み込まれる。
「…は…っく、るし…ぃっ」
何度も何度も角度を変えて貪られる中で、文字通り声も絶え絶えに抗議する。
もう既に、彼の厚い胸や肩を叩く力さえ出ない。
承太郎のシャツを縋るように握っていた手から、その力すら失われかけた頃…ようやく訴えが伝わったのか、最後に軽く唇を舐めて彼は離れていった。
離れたといっても、わたしを放したわけではない。
身体から力が抜けて、呼吸だけに専念しているわたしを、じっとその双眸で見つめている。
押し倒す、というにはあまりにゆったりとした動きと力加減。けれど確実にわたしをその大きな身体全体で覆う。
「…先に謝っとくぜ、なまえ」
何に対して、なんて言葉はなかったけれど、その一見爽やかなエメラルドグリーンの瞳と目が合ってしまったら、それを問おうなんて気にもなれなかった。
承太郎が自身の唇をひと舐めした瞬間、再びわたしは思った。
ーー…食われる。
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