中間テストは、世界史と数学の出来には満足している。全体的に個展(テスト前にも関わらず、みんな最終日に遊びに来ると同時に片付けもしてくれた。感謝しかない)やテレビでの事件もあったが悪くは無いとは思う。
苦手な古典と音楽は選択科目というのもかなり大きい。
「ね、じゃあ問7は何にした?文中のそれが指す単語ってやつ」
「ええと…悲しげな後ろ姿、にした」
「うっわ、間違えた!あたし机の上の餅にしちゃったよ…」
比較的満足している私の斜め前では千枝ちゃんが雪子ちゃんに回答を聞いては絶望の表情を浮かべている。…うん、多分雪子ちゃんが正解だと思う。餅なんて単語は出た覚えが無い。
「鳴上くん、太陽系で最も高い山って何にした?」
「俺はオリンポス山にした」
雪子ちゃんも成績は良いけれど、サラリと地学の答えも出て来る鳴上くんもきっと成績が良いんだろうなあ。
民族衣装を調べるうちに世界史は得意になったけれど地学は以前興味が薄いままだ。気候と文化も一緒に覚えた方がより理解は深まるだろうし次回は頑張ろうかな。
「ギャー!マジで!?違うのにしちゃったよー…」
「千枝ちゃん、私も多分間違えた。エレベストって書いちゃった…」
「鳴上くんと一緒で私もオリンポス山にした」
「おっ、天城も!?じゃあそれ正解っぽいじゃん…」
その口振りだと花村くんもオリンポス山を選ばなかった敗者なのだろう。がっくりと彼は頭を垂れ下げた。
「あーあー、廊下に貼り出されるのが楽しみだよ、ったく…」
「雪子ちゃんほど成績良くは無いけど、世界史だけはいつもほぼ満点だから教えられるよ。数学も。…そうだ。今度は皆で勉強会とかしない?偏見だけど鳴上くん教えるの上手そうだし」
「いや、あんまり人に教えるとかは無いけど…需要あれば次回はするか、勉強会」
「うん、私も賛成。なんていうか少し、楽しそうだし」
「やたっ!みやび様〜!!鳴上様〜!! 雪子様〜!!」
「千枝は本当にこういう時だけ調子がいいね」
「ちょっ!俺も参加するから!抜け駆けは禁止だからな!!」
「聞いた?テレビ局が来てたってよ」
必死な花村くんに全員どっと笑ったけれど、気になる話題が耳に入ってきたのでピタリと止まる。 そのタイミングが余りにも5人揃ってピッタリだったのでまた笑い出しそうになったが今は話を聞かないと。
「どーせ、例の死体がぶら下がってた℃膜盾フだろ?」
「や、違くてさ。幹線道路あんだろ?あそこ走ってる暴走族の取材だってよ。オレのダチで族に顔出してるヤツいてさァ、そいつから聞いたんだよネ」
「おま、友達にゾクいるとか、作んなよ?」
幹線道路の暴走族事件、と聞いて思い浮かぶのはそれをキュッと自転車で締めちゃった心優しいのに勘違いされやすい幼馴染の顔だ。…まさかだけれど。
「暴走族?」
「あー…たまにウルサいんだよね。雪子んちまでは流石に聞こえないか」
「うちなんか、道路沿いだからスゲーよ。日高さんちも国道沿いだからヤバいだろ?」
「えっ、ああ、うん」
「うちの生徒にも居るらしいじゃん?」
「あー確か、去年までスゴかったヤツがうちの1年に居るとか、たまに聞くな…中学ん時に伝説作ったって、ウチの店員が言ってたっけ。んー、けど…暴走族だっけな…?」
まさかじゃないらしい。これはもう確定だ。
恐らくまた彼は周りに勘違いされている。その伝説って完二くんのお母さんが暴走族の騒音で寝れないからボコボコにした件たと思うし。
テレビの件や個展にテストと確かに完二くんとここ暫く会ってなかったけれど裏でそんな事してたのかと思うと頭が痛い。3月?に堂島さんと足立さんに怒られたばっかじゃん!完二くんの鳥頭!
