承太郎くんとのキスが意味をもつ
◇平和な高校生。
初めて承太郎くんとキスしたのは、幼少期の頃。
あの頃は深い意味なんて考えていなくて、おままごとの延長、のような感覚だったと思う。
本当に唇が触れ合うだけの、羽のようなキス。
ただ、それでもちょっぴり照れくさくて、頬が熱くなったのは覚えている。
今にして思えば、そんなことができちゃうくらいにはあの頃からお互い好き…少なくとも、嫌いではなかったんだろう。
あれからかれこれ約十年。
流石にそういう行為に深い意味を持たなくてはいけない年齢になった。
「…別に、取って食いやしねぇよ」
「わ、分かってるけど…っ、緊張、しちゃって…」
殴られるのを覚悟して、目を閉じ、歯を食いしばって衝撃に備えている。
きっと、呆れたように息を吐く承太郎くんにはそんな風に見えるのだろうということは、自分でも一応分かっている。
分かっていても止まるものではないのだ。緊張というものは。
「承太郎くんは…緊張したりとか、あんまなさそう」
「慣れてるように見えるってのか?」
「えッ!あ、いや、そういうことじゃあなくてね!総体的に!そもそも緊張というものをあまりしたところを見たことがないなぁ、って意味…!」
「おれだって緊張してねぇわけじゃねぇんだぜ。なまえにはかなわねぇがな」
「そりゃあわたしは緊張しいだけど、常に緊張してるってわけじゃ、」
「“今“の話だ」
言葉を被せられたと思うや否や、唇に彼の唇が被さった。
わたしは驚いて、目を閉じるどころか見開いてしまった。
仕掛けてきた当人は当然目を閉じていなくて、昔からずっと羨ましく思っていた綺麗な瞳と長いまつげが視界を占める。
「…おい、なまえ。息、忘れてんぞ」
「……っは…!」
時が止まったと思ったら、止まっていたのはわたしの息と思考回路だった。
付き合って初めてのキスが、今日、この日。この時。
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