花びらの心臓

「まって、ビートくんいい匂いするんですけど!」
「やかましいな、いきなりなんです?」
「お花の香り…」
「ポプラさんの教えですよ。ピンクは香りにも気を使えと。」
なるほど。久しぶりに会ったビートくんからふわりと柔らかな花の香りがする。だけど甘すぎずビートくんにぴったりだと思った。
「なんか大人な感じがするね。」
「別に。…あなたも女性なんですから少しは気を使った方がいいと思いますよ。」
「えっ!私汗臭い?」
「そうではなくて、嗜みとしてと言う事です。一応、チャンピオンなんですから。取材で聞かれたりしないんですか?」
一応ってなんだ、一応って。でも確かに取材で聞かれたりして、制汗スプレーです!とは答えられないな。
「私も同じの欲しいな…」
「なんですって?」 
ビートくんは眉間にシワを寄せて、その綺麗な顔を歪める。私はまた何か、まずい事を言っただろうか。
「いい匂いだから、私もつけてみたいなぁ…なんて。」
「……別に、あなたがいいなら構いませんが」
本当に、あなたの発言には驚かされますよ、と言いながら渡された小瓶を受け取った。瓶の中を薄いピンク色の液体がゆらゆら揺れている。
しゅっと手首に吹きかけると柔らかなその花の香りが身を包み込む。
「そういえば、香水は人によって匂いが変わるそうですよ。」
「えっ、そうなの?」
「人によって体温が違いますからね。あとは体臭とかで変わるんじゃないですか?」
知らなかった…。


お題 にこごり
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