「で、伝説って?」
「あー、たぶん、雪子が考えてるのとは違うと思うけど…」
「…日高、どうした?具合悪い?」
「エッ、いや!?ううん!全く!」
急に黙り込んだ私を鳴上くんが気にかけてくれるが、変に噂を広げるのも躊躇われ話を切り替える事にした。
「あのね、話だいぶ変わっちゃうんだけれど、テストも終わったし…みんなの足引っ張りたくないから、テレビ…付き合ってくれないかな」
少しばかり強引な気もするけれど、これは本心だ。無理するなよ、と気に掛けてくれる鳴上くんは優しい。 …具合は悪くない。少しばかり、心配事が急に出来てしまっただけで。
* * *
「咲き誇れ、シロビクニ!」
白い肌に、目蓋を伏せた穏やかな表情。 長い髪は椿の樹木となっており、鮮やかな赤が緑の中で一際際立つ。 黒の着物と金の袈裟を模したドレスを着た女性型のペルソナはとても美しい。
「…デビルスマイル」
綺麗な薔薇には棘がある。彼女の場合は椿なのだけれど。 穏やかな表情から一変して妖婦の様な蠱惑的な笑み。釣られ彼女の目と己の目を合わせれば瞬時に圧倒的なオーラに包み込まれ、脚が竦む。
「いいぞ、日高!」
指揮をとる鳴上くんに褒められ、自然と笑みが溢れる。
「はあっ!」「せいっ!」
怯んだシャドウは動かなくなり、鳴上くんの斬撃と千枝ちゃんの蹴りによって霧散した。
「みんな、お疲れ様。…千枝はちょっと回復した方が良いかな」
「うん、よろしく」
「里中のペルソナは脳筋だもんなぁ」
「なんだとぉ!」
「…花村くん、ダンジョンの中で喧嘩は良くないと思うよ?」
感電させるよ、とシロビクニを呼んで見せると花村くんは苦笑いした後、千枝ちゃんに素直に謝った。彼のペルソナはジオに弱い。
…多分、私が謝らさせなかったら花村くんは千枝ちゃん自身と彼女のペルソナの踵落としをマトモに受けることになってたと思う。こんな事で反魂香を使うのも、ちょっとね。
「日高のペルソナ…シロビクニはジオ系とバステ系が得意なのか?」
黒い眼鏡フレームを押し上げた鳴上くんに尋ねられる。リーダーである彼には正確に何が使えるか伝えるべきだろう。
「後ね、ブフ系も使えるみたい。シロビクニは別名ヤオビクニとも呼ばれてるんだけど…」
「ああ。そっちの名称…八百比丘尼なら知ってる。人魚伝説の?」
「うん。その昔、彼女はコノハナサクヤ神に依頼されて石を積み上げる事で五穀豊穣を祈ったらしいの。作物が育つには…雷が落ちる事で豊かになった田と恵の雨…水が必要だから。それ由来かなぁ〜なんて思ってるよ」
人魚の肉を食べた所為で、周りの人々が寿命で亡くなって行く中、死ねずに800年生きたという八百比丘尼伝説は私も彼女に出会う前から知っていたが、具体的にどんな事をした人物なのかは調べてみるまで全く知らなかった。
みんなのペルソナも有名な日本の神々や武人や御伽噺の登場人物だし、戦うイメージと結び付きやすいんだろうか。全く詳しくなくても潜在的に、知っているというか。多分、雪子ちゃんが聞きたがってた系統の伝説話はこっちだろうなぁ。
「なるほどな…。里中もブフは使えるけれど、どちらかと言えば物理アタッカーだし、俺も時と場合によってはジオは使えないから助かる」
このパーティメンバーの中だと、私は切り込み隊長の花村くんの次に足が早い。
今日の戦闘の感じだとまず花村くんが魔法が効くか試して、効けば私も魔法を試す。効かなければバステ系でサポート。
鳴上くんと千枝ちゃんで恐怖にならなかったシャドウを集中して狙っていき、
火炎が弱点な敵以外の場合は雪子ちゃんとクマくんは安全地帯で補助魔法と回復をしてくれる。
