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隣の小学校に有名な男の子がいた。

その子は良い意味、より悪い意味の方が強い有名人でよく私の小学校にも噂は届いていた。なんでも喧嘩は上級生にも勝てちゃうくらい強く、おまけに個性も派手で強いらしい。頭も良くなんでも出来るその子は子供だけでなく、大人にも一目置かれていると聞いたことがある。
まさにガキ大将を絵に描いたような男の子は、いつも数人の男の子を連れて常に先頭を歩いていた。


そして、ヒーローを目指しているらしい。



前に一度だけその子を公園で見たことがあった。三人くらいで一人の子をいじめていて、今にも泣き出しそうな震える足で間に入った男の子を、ヒーロー気取りかと殴っていた。

その時思ってしまった。

この世から個性なんてなくなってしまえばいいのに、と。






昔からガキ大将と呼ばれる男の子が苦手だ。
個性が発現したのは四歳の時。鬼だった。鬼の出来ることが鬼以上に出来るというもの。最初の頃は制御が出来ず、頭からツノを生やしてしまったり、ボール遊びで思いっきり投げたら木が折れたりした。
それからは一緒にいた友達も離れていった。どうやら親があの子とは遊んじゃだめだと言ったらしい。それもそうだ、個性の制御も出来ない私なんかといたらいつ怪我をしてもおかしくない。怪我どころか死んでしまう可能性だってある。

また皆と遊びたくて、個性の制御を頑張った。私には六歳離れた兄がいて制御の仕方を教えてもらうことにした。兄の個性も同じ鬼だ。鬼でも種類があるらしく、私は"酒呑童子"と呼ばれる種類の鬼で、兄は"茨木童子"と呼ばれるもの。

最強の鬼が酒呑童子。その一番の配下が茨木童子。

兄は個性が発現しても私ほどの威力はなく、体の成長とともに力がついていったから、個性の制御は上手く出来ていた。



小学校に入学する頃には制御も出来るようになっていたが、噂は既に広がっていて友達は出来なかった。
けれど例外が一人。その子は保育園の時から一緒で個性も強く、俺が一番だ!という感じのガキ大将で私の個性のせいか、こいつは敵だ!やっつけろと言って池に落とされたり、節分の日になると大衆を連れて豆を大量に投げてきたり、他にも色々なことをされ、その度に兄が助けてくれた。兄は敵に見えるような怖い顔だったから、現れるだけでいじめっ子達は逃げていった。そんな兄は私のヒーローだった。

二年生の時、いじめっ子の転校が決まった。と同時に、個性の制御が出来ることに気付いてくれたのか、それくらいの時期から徐々に友達もできて少しずつ学校に馴染み始めた頃、クラスメイトの子にその男の子が私の事が好きだったと聞かされた時は驚いた。 好きだからちょっかい出しちゃうみたいと教えてくれたけれど、度が過ぎているし、トラウマものだ。確かに思い切り殴られたり、蹴られたり個性を使われたり、酷い傷を付けられるようなことはされなかったなと思い出した。




そして、私はすくすくと人見知りのビビリに育ち、中学二年生の時、恐れていたことが現実となった。

隣の小学校のガキ大将と同じクラス。更に初めての席替えで前後になってしまった。


爆豪勝己


彼を見る度、トラウマが頭の中を過ぎる。



「……怖い」




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