私の魔法の火力は正直、雪子ちゃんより大分、花村くんよりちょっと、下だと思う。その代わりに花村くんのテンタラフーの精度より私のデビルスマイルの方が精度はかなり高い。 真正面から殴るのが得意では無いというのがなんていうか、流石私を写す鏡だ。
「えっと、今日一日潜ってみて私…迷惑かけてない?大丈夫…?」
火力が無いと自覚している分、自信が余りない。何となくクマくんに貰った菫色のスクエア形の眼鏡を触ってしまう。
「弱点が無い敵と戦う時、無駄に消耗しがちだから日高が加入してくれて大分助かってる」
「狙う敵が明確になるしね!みやびちゃん様々だよ」
「アイテム係としてはミヤビチャンが恐怖で即死させてくれるから無駄に精神力が削られなくて助かるクマね」
「そうだね。前、回復手段無くて最後らへん全員、物理で解決しようとしたもんね…結局無理で必死で逃走した事もあるし…」
「そ、それは悲惨かも。…確かに私がいたらあんまりそういう場面は起きないかも…?」
「だから、余計な事考えないで俺たちに力を貸してくれると助かるし…ていうか!迷惑なわけないだろ!俺たちはもう仲間…なんだし」
恥ずかしかったのか言葉尻はほぼ消えていたが、花村くんの言葉は確かに伝わった。…こういうあったかいところがなんていうか、彼の魅力だよねと再確認する。平たく言うと惚れ直したというやつ。片思いだけれど。
「ありがとう、その…。不束者ですが、よろしくお願いします。仲間として」
弱音を吐くのは、もう無しだ。仲間のために、私のために。
私が出来ることを精一杯やれば、仲間達はそれに応えてくれる。
それに、今日…耳に入った話。
テレビで報道された女性が殺される≠ニ予測されている今、完二くんは女性でもないし簡単に攫われるような鍛え方はして無いと分かっていてもなんだか嫌な予感が、する。
山野アナや、小西先輩に雪子ちゃん。なんていうか周りが同じ様に、嫌に不快に…興奮してた気がする。 私の時も、周りは面白可笑しく噂をしていたのかもしれないと思うと、ゾッとした。
…守りたい人を、守れる私になりたい。 シロビクニにそう誓うと、彼女も力強く頷いた気がした。
苦手な古典と音楽は選択科目というのもかなり大きい。
「ね、じゃあ問7は何にした?文中のそれが指す単語ってやつ」
「ええと…悲しげな後ろ姿、にした」
「うっわ、間違えた!あたし机の上の餅にしちゃったよ…」
比較的満足している私の斜め前では千枝ちゃんが雪子ちゃんに回答を聞いては絶望の表情を浮かべている。…うん、多分雪子ちゃんが正解だと思う。餅なんて単語は出た覚えが無い。
「鳴上くん、太陽系で最も高い山って何にした?」
「俺はオリンポス山にした」
雪子ちゃんも成績は良いけれど、サラリと地学の答えも出て来る鳴上くんもきっと成績が良いんだろうなあ。
民族衣装を調べるうちに世界史は得意になったけれど地学は以前興味が薄いままだ。気候と文化も一緒に覚えた方がより理解は深まるだろうし次回は頑張ろうかな。
「ギャー!マジで!?違うのにしちゃったよー…」
「千枝ちゃん、私も多分間違えた。エレベストって書いちゃった…」
「鳴上くんと一緒で私もオリンポス山にした」
「おっ、天城も!?じゃあそれ正解っぽいじゃん…」
その口振りだと花村くんもオリンポス山を選ばなかった敗者なのだろう。がっくりと彼は頭を垂れ下げた。
「あーあー、廊下に貼り出されるのが楽しみだよ、ったく…」
「雪子ちゃんほど成績良くは無いけど、世界史だけはいつもほぼ満点だから教えられるよ。数学も。…そうだ。今度は皆で勉強会とかしない?偏見だけど鳴上くん教えるの上手そうだし」
「いや、あんまり人に教えるとかは無いけど…需要あれば次回はするか、勉強会」
「うん、私も賛成。なんていうか少し、楽しそうだし」
「やたっ!みやび様〜!!鳴上様〜!! 雪子様〜!!」
「千枝は本当にこういう時だけ調子がいいね」
「ちょっ!俺も参加するから!抜け駆けは禁止だからな!!」
「聞いた?テレビ局が来てたってよ」
必死な花村くんに全員どっと笑ったけれど、気になる話題が耳に入ってきたのでピタリと止まる。 そのタイミングが余りにも5人揃ってピッタリだったのでまた笑い出しそうになったが今は話を聞かないと。
「どーせ、例の死体がぶら下がってた℃膜盾フだろ?」
「や、違くてさ。幹線道路あんだろ?あそこ走ってる暴走族の取材だってよ。オレのダチで族に顔出してるヤツいてさァ、そいつから聞いたんだよネ」
「おま、友達にゾクいるとか、作んなよ?」
幹線道路の暴走族事件、と聞いて思い浮かぶのはそれをキュッと自転車で締めちゃった心優しいのに勘違いされやすい幼馴染の顔だ。…まさかだけれど。
「暴走族?」
「あー…たまにウルサいんだよね。雪子んちまでは流石に聞こえないか」
「うちなんか、道路沿いだからスゲーよ。日高さんちも国道沿いだからヤバいだろ?」
「えっ、ああ、うん」
「うちの生徒にも居るらしいじゃん?」
「あー確か、去年までスゴかったヤツがうちの1年に居るとか、たまに聞くな…中学ん時に伝説作ったって、ウチの店員が言ってたっけ。んー、けど…暴走族だっけな…?」
まさかじゃないらしい。これはもう確定だ。
恐らくまた彼は周りに勘違いされている。その伝説って完二くんのお母さんが暴走族の騒音で寝れないからボコボコにした件たと思うし。
テレビの件や個展にテストと確かに完二くんとここ暫く会ってなかったけれど裏でそんな事してたのかと思うと頭が痛い。3月?に堂島さんと足立さんに怒られたばっかじゃん!完二くんの鳥頭!
「で、伝説って?」
「あー、たぶん、雪子が考えてるのとは違うと思うけど…」
「…日高、どうした?具合悪い?」
「エッ、いや!?ううん!全く!」
急に黙り込んだ私を鳴上くんが気にかけてくれるが、変に噂を広げるのも躊躇われ話を切り替える事にした。
「あのね、話だいぶ変わっちゃうんだけれど、テストも終わったし…みんなの足引っ張りたくないから、テレビ…付き合ってくれないかな」
少しばかり強引な気もするけれど、これは本心だ。無理するなよ、と気に掛けてくれる鳴上くんは優しい。 …具合は悪くない。少しばかり、心配事が急に出来てしまっただけで。
* * *
「咲き誇れ、シロビクニ!」
白い肌に、目蓋を伏せた穏やかな表情。 長い髪は椿の樹木となっており、鮮やかな赤が緑の中で一際際立つ。 黒の着物と金の袈裟を模したドレスを着た女性型のペルソナはとても美しい。
「…デビルスマイル」
綺麗な薔薇には棘がある。彼女の場合は椿なのだけれど。 穏やかな表情から一変して妖婦の様な蠱惑的な笑み。釣られ彼女の目と己の目を合わせれば瞬時に圧倒的なオーラに包み込まれ、脚が竦む。
「いいぞ、日高!」
指揮をとる鳴上くんに褒められ、自然と笑みが溢れる。
「はあっ!」「せいっ!」
怯んだシャドウは動かなくなり、鳴上くんの斬撃と千枝ちゃんの蹴りによって霧散した。
「みんな、お疲れ様。…千枝はちょっと回復した方が良いかな」
「うん、よろしく」
「里中のペルソナは脳筋だもんなぁ」
「なんだとぉ!」
「…花村くん、ダンジョンの中で喧嘩は良くないと思うよ?」
感電させるよ、とシロビクニを呼んで見せると花村くんは苦笑いした後、千枝ちゃんに素直に謝った。彼のペルソナはジオに弱い。
…多分、私が謝らさせなかったら花村くんは千枝ちゃん自身と彼女のペルソナの踵落としをマトモに受けることになってたと思う。こんな事で反魂香を使うのも、ちょっとね。
「日高のペルソナ…シロビクニはジオ系とバステ系が得意なのか?」
黒い眼鏡フレームを押し上げた鳴上くんに尋ねられる。リーダーである彼には正確に何が使えるか伝えるべきだろう。
「後ね、ブフ系も使えるみたい。シロビクニは別名ヤオビクニとも呼ばれてるんだけど…」
「ああ。そっちの名称…八百比丘尼なら知ってる。人魚伝説の?」
「うん。その昔、彼女はコノハナサクヤ神に依頼されて石を積み上げる事で五穀豊穣を祈ったらしいの。作物が育つには…雷が落ちる事で豊かになった田と恵の雨…水が必要だから。それ由来かなぁ〜なんて思ってるよ」
人魚の肉を食べた所為で、周りの人々が寿命で亡くなって行く中、死ねずに800年生きたという八百比丘尼伝説は私も彼女に出会う前から知っていたが、具体的にどんな事をした人物なのかは調べてみるまで全く知らなかった。
みんなのペルソナも有名な日本の神々や武人や御伽噺の登場人物だし、戦うイメージと結び付きやすいんだろうか。全く詳しくなくても潜在的に、知っているというか。多分、雪子ちゃんが聞きたがってた系統の伝説話はこっちだろうなぁ。
「なるほどな…。里中もブフは使えるけれど、どちらかと言えば物理アタッカーだし、俺も時と場合によってはジオは使えないから助かる」
このパーティメンバーの中だと、私は切り込み隊長の花村くんの次に足が早い。
今日の戦闘の感じだとまず花村くんが魔法が効くか試して、効けば私も魔法を試す。効かなければバステ系でサポート。
鳴上くんと千枝ちゃんで恐怖にならなかったシャドウを集中して狙っていき、
火炎が弱点な敵以外の場合は雪子ちゃんとクマくんは安全地帯で補助魔法と回復をしてくれる。
私の魔法の火力は正直、雪子ちゃんより大分、花村くんよりちょっと、下だと思う。その代わりに花村くんのテンタラフーの精度より私のデビルスマイルの方が精度はかなり高い。 真正面から殴るのが得意では無いというのがなんていうか、流石私を写す鏡だ。
「えっと、今日一日潜ってみて私…迷惑かけてない?大丈夫…?」
火力が無いと自覚している分、自信が余りない。何となくクマくんに貰った菫色のスクエア形の眼鏡を触ってしまう。
「弱点が無い敵と戦う時、無駄に消耗しがちだから日高が加入してくれて大分助かってる」
「狙う敵が明確になるしね!みやびちゃん様々だよ」
「アイテム係としてはミヤビチャンが恐怖で即死させてくれるから無駄に精神力が削られなくて助かるクマね」
「そうだね。前、回復手段無くて最後らへん全員、物理で解決しようとしたもんね…結局無理で必死で逃走した事もあるし…」
「そ、それは悲惨かも。…確かに私がいたらあんまりそういう場面は起きないかも…?」
「だから、余計な事考えないで俺たちに力を貸してくれると助かるし…ていうか!迷惑なわけないだろ!俺たちはもう仲間…なんだし」
恥ずかしかったのか言葉尻はほぼ消えていたが、花村くんの言葉は確かに伝わった。…こういうあったかいところがなんていうか、彼の魅力だよねと再確認する。平たく言うと惚れ直したというやつ。片思いだけれど。
「ありがとう、その…。不束者ですが、よろしくお願いします。仲間として」
弱音を吐くのは、もう無しだ。仲間のために、私のために。
私が出来ることを精一杯やれば、仲間達はそれに応えてくれる。
それに、今日…耳に入った話。
テレビで報道された女性が殺される≠ニ予測されている今、完二くんは女性でもないし簡単に攫われるような鍛え方はして無いと分かっていてもなんだか嫌な予感が、する。
山野アナや、小西先輩に雪子ちゃん。なんていうか周りが同じ様に、嫌に不快に…興奮してた気がする。 私の時も、周りは面白可笑しく噂をしていたのかもしれないと思うと、ゾッとした。
…守りたい人を、守れる私になりたい。 シロビクニにそう誓うと、彼女も力強く頷いた気がした。